その4
5/27改稿
昼食が遅かったので少し早いかとも思ったが、宿泊予定のホテルで夕食をとることにした。
中華レストランに入り、注文を済ませて、美香にチェックインしてくるからここで待つように伝えると美香の肩が少し震えるのが見えた。
僕は思わず出そうになった溜息を押えて、安心させるために美香の耳元でささやく。
「・・・美香が、嫌がることはしないから安心して?」
ほっとしたような美香の顔を見ながらその場を一旦離れて、そして美香に聞こえない様にささやいた。
・・・・・自信はないけれどもね・・・・・
ホテルのフロントで、チェックイン手続きをしてると不意に声をかけられた。
「中野先生?」
振り向くと同期の石原先生がいた。美人で頭が切れると時々噂になってる人だ。
にっこり笑ってこちらを伺い、不思議そうに聞いてくる。
「変なところでお会いしましたね?どうされたんですか?」
宿泊カードに名前を記入する僕の手元を見ながら問いかけてくる。
・・・確かに、ここから電車で2時間ほどのところにすんでいるのだから、一人でホテルに泊まる行為自体不審に思われても仕方がない。
「婚約者と来ています。」
僕の返事に、彼女が少し驚いた顔をして、ご婚約されてるんですか?知りませんでしたと聞いてくる。
「・・2年前にしました。あまり人には言ってないので・・。」
これ以上詮索されたらどう答えようかと思案したが、幸いな事に彼女をラウンジの向こうに立ってる人が手招きしてるのが見えた。
あれはうちの解剖学講座の講師じゃないか?付き合ってるんだろうか?
僕のびっくりとした様子に彼女は、慌てて呼ばれたので失礼します。と言い残して去っていった。
チェックインを済ませて、レストランに戻ると神妙な顔をした美香に迎えられた。
席についた僕に、美香がその顔のままささやいた。
「・・・あのね、優ちゃん・・・?」
僕は不機嫌満載の顔で美香の言葉をさえぎった。
「・・・いまさら帰るなんて言わないよね?もう、手続き済ませたよ?」
美香は恐る恐ると言った顔を僕に向けて、そっとささやく。
「・・・そうじゃなくて、ここ高いんじゃないの?」
ひそひそと重大な用件を言うように厳かに・・でも落ち着きなく周りをきょろきょろ見回しながら言った美香の様子に笑がこみ上げた。
どんな重大事件が起ったのかと思ったら、そんなことだったとは・・・
よせば良いのに僕は美香の可愛い悩みに思わず意地悪をしたくなった。
「確かにね?安いとは言いがたいなぁ・・そこそこのクラスのホテルだからね?ここは。」
僕の言葉に美香がますます申し訳なさそうに僕の顔を覗き込んで何か言おうとした。でも美香に何も言わせずに僕は言葉を続けた。
「だって、美香の初めてが、ラブホテルじゃいやだろう?」
さらっと言った僕の発言に僕の顔を目を丸くして見つめた後、真っ赤になってうつむいてしまった。
・・・・可愛い・・・早く僕のものにしてしまいたい・・・・・
だがその後泣きそうな顔をして、固まってしまった彼女を見て僕は後悔した。
「さめちゃうよ?」
テーブルに、並べられた料理をさして僕は美香に言った。
でも美香は泣くのをこらえているようで、手を出そうとしない。
「食欲なくなった。」
今にも泣きそうな顔をして、美香がつぶやく。
「・・・・そんなに・・・・いやなの?」
その様子に自分がからかいすぎた・・後悔しながら・・・、
でも僕の気持ちも汲んでほしいとわがままな思いをこめて僕は聞いてみた。
いやじゃないけれど・・・・・。
とつぶやくものの、うつむいて顔を上げない美香に僕はため息をつきながら続けた。
「無理やりは絶対しない。美香が嫌がることもなるべくしない。我慢するよ・・・・信じてもらえないかな?」
すると顔をあげて思い切ったように美香が言った。
「いやなんじゃないよ?でも怖いの。・・優ちゃん?怖い気持ちはどうやったら無くなるの?」
美香の反応に、唖然とする・・。そうか・・怖いのか・・でもこればっかりはかわってやれないし、守ってやろうにも、その原因を作ろうとしてるのはぼくだしなぁ・・・・。
真剣に悩んでいる、僕を見つめながら、美香は小さな声で言った。
「・・・・でも、大好きなんだよ。」
真っ赤になってうつむく彼女を見て、僕はますます困ってしまう。
あのね?美香、君の準備が出来るまで、待とうとは思ってるんだよ? でもね、僕は正常な成人男性でしかもその相手の君にこうやって、散々煽られてるんだよ?結構かわいそうだと思わないか?
心の叫びを、美香に語れるはずもなく・・・。
「・・・・まあ、食べようか?」
僕は料理をお皿に取り分けて、美香に渡した。
おいしい食事のおかげで、気まずい雰囲気もましになった、色気より食い気のお子様の恋人の満足そうな笑顔をまじまじと見た。
・・僕の欲望は置いといて、ここは我慢するところなんだろうな?と、理性は思うものの、後何年我慢すれば良いのかな?と、僕の欲望の部分が我慢する必要はないよと、ささやく
彼女の様子を観察しながら、今日はどこまで許してもらえるかな?と頭の中でシュミレートする。
・・・僕の頭の中が美香に読めなくて良かった・・・・
きっと二度と口も利いてもらえないだろうと思いながら、彼女の怪訝な視線を感じ、慌てて時間を見る振りをして時計を見てみた。
ジュエリーショップに指輪をもらいに行く時間が近づいていた。
美香を見ると、杏仁豆腐の最後の一口を口に入れて嬉しそうな顔をしているところだった。
「美香?指輪取りに行こうか?」
にこにこ笑いながら同意する美香と連れ立って、ショップに向かう。
もう店は閉まっており指示されていた通用口から店内に僕らは入った。
採光を少し落とした店内で、店員が僕らに指輪を見せて刻印を確認するように促した。
僕は自分が確認した後美香に見せて、美香がうなずくのを見守った。
「・・いいよね?」
僕の言葉に、美香が頬を染めてもう一度うなずいた。
僕は片手で軽く美香を抱きしめて、包装を依頼する。
包装を待ってると美香が、僕の服のすそを引いた。
「・・・ねえ?優ちゃん?」
「・・・・・?」
隣に座り、神妙な顔をしながら、服の袖を引っ張る美香の顔を覗き込む様にみた。
「こんな高いの、美香いつつかったらいいの?」
美香の真剣な面持ちと、その内容になにをいってるんだろうと思わず美香を抱き寄せて笑った。
「僕の見栄と、美香が僕のものだと言うマーキングのために買ったんだから、ぼくのためだと思ってどんどん使ってください。」
微妙に、質問の意図とずれている答えに、それでも美香は納得したように、分かった!!とまじめな顔でうなずいた。
包装が出来て店員が品物を持ってきたが。美香を抱きしめてる僕を見て、苦笑していた。
その顔を見てあわてて美香が離れようと下が僕は、逃げられないように片手で強く抱きしめなおした。
美香はそんな僕を睨んで、離れようともがいていた。
「こちらが保証書になります。こちらが、鑑定書。サイズ直しなどが必要になりましたら・・・」
店員が、美香と僕の様子を笑いをかみ殺したように見ながら・・それでも淡々と必要事項の説明をしてくれた、その店員の顔を見て美香はますますあせって僕からはなれようとするが、僕はそれを許さず美香はますます僕を睨んだ。
「お幸せに。」
店員に見送られながら、やっと僕の束縛から逃れた美香は、しんじらんない!!と頬を膨らませる。そのふくれっつらを笑ってかわして、僕らはホテルへと向かった。
・・・たまには良いでしょう?・・・・・
ホテルに到着し、ルームキーを受け取って、部屋へ向かった。
その部屋からは、夜景が良く見えた。
部屋にちかずくにつれて固まっていた彼女も、窓の外に広がる夜景に心を奪われて、窓の外に見入っていた。
そんな彼女をしばらく見つめたあと、僕は夜景の邪魔にならないように、でも夜景よりも僕の存在を思い出して欲しかったので横から抱きしめた。
「きれいだね?ここに泊まれてよかったね?」
美香が身を硬くするがわかったが、そのまま美香の首の付け根に顔をうずめた。
そして、そのまま近くのベッドに引き寄せて足の間に抱きかかえるように座った。
美香は、少し怯んだように見えたが強く抵抗する事もなく、僕におとなしく従っていた。
「はめるよ?」
購入したばかりの、婚約指輪の箱を出しながら僕は彼女の指に指輪をはめた。
「・・きれい・・・。」
じっと指輪を見つめた後、僕の顔を見て美香が微笑んだ。
その唇にキスを落として僕は言った。
「美香、僕のお嫁さんになってください。」
美香は笑いながら、呆れた顔で僕に言った。
「優ちゃんそれ何回目のプロポーズ?」
「何回でも言うよ?美香が僕のものだと言う確信がもてるまではね・・・?美香を信じていないわけではないけれど、離れていると不安で不安でたまらなくなる僕の気持ちを美香はどのくらい分かってるの?」
僕の言葉に、美香は驚いた顔をする。
「美香が怖がっているのも知ってる。でもそれを無視してでも、美香が僕のものだと言う確証が欲しい。どんどんきれいになってく君を見てると、ちゃんと僕のものにしとかないと誰かに持ってかれそうでいやなんだ。」
ごめん、大人気ないよね・・・。うつむく僕の首にしがみつき、美香は僕の唇に触れた。
「・・・・・美香を、優ちゃんのものにしてくれる・・・?」
小さくささやく彼女の身体を思わず抱きしめる。いいの?と聞くと小さくうなずいてる彼女が見えた。
もう一度、今度は深く美香に口づけながら。ほんとに良いの?ときいてみた。
彼女がもう一度うなずいて、僕の口付けに甘い溜息をもらした。
そのままゆっくりとベッドに寝かせ、美香のやわらかいからだを抱きしめた・・・。
柔らかい胸を服の上から形を確かめるようになぞる。僕はその白い首筋に口付けを落とし、一つボタンを外した。
・・・その時・・彼女が、・・・あの・・・といいにくそうにささやいた。・・・・?
ここまで来て待ったはゼッタイ聞きたくない!!
不機嫌を隠さずに、美香を見るとみると、美香がおどおどと申し出た、
「・・・シャワー、は浴びたい・・・。」
・・良いじゃないか!!そんなの!!・・・
でもここで彼女に逆らって、せっかくの彼女の勇気を台無しにしても仕方ない。
ましてやご機嫌損ねたら本当に何も出来ない。
僕は溜息をつきつつ、抱きしめた手を離し彼女をしぶしぶ引き起こした。
「早く出てきてね・・・?」
もう一度抱き寄せて、唇にキスを落としてから彼女を離した。
バスルームに向かう彼女の後姿を見ながら、熱くなった身体を落ち着けようと冷蔵庫から水を取り出し飲んでいると、やけに早く彼女が出てきた。
「・・・?もう浴びたの?」
僕の問いに、いいにくそうに、彼女が言った。
「・・・ごめん、優ちゃん・・・、来ちゃった・・・。」
ここまで来てうそだろうと思い、うっかりと返した。
「・・・・・嘘だろう・・・?予定ではあと5日は・・・。」
僕の台詞に、美香が半眼で睨みつける。
「・・・なんで知ってるの?それに嘘なんてついてないよ?なんなら確かめる?」
恥ずかしがりやなのか大胆なのか分からない彼女の台詞に頭を抱えて、いやいいよとあわてて断り・・。
こんな落ちいらないよと情けない思いを抱きつつ、彼女のあとにシャワーを浴びた。
シャワーを浴びていると、ノックの音がした。
「・・・・なに?一緒に入りたいの?」
僕は少しいらついた口調で、ドアの陰に隠れて様子を伺う美香に声をかける。
「・・・大丈夫?・・・鎮めるの手伝おうか?」
その言葉に、思わず息を呑む。イマオマエナンカイッタカ・・・?
僕がかたっまている気配を感じたのか、さっきよりも大きな声でもう一度美香が言った。
「やり方教えてくれたら、鎮めるの手伝うよ?。」
聞き間違えじゃなかった・・・。慌ててタオルを腰に巻く、顔を上げると僕の目の前にいつの間にかバスルームに入ってきた美香がいた。
「・・・ちょっと待って?何を言ってるの?」
あせって僕が後ずさりをすると、美香が言った。
「だって、美香が優ちゃんがちゃんと好きなのを分かって貰いたくて・・・。」
美香の顔を見て・・・・・・あきらめた、駄目だ・・・小さいときから、極限超えると、 こいつは誰の言うことも聞きやしない・・・。
美香は裸の僕に近づき、僕を見上げて言う。
「どうしたら良いのか・・教えて?」
僕は躊躇した、こんな事彼女にさせるつもりはさらさらない。
でも美香は、僕の目を見つめて、引くつもりは全くない様子だった。
僕は諦めて、椅子に座り、美香の手をとり、かろうじてタオルで隠していたそれに美香の手を引き寄せた。
美香がぶるりと震えた。
「・・・・やめる?別にかまわないよ・・?」
首を振る美香を見て僕は溜息をつく。お前どんだけ強情なんだ、負けず嫌いも程ほどにしないと、ろくな事ないよ?
何で僕が彼女を可愛がる前に僕が可愛がられるはめになるのか・・・。
しかし僕の欲望も、もうどうしようもないところまできている。
諦めて彼女にやり方を指示して・・・僕は、はじけた。
しばらく脱力して動けない僕に美香が言った。
「大丈夫?・・・・・美香の気持ち分かってくれた・・・?」
僕は美香を抱き寄せて、頭にキスをした。
「大胆だね、いつもの美香から想像も出来ないよ?」
僕の台詞に、
「優ちゃん?私も必死なんですよ!!」
と真っ赤になってうつむきながら答えてくれた。
美香が出て行ったあと、シャワーを浴びなおして、美香を誘ってベッドに入りを彼女を抱きしめた。
思わぬアクシデントに見舞われたが、程よいけだるさに僕は満足していた。
眠りにつこうとした時、美香がいいにくそうに僕に告げる。
「・・・でもね優ちゃん美香びっくりした。」
うつらうつらしながら、僕は美香を抱き寄せて、美香の言葉の続きを待った。
「男の人のって、あんなに大きいの?」
思わず目が覚めた、標準サイズだとは思うのですが?何が聞きたいんだろう・・・。
少し嫌な予感がした。
美香が言いにくそうに打ち明けてくれた。
「・・・あのね、あんなに大きいと思わなかったし・・前よりもっと、怖くなったていったら・・・・怒る・・?」
いや、標準だしって、そういうことではなく・・進んだと思ったのに下がっている。美香と結ばれる日が、また遠退くんだろうか?
さっきまでの極上の気分が、見る見る間に沈下していく気がした・・。
翌日ホテルを出て、昼過ぎに自宅に二人で戻ったら、叔母と母に満面の笑みで迎えられた。
「首尾はどうだった?」
わが母親に聞かれ、あきれつつあきらめつつ答えた。
「・・・・・・・想像にお任せいたします・・・。」
きゃーー!!という黄色い声に送られながら、僕は帰り支度をするために、自室へ向かった。
・・・・ほんとあの人たちは・・・・。
残念ながら、美香と結ばれるのはまだまだ先だと思います。




