その37
「馬鹿みたいだ・・・本当に子供相手に何してるんだろう?」
温かいお風呂につかりながら、陽子は独り言を言う。
「でも、あれは入る余地ないよね・・・。」
いつも一番欲しいと思ったものは手に入らなかった。
それでも、自分の努力が足りないからだと思った時期もあった。
いろんなことをがんばってきたが、自分の努力で手にいれられるものばかりでない事に、気づいたのはいつだっただろう。
それに気づいた頃から、諦める事も上手になったと思う。
浴槽に半分沈みながら、考え事をしていたら、誰かがドアをたたいた・・?
「はい?」
あわてて答える。
「陽子ちゃん大丈夫?」
美香の声がした、あわてて大丈夫だと答える。
「優ちゃんの寝巻きを置いとくね。」
「・・ありがとう」
あの、ライバルはなんなんだろう?子供の癖して、料理がやたらとうまく、そして気遣いもできる、おまけに12歳年上の自分の思い人とまで射止めている・・・完璧ではないか!!
ああ情けない、と思いつつお風呂から出て用意されたパジャマを着た。
それは、細身に見えてもしっかり男性用で、陽子の手が出なかった・・。
上着の袖と、足を折り曲げて、鏡を見ながら自分を抱きしめてみた・・・。
「中野君に抱かれてるみたい・・・・とはいかないか・・・・」
・・・・・・・自分で呟いて、何言ってんだろう・・と自嘲した・・・。
柳が、風呂から出てきたので美香に入るよう促した。
お客さんが先だと言うが、今日早くから起きていたのか、時々眠たそうにあくびをしているので、先に入って早く寝るように促す。
槇原さんももう少し飲んでからと言うので、美香はしぶしぶ席を立つ。
僕のパジャマを着た柳が槇原さんの前に座った。
槇原さんは目のやり場に困ったのか僕の方を向いて助けを求める。
柳は全ったく意に介さずというか、槇原さんの気持ちに気づかず前かがみになって遠くのおかずをテーブルに手を置いて取ろうとしていた。
「・・・柳・・・生物学上女性と主張できるものが、槇原さんから丸見えらしい。」
遠慮がちに言った僕の言葉に、柳は自分の目線を下に向けて・・・ああ・・とぞんざいに返す。
「これってあっても邪魔になるのよね、」
そしてこともあろうか槇原さんに向かって言った。
「すみません、不愉快なものを見せて・・・」
槇原さんはあわてて否定する。
「いや!不愉快な事はないぞ!!むしろ嬉しい・・でなくて、ラッキー・・でもなくて・・好いもの見せてもらったって言うか・・・。」
・・・・・・・何も言わないほうが良いと思います。・・・・・・
柳は槇原さんをまじまじ見た後、胸の前を押えて、
「・・・・以後気をつけます・・。」
淡々と言って、食べ始めた・・・。
前を押えながら、食べる柳は時々、これ美味しいとか、美香ちゃん凄いとかぶつぶつ言っていた。
槇原さんは、そんな柳に話しかけたそうにするが、何気に無視されていた。
柳は食べ続けた、・・・・もちろん、前を押えて・・・・。
僕は黙って、槇原さんと飲んでいた。
・・・この空気を、何とかして欲しい。そもそもお前が無頓着なのがいけない・・・・
そんな気まずい空気を消してくれたのは柳の質問だった。、
「美香ちゃんのこといつから好きなの?」
「・・・なんで?」
「・・・単なる興味だけれども?言いたくないならいいけれど?」
それは俺も聞きたい・・と熊が身を乗り出した。
・・・・あなたは、他人の恋路より自分のを何とかしなさい!!・・・
心の中で突っ込んでみるが、口に出せるはずもなく・・・。
お酒を飲んでいた事もあり、誰かに聞いて欲しくもあり・・・。
お風呂場のほうを見ながら、しぶしぶ、僕は話し始めた。
「自覚しだしたのは、高校2年の終わりぐらいかな?それまでは、妹だと思うようにしていた。」
そん時、美香ちゃんいくつよ?と柳が聞いてきた。
「・・う~~ん・・5さいかな・・?」
「「ロリコン!?」」
柳と槇原さんが一緒に叫ぶ。
「今でも充分危ないのに!!もっと危ない時期があったんだ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
柳の無常な、言い分に逆らう事も出来ない。
「でも、僕は美香以外にそういう感情もてないから。」
「・・・じゃあ、今の美香ちゃんには持ってるって事なの!!」
柳の問いに思わず僕は答えた。
「・・・・僕も、健全な男ですから。」
・・・そんな目で見ないでください。槇原さんなら僕の気持ちもわかってくれるでしょう?
身を乗り出して、僕の言葉を熱心に聞くあまりにまた、前を押えるのを忘れている柳にまた槇原さんは、目を泳がしていた。
「何を、美香に持ってるの?」
その時に、美香が顔を出した。
・・・・・・どこから聞いていたんだろう・・・・・
僕はあせって、美香を見た。
体の小さな彼女は柳よりも危うい状態で僕のパジャマを着ていた。
その姿を見て槇原さんが思わず微笑む。
だが僕は青くなって美香に言った。
「嫁入り前の女の子が、何でそんな格好で出てくるの?何かはおって前が見えないようにしなさい!!」
僕の言葉に柳が呆れた、
「私も一応、嫁入り前なんですけれども・・・?」
美香が言った。
「後は寝るだけだし?美香の胸なんてないに等しいし?陽子ちゃんのだったら、みがいあるかもしれないけれど?」
いやいやいや、誰のが見概があるかという問題でなくて、誰のが見たいかという問題で・・・って何を考えている!!
僕は諦めて、黙って美香にバスタオルをかけてやった。
「早く寝なさい・・。」
みかはしぶしぶと寝室に引き上げていった。
柳が新しい酒を注ぎながら言う。
「・・・・で、見ごたえのある私には、バスタオルはないのね・・・」
「・・・・・槇原さんにかけてもらって下さい。」
きょとんとする柳に、真っ赤になる槇原さん。
・・・本当に、自分で何とかしてください!!男でしょう!!・・・・・・
読んでくださってありがとうございます。
毎日綱渡り更新、いつまで続くのかこの話・・・?
清水 澄 拝




