その34
僕は柳と部屋に戻り、美香にオレンジジュースを渡した。
僕のほうを見ずに、美香は小さな声でありがとうと言う。
様子の少しおかしい美香が気になったが、しきりと僕に話し掛ける柳と、このチャンスに柳と仲良くなれば良いのに、美香とばかり話をする槇原さんにはさまれて、なかなか美香と話をする事が出来ない。せっかく美香といるのに、(しかも貴重な休み!!!)僕は、少しいらいらしていた。
時計を見ると、もう18時になろうとしていた。美香の自宅まで、ここから2時間かかる。そろそろ、送っていかないと・・と思い、美香の様子を見ながら二人にそれを告げた。
柳がとんでもない事を言い出した。
「え?美香ちゃん、泊まってかないの?」
ちょっと待て、・・・どこにだ!?
「・・・泊まるとこない」美香が答えた。
「・・・中野君のとこに泊まれば良いじゃない? みんなで一緒に」
僕がびっくりする・・・何を言ってるんだ?こいつは?
「だって今日、美香ちゃん泣かしたのにお詫びもしてないし、和食の美味しいお店があるから、そこに食べに行かない?」
にっこり笑って美香に言う柳に僕が反論する隙を与えず。美香は身を乗り出して言った。
「じゃあ!!美香が作る!! そんなに凄いものは出来ないけれど、そしたら、優ちゃんちでゆっくりお話できるし!」
3人が一斉にこちらを見た・・・。きっと僕の意見を求めているんだろう・・・。
「・・・・好きにしたら・・・?」
どうせ僕の意見なんか聞く気もないのに・・・・・・・
頭が、痛い・・・・
槇原さんのライバルと思える、店員に柳が清算を頼んだ。
結局槇原さんが出してくださった。
店員はしきりと柳に話しかけている。
槇原さんも清算しながらその様子を見て彼をライバル認定したようだ。
僕のほうに不機嫌な視線を向ける。
・・・・そのとうりです。うかうかしてたら、横からさらわれますよ?・・・
・・・でも、僕は守秘義務は守りますが他人の恋路まで関与しません。・・・
槇原さんの僕に向けた視線を何気にスルーすると、ますます僕に不機嫌な視線を向けた。
・・・・・・だから、自分で何とかしてくださいって!!美香が見てるから僕は絡みません!!・・・・
槇原さんを無視して、そろそろ行こうかと、柳に伝える。
店員が柳に聞いた。
「・・・・・場所を変えるんですか?」
にっこり笑って、柳が彼に伝えた。
「中野君の家で、飲む事になったの。」
・・・ちょっとまて?食事だろう?何で未成年がいるのに飲み会なんだ?
彼の表情が見る見る間に変わった。
それを見て槇原さんが反論の余地を与えず僕を引っぱる。
「ほら中野、柳と早く二人っきりになりたいだろう?早く移動しよう。」
だからあなたも!!何で自分で言えないことを僕のせいにして僕を巻き込むんだ!!
ライバルを蹴落としたいんだったら、自分が言え!!僕を巻き込むな!!
美香が見ている!聞いている!!どうしてくれるんだ!!
恐る恐る、美香を見た。美香はうつむいたまま何も言わずに、出口から出て行こうとしていた。
美香を追いかけようとした僕の腕をつかみ。槇原さんはゆっくりと出口に向かって歩き出した。
・・・柳の背中を押して・・・・
美香は出口の脇で待っていた。
僕と視線を合わせようとしない。
僕は、色々と話したかったが、美香はそれを許してくれなかった。
僕らは無言のままタクシーに乗った。
おかしい・・・優は腹黒、俺様キャラだったはずなのに・・・・
いつの間にか、ただの、ヘタレ・・・・。
清水 澄




