その45
彼女は、詰所に近い個室にいた。
入ろうとすると、中から話し声が聞こえた。
プライバシーに配慮して、ドアを開けてもカーテンがありすぐにベッドが見えない構造になっている。
僕はそれを利用して、中の二人に気づかれないように、カーテンの陰から様子を伺った。
「・・・どうしても、駄目なの?」
・・義弘の声が聞こえる。
美香はしずかに答えた。
「義弘先輩が好きだった時もあったけれど、今は違うから・・。」
「・・・・わかった、諦めるから・・・・・・・・最後に抱きしめさせて欲しい・・・」
義弘の申し出に思わずこっそり聞いてた事を忘れて、出て行きそうになる。
・・だが美香は、しっかりとした口調で言った。
「嫌です。美香、好きな人にしか抱きしめられたくない!!」
義弘が悔しそうに言った。
「・・なんで?中野先輩なら良いの?」
美香が答える。
「・・・・だって優ちゃんは特別だから。」
義弘が悔しそうに美香に言う。
「・・・特別と、好きな人はどう違うの?」
美香は黙って答えなかった。
義弘が続けて言う。
「・・・あんな大人が、いくら君が好きになっても、相手にしてくれると思うの?僕ら中学生だよ?」
美香の年齢なんか、関係ない。僕は美香が美香だから好きになったんだ!!
義弘の言葉に、僕は思わず声を出しそうになった。
その時いきなりドアが開いた。
「美香!!!大丈夫か!!!」
空気を読む事なんて出来ない・・・僕の父親が飛び込んできた。
そして、僕に気づかず、中に入って、義弘を見て激怒した。
「!!!おまえ!!!僕の美香に近寄るなって!!言っただろう!!!!」
・・・・・だから・・なんで、お父さんの美香なんですか・・?・・・・
いろいろと、突っ込みどころ満載の、父の後ろから、義弘の顔を見て彼を睨んだ。
義弘は、僕らを見て、諦めたように美香に別れを告げた。
そして僕らを見ずに出て行った。
美香は、僕の父親の質問に言葉少なげに答えるものの、僕の顔を見ようとはしなかった。
・・・美香、君の気持ちが知りたい・・僕はもう君にこの思いを伝えても良いんだろうか・・・。




