その33
すっかり機嫌の直った美香に、熊のぬいぐるみを渡したら、優ちゃん大好き!!と抱きつかれた。
その様子を、生暖かい視線で見守ってくれる二人を睨み(ここは本当に睨んだ)。
柳と楽しそうにすごしている美香をおいて、僕は部屋を出て飲み物を取りに行った。
ドリンクコーナーに、この前僕を警察に引き渡そうとした店員がいた。
品物を補充する彼の後ろに立って、声をかけた。
「その節は、大変お世話になりました。」
僕のほうを見て、少しびっくりした様子で、でも僕の嫌味に全く動ぜず、彼は返した。
「・・・今度同じ事をしたら、間違いなく通報するから・・な?」
その言葉に僕は微笑みつつ言った。
「・・・事情が判明したら、恥をかくのはどっちでしょうか?」
僕の台詞に、作業の手を止めることなく彼は返す。
「警察がどう判断しても、お前があの子を獲物として認識してる事には変わりがないだろう?」
そして僕のほうを見て言った。
「違うか・・?」
それには答えずに、僕は飲み物を注ぐ。無視した僕を、横目で見ながらまた作業を始めた。
「中野君、私の分も持ってきて。」
いつの間にか来た、柳が無茶な事を言う。
「・・・どうやって、僕に3人分持てと? 自分のは自分でしろ。」
僕はそういって美香用にオレンジジュースを入れる。
「・・・美香ちゃんの分は、持ってくんだ・・・・・なんでわからないのかなぁ、こんだけ一途なのに・・・」
柳の余計な一言に、大きなお世話だと思う。その時、作業の手を止めて店員が柳に近づいていった。
「陽子さん、それ可愛いですね。」
ネックレスを持ち上げて、そいつが言った。
少し赤くなりながら、柳が答えた。
「もらったのよ・・ね?」
僕に振られたその一言に、僕がうなづくと、その店員は表情をゆがめて、僕を睨んだ。
・・・・・ああ、ここにライバルがいますよ?槇原さん?かなり強敵ですよ・・・
ピアスもおそろいなのよ・・と嬉しそうに話す柳を複雑な顔で見る店員の様子を観察しながら、この誤解を利用してこの間の借りを返せないかと思う。
手に持った二つのコップの一つを下において、もう一つ新しいコップに飲み物を注いだ。
それを、話に夢中になってる柳に持たせて、そして片手を開けるために僕の片方の手の飲み物を手渡した。
「・・・・?」
柳が怪訝な顔で、両手のコップを見ながら僕の顔を見た。
僕は自分の飲み物を持って、空いた手で柳の肩を抱いた。
「みんなが待ってるし、帰ろうか?」
「・・・?・うん?」
不思議な顔をしてる柳にやさしく微笑みかけながら、肩を抱きやや強引にその場を離れた。
目の端で、悔しそうな表情が見えた。
ざまあ見ろ!!僕は悔しそうな奴の顔を振り返り微笑みながら見た。
・・・・遅い僕を心配して、見に来た美香が見ているのにも気づかずに・・・。




