その5
優が美香とであった時から、自分がロリコン(?!)だと自覚しつつあるときまで・・・。
対象は美香のみなので、正確にロリコンではないのかもしれませんが・・・。
5/28改稿
夕方、職場に顔を出して雑用をかたずけると職場の先輩が僕に言った。
「中野。お前今、時の人だぞ?」
何のことだろうとその人の顔を見る。と彼は僕を見て言う。
「お前、昨日高校生の婚約者とホテルにお泊りだって噂が流れてるぞ?」
それってホントなのか?という先輩に、平然とはいと答えた。それにしても昨日の話しだというのにみんな情報が早いなあと、違う部分で感心した。
彼は驚いた様子で、おまえって女に興味ないのかと思っってたのにいつのまにそんなの引っ掛けたんだ?
呟くのが聞こえた。
「先生にはあわせた事ありますよ?」
驚いた顔で僕を見ると共に、どんな子?と聞かれ、その問いに答えようとしたらPHSが鳴った。
病棟指示がすぐに欲しいとの依頼。
僕は、興味津々の先生に、にっこり微笑んで2年後の結婚式には来て下さいね。・・と伝えてその場を去る。
・・昨日の今日でどれだけの人に知れたんだろうか?隠す必要もないしかまわないけれども・・・
連絡のあった病棟で指示を出して、患者さんの診察をしてカルテを打ち込んでいたら、後ろから声をかけられた。
「中野先生、今宜しいですか?」
いい難そうに話しかけて来るその人の顔を見る。
「・・・はい?」
なんだろうと、そちらを見て返事をした僕に、彼女は周りの様子を見ながら声を潜めて聞いてきた。
「お付き合いなさってる人がいらしゃるってほんとですか?」
美香がまだ若いので、ここではあえて美香の事は一部の人にしか伝えてなかった。
もうすぐ美香が結婚しても良い年になるので、昨日あったときにばれても良いと紹介したのだが、朝からこれで聞かれるのは何回目だろう・・。
僕はうんざりとした気持ちを溜息とともに出しながら答えた。
「・・・いるよ。とても大切で、何物にも替え難い人が一人いる。」
少しむっとしたように彼女が返してきた。
「・・・先生この間、女性に興味ないって言われてたじゃないですか?」
そんなこと言ったかな?としばし考えて思い当たる。そういえば、先日の飲み会に参加させられたときに端っこでひっそり飲んでたら、隣に座った彼女になぜ混ざらないのかと聞かれて、興味ないっていったような気がする。良くそんな何気ない一言を覚えてるものだ、と感心しながら彼女の顔を見ていた。
「あそこにいた女性に興味はなかったからね、僕の視界に入ってる女性は彼女だけだし?僕も男だから彼女にだったらそれなりの欲望はあるよ?」
それが何か?といいつつ、記入しかけのカルテに視線を戻した。
「・・・私では駄目ですか?」
カルテから目を離し、彼女の顔を見る。・・えぇっと・・この子今年入職した子だったよね?
僕はカルテに視線を戻し淡々と告げた。
「申し訳ないけれど、10年越しの恋だからね。彼女以外いらない。」
顔も上げずに淡々と告げる僕に相手が息を潜めるのがわかった。
ごめんあなたの名前さえ覚えていない薄情ものだよ僕は、早く次に行ってください。僕は心の中で呟いた。
ーーーーー
美香が隣の家に来たときのことを、僕は昨日のことのように覚えている。
父と伯父が会社を共同経営してる関係で、二人は事務所を挟んで家を構えていた。。
同時期に結婚したにもかかわらず、兄夫婦にはなかなか子供が授からず、僕は二人の父親と母親に育てられたようなものだった。
地球は僕中心に回っていて、4人の大人は僕のしもべだった。でも、ある日その転機は訪れた。
「優ちゃん、お兄ちゃんになるのよ。」
にっこり微笑んで、おばがそれを告げた。
「・・・・・?」
怪訝な顔で、伯母を見る僕に彼女は続けた。
「春になったらね、赤ちゃんが増えるの。」
とても嬉しそうに微笑む伯母の笑顔と裏腹に僕の心の中はショックで真っ黒だった。嘘だろう・・僕のこの生活を邪魔する奴がでてくるなんて・・・。
じっとうつむいて、返事をしない僕に、伯母は不思議そうな顔をしながら、それでも幸せそうに微笑んでいた。
日に日に膨らんでいく伯母のお腹を見ながら、僕の不満も日に日に膨らんでいった。
今までだったら手作りのおいしいおやつが必ずあったのに、お腹の赤ん坊のせいで、伯母さんの体調がすぐれず作ってもらえないこと、今まで僕中心に双家族の予定が決まっていたのに、まだ生まれてもいない赤ん坊中心に予定が決まっていくこと、われながらもうすぐ中学になるというのに何子供地味たこといってるんだと自問自答しつつ情けないがわがままな自分の感情が抑えられなかった。
そして、春が来た、美香が我が家にやってきた。
「ううううっ!!!可愛い!!なんて可愛いんだ!!!絶対嫁にはやらないぞ!!」
実の父親である伯父の存在を忘れ、まるでわが子だと言わんがばかりに、絶叫するわが父親を冷めた目で見ながら、ゆりかごの中の美香を見る。
・・・・どこが可愛いんだ?こんな頼りないもの・・・・
大体隣の赤ん坊のためにどうしてうちがゆりかごを購入してるんだろう?
馬鹿みたいに他人の子供を見てはしゃぐ父親を冷ややかな目で見つめた。僕の視線に気づき父がもそもそと言い訳をする。
「・・・だって、隣が出かけて、僕が美香を見ないといけないときに、美香の寝る場所がないと困るじゃないか・・・?」
はぁ!?いったい何処に、12年目でやっと授かった子供を隣人に預けて出かける親がいるというんだ?
しかもこのゆりかごは新生児のサイズだろう?すぐ使えなくなるぞ?
呆れるやら、情けないやらで、父親の顔をまじまじと僕は眺めた。
彼はそんな僕に本音を吐いた。
「だって、お前だって可愛い美香ちゃんをじっくり見たいだろう?こんな可愛い美香を一日に数時間しか見られないなんて僕には我慢できない!!」
・・・一日数時間見れば充分でしょう?・・・。
叔母が、そんな父親の様子に笑いながら僕のほうをむいて言ったその言葉に僕は凍りつた。
「優ちゃん、抱っこしてくれない?」
・・はぃ!?ぼくがですか!?・・冗談じゃない!!!・・。こんな奴可愛いとも思わないし抱きたいとも思わない。
思いっきりしかめ面をして引いた僕に苦笑しながら伯母はゆりかごの中の赤ん坊に微笑んだ。
「美香?優お兄ちゃんは、まだ美香が小さすぎて怖いから抱っこしたくないって・・残念ですね?」
いやいやおばさん違うし、こいつのことはドンだけ大きくなっても、僕とは相容れないと思うよ、だって僕の生活を壊した侵略者だもの。
僕のそんな自分本位な思いに馬鹿親父とそれを取り巻く人々は少しも気づいてくれず・・・。
僕の時代は終わり美香中心の日々が始まった。
美香が生まれる直前中学に入学しサッカー部に入った僕は、クラブ活動に追われて美香との接点はあまりなかった。
ただ時々美香との接触が欲しい僕の父親が、美香の自立を促すためのお泊り保育と称して我が家に無理やり美香を連れ込んでいたときは相手をしていたが、その時もよだれだらけの手でべたべたと触りまくる美香をうっとしと思いこそすれ、可愛いと思ったことは一度もなかった。
一度僕の態度に切れた父親が、「優希は冷たい!!12も年下のいとこが可愛くないのか!!」と叫んだことがある。
でも僕のその時の感情は、小動物的な可愛さはあるけれども、僕の時代を終わらせた侵略者としてのうっとおしさしかもてないのに何でそれをわかってくれないんだろう?だった。
最初の頃は僕を美香に馴ららそうとしてた父も僕の態度がかわらないのを見て、”優希は駄目だ”と何時の間にか諦めてくれたようだった。
僕が、高校2年の夏休みその事件は起こった。
その日は夏祭りだった。おばが体調を壊し、伯父はその看病。わが父は母とは欠席の伯父たちのかわりにはずせないレセプション。だから、4歳になる美香を俺に見ろという。
「!!冗談じゃない!!友達と約束してるんだ!!ベビーシッター頼めばいいじゃないか?何で僕が美香の面倒見ないといけないんだ!!」
ずっとモーションかけてた彼女に、友人と一緒ならとやっとの思いでデートをOKしてもらったのに。何でこんな日にちびつれてかないといけないんだ?!。あんなのと一緒なんて何も出来やしない!!
その日その子との仲を確実なものにしようと画策していた僕は、父の言いつけをなんとしても阻止しようと必死だった。
「一緒に祭りに行けばいいじゃないか?美香ちゃんだって楽しみにしてたのに」
父親は僕の思惑など知らず、自分の都合を押し付けてきた。
「お父さん、僕は友人と約束してるんだよ?そこに4歳のガキを連れて行けというの?」
「じゃあ家であの子と留守番してくれるか?」
「・・・・・・・・」
僕の抵抗もむなしく、押し切られる形で、美香を連れて行くことに結局なってしまった。
友人との待ち合わせ場所で待っている間美香はとても嬉しそうにしていた。その笑顔にもむかついた。
・・・お前のせいで、彼女とのデートが台無しだ・・・・・
僕は、八つ当たりにも近い感情で美香に言い聞かせた。
「祭りは人が集まるから、離れるんじゃないぞ。」
美香が真っ赤な顔でを大きくたてにふってうなずいた。
「うん優ちゃんの手を離さないよゼッタイに。」
美香の答えに僕はうんざりとする・・・いや、僕の手は握らなくて良いから、僕はお子様と手はつなぎたくないから・・・・・。
僕はいらいらしながら美香の手を振り解いた、やがて友人たちが集まってきた。
「中野?そのこ誰?」
「・・・・いとこの美香。」
「ええ~~今日の計画どうすんだよ?俺達知らないぞ?」
今日は本当は、3:3のグループで祭りに来てる名目だった。
だが友人たちで相談して、ころあいを見てばらばらになる予定だったのに・・・
美香が来たら僕担当だよな・・・。はぁ・・・。
「千佳ちゃん、怒るんじゃないか?」
「・・・・・・・。」
千佳は僕が今日狙っているこの名前だ。何度も誘ってやっとOKもらったのに・・・。
重い気分を引きずりながら待ち合わせ場所へと向かった。
しぶしぶと美香を紹介した僕の予想とは裏腹に、彼女の反応は意外とよかった。
「きゃー可愛い、中野君のいとこなの?いくつ?名前は?」
僕の陰に隠れながら、はしゃぐ彼女に美香はもじもじと答えていた。彼女の反応を見て、連れてきたのは案外と正解だったかもしれないと思う僕がいた。
僕は気を良くして、美香を彼女との真ん中に挟み歩き出した。
しばらくは全員で回っていたがその内に打ち合わせどうりにばらばらになった。
最初は僕も、きょろきょろする美香を見失わないようにと気にしていたが、そのうち彼女と会話が弾み、美香の存在を忘てしまった。
気がつけば美香がいなくなっていた。
「あれ?何処に行ったんだろう」
いついなくなったかきがつかなかった、僕は顔が青ざめるのがわかった。
「え?その辺にいないかしら。」
彼女と来た道を戻ったが見つからない・・・。
その内に時間ばかりが過ぎて僕はどんどん焦り、冷や汗が出てきた。
「家に帰ってる事はないの?」
彼女の言葉僕もその望を考えたが・・ここから家までは確かに僕達の足ではそう遠くない。
・・・しかし、道のわからない4歳の子が歩いて帰れる距離でもない。
頭が真っ白になってくのがわかった、いやいや駄目だ!考えるんだ、どうすれば良いかを・・。
・・そうだ家にに連絡しないと・・・。
やっとの思いで電話した僕は、電話の向こうで怒鳴り散らす父親の声を聞いた。
「警察に行くよ。迷子の届出をする。」
電話を切って彼女に告げた僕の言葉に、彼女が引くのが見えた。
「・・・私は関係ないよ・・?」
後ろに下がりながら、帰りたそうにする彼女にあっけにとられる。
「・・・だって、連れて来たのは中野君でしょう?」
まじまじと彼女を見る。そうだよ?僕が連れてきた。
迷惑をかけるのは悪いから彼女は巻き込まず先に帰ってもらおうと思っていたが、この人ごみの中4歳の子供が迷子になったというのにそのこの行方を心配せずに、自分の身を案じているこんな子の僕は何処が良かったんだろう?
「・・・そうだね、此処で別れようか?・・ごめんね送れなくて。」
ばかばかしいと思いながら謝罪の言葉を告げて、交番へと急いだ。
誘拐、迷子、事故、いやな予感が後を絶たない。伯母の泣き顔が目に浮かぶ、あいつは、彼らの宝物だどうしよう、僕にとってもたった一人のいとこなのに・・。
交番で、迷子の届出をした。おまわりさんに怒られるかと思ったが、淡々と事情を聞かれた後に、
「今日は人出が多いから君だけのせいじゃないよ」
と言われてなきそうになった。違う、僕のせいだ、いなくなれとずっと思っていた。
あいつのせいで僕の世界が壊されたと思ってた、だからこれは神様の罰なんだ。
父と叔父が連絡を受けて交番に来た。おまわりさんから今人手を割いて探しているから、と説明されていた。父にすごい勢いで怒られた。
「何で手を離したんだ!!」
言い訳の仕様もなくしょげてる僕を、おまわりさんがかばってくれた。
「こんな人出の多い日に、高校生に、幼児を任せた親の責任はないんですか?」
父は、言葉を失っていた。
彼は僕を見てやさしく続けた、
「どこか美香ちゃんが行きそうな場所はあるかな?」
言われて思い浮かんだ場所がある。
「境内の裏」
みんなが僕の顔を見た。
「境内の裏、前に美香とかくれんぼをして、今日の待ち合わせの途中に美香がまた明るい時に来たいって言ってた。でも、暗いと植え込みの後ろの斜面が見えなくて、あそこから落ちたら・・・」
言った瞬間、体が動いていた。神社に走っていた。
境内の裏の美香がいつも隠れる場所に向かった。
此処に来たらいつも、馬鹿の一つ覚えみたいに隠れる植え込みの後ろ。・・・・いない、がっかりとしながらそのあたりを探したが見当たらない。斜面の下も覗き込んだ、真っ暗で見えない。僕は、あきらめきれずに呼んでみた。
「みか・・? みか・・?いるなら返事して・・?」
返事はない・・。場所を変えようと思ったその時。
「・・・優兄ちゃん?」
声が聞こえた。何処だ?!!
「美香何処にいるの?教えて?」
答えが返ってきた、泣き声交じりだった。
「落ちちゃった、変なおじさんが美香連れていこうとするから隠れたら落ちちゃた。
思わず声のするほうに降りていこうとする僕を、後ろから来たおまわりさんが押えていった。
「状況がわからないのに降りたら危ないからもう少し待って。」
そして、彼は美香に優しい声で話しかけていた。
「美香ちゃんいたいところはある?そのまま絶対動かないで。すぐ助けに行くから。」
どこからか大勢の人が来て美香を助けてくれた。
後で聞いたら美香は途中の木に引っかかっていたらしい。
声のするほうに僕が降りていったら一緒に落ちてもっとひどい怪我をしたかもしれないと聞かされてぞっとした。
美香は一言も手を握ってなかった僕を責めずに、自分が悪いと謝っていた。
そして、病院に行くまでずっと優兄ちゃんごめんと泣いていた。
僕が父と伯父に怒られないように目を離さず、僕をかばうように僕のシャツを握り締め、伯父と父に優兄ちゃんは 悪くないから怒るなといい続ける美香。
僕はその小さくやわらかいからだを病院に着くまでずっと抱きしめてその頭をなでていた。
謝らないといけないのは僕のほうなのに・・・・。
僕は美香の手を離したこと、邪険に扱ってた事、今までの態度・・それらを美香の体を抱きしめながら心の中で謝 っていた
腕の骨を折っていた美香はそのまま入院した。美香が僕を離さないので一晩付き添って病院に泊まった。
その後も、毎日美香の入院している病院に通った。
怪我は痛いだろうに、僕の前では決して痛いとは言わずに僕の面会を満面の笑みを浮かべて迎えてくれる美香を心からいとおしいと思った。
たった4歳のいとこに、僕はいろいろなことを教えてもらった。
美香が退院するころには、父と同じように美香に対して馬鹿のつく愛情を感じている僕がいた。
・・・もちろんこのころは僕自身も兄としての愛情だと思っていた。




