その35
「美香ちゃん何作ってくれるの?」
柳が、美香に聞いた。
柳のほうを見て、美香がリクエストありますか?と聞く。
「う~~んお刺身、魚、あと、ほうれん草と、・・煮物?」
美香が暫く考えて、言った。
「マグロのカルパッチョと、鰆のホイル焼きと、ほうれん草の白和え、小芋の鳥そぼろ?」
柳が目を丸くして言った。
「・・・凄い美香ちゃん!!それ全部出来るの?」
「大丈夫です。」
柳が調子にのって言った。
「他には?焼き豚なんていっても出来る?」
美香が笑っていった。
「時間がないから薄味になっても良いのなら。」
薄味でも食べたい!!という柳ににっこり笑って、じゃあ作りますと言う。
思わず僕が、美香が台所にずっといないといけない・・と言うと、
「焼き豚はレンジで作るし、ホイル焼きは包むだけ、小芋もそんなに手間でないよ?」
と言われて、反論できなかった。
・・・・確かに、美香は手際が良い。・・・
僕らは、僕のアパートの近くのスーパーに行き、美香を主導に必要な食材を集める。
あれやこれや覗きつつ、どんどん増えて行く柳のリクエストに呆れつつ、僕らは僕のアパートに向かった。
僕は、美香と並んで歩きながら美香に山ほどの食材をさして言った。
「柳の無茶を聞く必要はないから。」
美香は、前を向いて淡々と言う。
「・・・優ちゃんの大事な人なら、私の大事な人でもあるし・・・。」
・・・どういう意味だろう、、、、
ぼくが美香と視線を合わせて、反論しようとしたが、美香はそれを許さず、前を向いたまま僕のアパートに向かった。
僕の方を見ずにしたをむいたまま、歩いていくみかのうしろをついていった・・
気まずいままに、アパートに入った。
美香は僕のほうを見ようともせず、キッチンに向かい調理し始める。
柳は美香のそばに行き手伝おうとしていたが・・・たぶん調理は出来ないのだろう・・早々に退散して、槇原さんと飲み始めた。
そんな二人を見て、美香は、ちくわときゅうりとチーズで簡単なおつまみを作って二人に絶賛を浴びていた。
「美香ちゃん!!凄い!!」
柳の言葉に素直に赤くなって、ありがとうと言う美香がとても可愛かった。
何か手伝おうかと言ってみたが、優ちゃんが来ると邪魔になるからとあっさりと断られた。やはり風当たりがきつい。
仕方ないので酔っ払いになりつつある二人の相手をしながら、美香の様子を伺った。
時々出来たものを運んでくれる美香に呼んでくれたら良いのにと言うが、優ちゃんは飲んでれば良いからとつれない。相変わらず僕と視線を合わせないその態度に腹が立つが強くもいえなかった。
やがて、一通り調理し終わり、美香がこちらにやってきたが、やはり僕の隣に座らず、柳の隣に座る。
諦めて、美香と柳の会話に耳を傾ける。
「美香ちゃん、何でこんなに作れるの?」
真っ赤になりながら美香が言った。
「サッカーやってた頃に、大好きだった人に週末ごとにお弁当を作ってたら、いつの間にか作れるようになったの。」
・・・それは、義弘の事か・・・・
「・・その人とは、今どうなってるの?」
柳が僕の顔を、伺いながら聞いた。
「・・・別れた・・・」
柳がびっくりしたように聞く。
「付き合ってたんだ・・・。」
「うん、少しだけ。告白されたときは、凄く嬉しくて。それからもずっと好きだったけれども・・・女の子と歩いてて、美香に言い訳してるの聞いてたら、なんか違うと思って・・。」
悲しくなかったか・・・と、柳が言った。
「・・・うん、世界中の不幸が全部美香のとこに来たみたいに思った。」
・・でも・・・と美香は続けた。
僕のほうを向いて・・・。
「優ちゃんが、一晩中美香の傍にずっといてくれて、ああ美香はまだ大丈夫って思えた。」
そして、だから・・・と美香は続ける。
「その時に、私、何があっても、美香は優ちゃんの味方で、優ちゃんのしあわせのお手伝いをするって決めたの。」
僕は、美香の言葉を黙って聞いていた。
美香、僕が君に与えてもらったものの方が、ずっと多いのに・・・。
そして、僕の幸せは君の中にあるのに・・・。
柳が美香の顔を見て言った。
「それは、中野君に恋人が出来ても、良いって事?その幸せも祈るって事?」
・・・・たとえば、美香ちゃんが気に入らない人だったらどうするの?・・・・
美香が下を向いて答える。
「・・・だって、優ちゃんが誰を好きになるのは、美香の心とは関係ないし。」
・・・優ちゃんの心は優ちゃんのものだし、美香が支配できるものでないでしょう?そんなことしたら、優ちゃんじゃあなくなるわ・・・・と・・・
柳は続けた、
「・・・中野君の横に並ぶのが、自分でなくても・・・美香ちゃんは良いんだ・・・。」
美香は返事をしなかった。
「・・私が、中野君とキスしたと思って泣いたのに・・・?」
槇原さんが見かねて口を出した・・・お前中学生に何言ってるんだ・・・と。
僕はその言葉に、われに返る。柳はいったい何がしたいんだろう。
柳も、槇原さんの言葉に自分の失言に気がついたらしく、酔ったみたいだからコンビニでデザートを買ってくると言って、出て行った。
槇原さんがその後を追いかけるのを見送った。
二人きりになって美香を見ると、泣きそうな、悲しそうな、顔で僕を見る。
「優ちゃん、美香ね、陽子ちゃんと優ちゃんがキスしてると思ったら心臓が止まるかと思った。」
僕の鼓動が早くなる。
「でもね、優ちゃんを好きなのかって聞かれたら、美香優ちゃんのことはずっと小さいときからの感情しかないの。大好きだけれども、失いたくないけれども、それって、優ちゃんが迷子になった美香を抱きしめてくれたときからだよ?」
美香は続けた。
「よっちゃんや、他の人を好きになったときと、優ちゃんをすきって言う気持ちとは違うの・・。」
・・・・だから美香優ちゃんの恋人は見たくはないけれど、美香のこの気持ちがなんなのかもわかんない。・・・・・
僕は、美香を抱きしめて言った。
「・・いいよ、美香。美香がどんな風に僕を思っていても、僕が君を大事に思っている気持ちに変わりはない。君が、恋人を作っても、結婚しても、僕のこの気持ちはずっと変わらないと誓うよ。」
・・・ただし、どんな事があっても、君の隣にいるのは僕でしかないけれどもね・・・・
ぼくは、まだ美香には聞かせられない僕の気持ちに、誓いを立てる。
・・・・・僕の命が無くなるまで、君の傍から離れない・・・・・・・・・・・




