その49
よんでいただきありがとうございます。
殴り合いのシーンが出てきます。
苦手な方、避けてください。
清水 澄拝
「何でそんなこと言うの?いないって言ってるだろう?僕が美香に嘘ついてどうするの?」
僕は、怒った口調で美香に言った。どうしてそんな話が出てくるんだ?
「・・・看護師さんたちが、美香に、優ちゃん陽子ちゃんといつ結婚するんだって聞いてくるから・・・」
何でそんな話が出てくるんだ?
僕は、怒りつつ、呆れつつ、美香に聞いた。
「そんな根拠のない話を、美香は信じたんだ。」
美香は僕の顔を見据えて、言った。
「だって、用事があって電話したら、二人でいたとか、中庭で楽しそうに手作りのお弁当食べてたとか・・聞いたよ?」
あれは、美香もかんでるだろう!!めんどくさくて放ってた噂がこんなところで、絡んでくるなんて!!
僕が説明しようと、口を開きかけたその時、美香はもっと衝撃的なことを言った。
「・・それにマッキーに、優ちゃんと、陽子ちゃんの事聞いたら、”美香ちゃんは嫌か・”って・・・」
あの人は何言ってるんだろう!!僕を巻き込むな!!
僕は怒りながら時計を見た。夜中の12時半を指していた。
この時間なら、まだ院内にいるかもしれない。
僕は持っていたおにぎりを美香に渡すと部屋を飛び出した。
途中、巡視の看護師に注意されたが、そんなことどうでも良い!!槇原さんを今すぐ締上げてやる!!
救急の医局にその人はいた。帰ろうと身支度している彼に僕は伝えた。
「・・・話があるんですが・・?」
僕の様子に少し驚いた顔をして、そして言った。
「外にでようか?」
僕は指示されたとうりに黙ってついて行った。
建物の外にでた僕らは向き合った。
槇原さんは僕の様子に、苦笑しながら何があったんだ?・・と聞く。
「美香に何であんな事いったんですか?」
槇原さんは怪訝な顔をする。
僕は続けた。
「柳と僕の事です。何で美香に聞くんですか?”いやか…”って。そんな事実はない!!」
槇原さんは、僕の顔をじっと見て、そして視線を下に移して僕に言った。
「・・・お前・・柳の気持ちに気づいてないのか?」
・・・なんのことだ?・・・・
「・・・・中学生に懸想するよりも、ずっと柳のほうが常識的だぞ?」
「!!あなたに、僕の常識を問われたくない!!僕は美香しか欲しくない!!それはあなたも知っているはずだ!!」
槇原さんを見据えて、怒りをぶつける僕を見ながら、槇原さんは静かに言った。
「・・そうか・・。お似合いだと思ったんだが・・。それじゃあ仕方がないな・・。」
そして、駐車場に向かいながら僕に、俺帰るな・・・と言い残し、去ろうとする。
「・・まてよ!!」
僕は槇原さんの行動が、許せなかった。
「僕の話は終わってない!!」
槇原さんが僕を睨みながら言った。
「俺はない」
でも、僕は有る!! 槇原さんを睨み返しながら、僕は続けた。
「柳が仮に僕の事が好きだとしましょう、それが、あなたが何の努力もせずに、柳を諦める理由にどうしてなるんですか?」
「・・だめか?・・でもな、それこそ、お前に言われる所以はない・・。」
槇原さんは、口の端でシニカルに笑って、僕を見て言った。
僕は、槇原さんを見据えて言った。
「・・救急外来に搬入された患者の状態が悪いときに、何の努力もせずにあなたは諦めるのか!!」
槇原さんがますます僕を睨みつける。
「そんな話し俺はしてないぞ・・?」
「同じだ!!」
僕は彼を睨みつけて続けた。
「自分に、分がないからといって、最初から諦めるなんて、傷つきたくないから自分を守ってるだけじゃないか!!」
「しかも僕を巻き込んで、自分が諦めるための理由を探すなんて!!あなたの行動は、男として、最低です!!」
僕が言い終わる前に、彼のこぶしが飛んできた。
僕はかろうじて避けた。そして、槇原さんにこぶしを向けてヒットさせた。
地面に倒れた槇原さんの上にのしかかるようにして、僕は彼を見下ろしながら言った。
「これは、美香を傷つけた分です。」
油断した僕を槇原さんは蹴り上げる。
「美香ちゃんが、お前を好きだとは限らないよな?どこから来るんだその自信は?お前だって、13年も傍にいるのにいまだ思いを打ち明けられないヘタレじゃないか?」
地面に倒れた僕は体勢を立て直そうとしてる槇原さんにつかみかかった。
「大きなお世話です、僕は打ち明ける時期を待ってるだけで、あなたの様に何もしてないわけじゃない。」
槇原さんのこぶしが僕の頬にヒットする。
「お前、五十歩百歩って知ってるか?」
僕のこぶしが今度は槇原さんにヒットした。
「一歩も歩いてない人に言われたくない!!」
槇原さんが今度は僕につかみかかり、僕を押し倒し、馬乗りになった。
「お前に俺の気持ちが分かるもんか!!!」
僕は、殴られながら怒鳴った。
「解りたくもないよ!!」
突然、体が軽くなった・・?
目を開けると、槇原さんを後ろから羽交い絞めにして、角野準教授が、呆れたように僕らを見て言った。
「お前ら、実は仲が悪かったのか?」
僕は、槇原さんの立場と角野先生の前だと言うのも忘れて言った。
「槇原さんがあまりにも、阿呆だから腹が立ったんですよ!!」
槇原さんが睨む。
僕はにらみ返して続けた。
「謝るつもりありませんからね、自分のあほさ加減を反省してください!!」
傷の手当てを・・と言う角野先生に断りを入れて、僕は美香の元に戻るために、その場を離れた。
・・・・槇原さんの顔は当分見たくない!!!!!・・・・・
・・・でも、指導医だし、次の日逢うんですよね・・・。
清水 澄 拝




