その31
二人の待つソファーに戻った。
美香は下を向いてこちらを見ようとせず。槇原さんも不機嫌な顔で僕と視線を合わせない。
・・・?様子がおかしい・・・?
二人の姿を不思議に思いつつ、待たせすぎたのかなとも思う。
柳が美香の手を取ろうとするが、美香は
「槇原の叔父さんとつなぐ・・・」
と拒否する。槇原さんも、美香の叔父さん呼ばわりの暴言(いや当たり前というべきか?)
に傷つく様子もなく美香に言われるままに手を握って、歩き始めた。
僕と、柳は必然的に並んで歩く羽目になった。
「・・・何があったんだろう?」
僕らはお互いに目を合わせた。
「お前が、僕と腕を組んだからか?」
「・・・でも助けに行ったのは、知ってるはずだし・・・。」
二人で必死に考えるが、二人が不機嫌になった理由がまったく思い浮かばない。
その内に、目的地に着いた。
柳が予約してくれたのは、少しグレードの高い部屋だった。
すわり心地のいいソファーに座っている美香の横に僕が座ると、美香は黙って、槇原さんの横に移動した・・?
いつも必要以上にべたべたして甘えてくるくせにどうしたんだろう・・と僕も少し不愉快になる。
自分のせいで僕が不機嫌な顔をしているのがわかったのか、僕のほをちらちら見るものの、僕に話しかけようともせず、僕の横に座る事も拒否する美香にどんどん腹が立ってくる。
そして、槇原さんを見ると、まるで魂が抜けたように、美香の話す内容に相槌を打つ。
狭いカラオケの部屋の中で、いたたまれない空気が流れた。
そんな時に僕の携帯がなった。表示を見ると病院だった。
「ちょっとでてきます。」
居心地の悪い空間から抜ける、良い言い訳が出来た。僕は逃げるようにその場を離れた。
柳が美香のほうを伺いながら、聞いた。
「何怒ってるの?」
美香でなく、槇原が答えた。
「直球だな・・・?」
槇原の問いに、淡々と答える。
「性格なもんで・・・」
・・・で?
と、もう一度聞いた。
「何を怒ってるの?」
美香は、諦めたように思い切りよく聞いた。
「優ちゃんと恋人同士なの?」
・・・はぁ・・?
飲もうとしていた、コップを落とした。
病院からのコールは、患者の急変でなく指示の確認だった。ほっとして、看護師さんに新しい指示を伝える。
「口頭で申し訳ない、復唱してもらえますか?それで足りなかったら戻りますが、大丈夫ですか?」
電話の向こうから、大丈夫ですと、声が聞こえる。
何時でも電話してください。いけなくてごめんなさいと、伝えて電話を切ろうとしたその時。後ろから声がかかる。
「中野君電話終わったら早く戻ってきて!!」
柳が、ドアから顔を出して呼んでいた。
「今行く!!」ドアに向かって答えた。その時に電話のむこうの人が、
「今の柳先生ですか?」と聞く。そうだけれど?と答えると、柳にも聞きたい指示があるから、さっきから連絡を取っていたのに、取れなかったと、変わって欲しいといわれた。
仕方なく、柳を呼びに部屋に戻る。・・・美香が泣いてる・・?何があった?
部屋の中を見回し二人をにらみつけた。槇原さんは居心地悪そうに、柳は仕方なさそうに、僕の顔を見た。
柳に、病棟から電話・・と言いながら携帯をわたし。泣いてる美香を抱きしめる。
柳が部屋を出て行き。その間僕は美香を抱きしめながら。くまを睨んだ。
「・・・美香に何したんですか?」
熊が、言いにくそうに、僕に言った。
「・・・ちがうよ、したのはお前」
・・・?僕が?何をしたというんだ?
柳が部屋に戻ってきた。自分の携帯を確かめて、舌打ちをする。
「マナーにしてたの、忘れてた。」
顔を上げて、僕を見て、
「ああ、美香ちゃん泣かしたのは私、ごめん。」
と僕に言った。
・・・・・・どういうことだ?・・・・・
熊と柳を交互に睨んだ。
「~~う~~ん、簡単に言うとね、さっきのショップで、この二人、私たちがキスしてるように見えたらしいわ」
何でそんなことになる!!
こちらを見ながら、笑って柳は続けた。
「ショップで、ラッピングの話したとき私の肩を持って顔を近づけたでしょう?」
「・・・ああ、お前が、ラッピングを馬鹿にしたときか・・?」
「後ろから見るとね、キスしてるように見えたらしいわ。」
思わず、槇原さんのほうを見ると、ぶんぶんと顔を上下に振っているのが見えた。
・・・なんてこと・・・だ・・・
「・・・で、僕がキスしたから、美香は泣いてるの?」
嫉妬してくれたのだろうか?少し嬉しそうに僕が聞くと、柳は無情にも首を振った。
「いいえ?私が、美香ちゃんに、それは兄に対しての独占欲?それとも、男として中野君が好きなの?って聞いたから。」
・・・僕は血の気が引いた。
「お前何を・・・」
「・・僕がわざと気づかせず、外堀固めようとしてるのに・・?黙ってろって・・?」
柳のその言葉に、僕はむっとする。
美香が、泣き止んで聞いた。
「外堀って何?優ちゃん?」
美香の顔を見て、一瞬返事がでてこなかった。だが、一息ついて僕は答えた。
「美香が、お嫁に行くまで、僕は恋人は作らないって事だよ・・・?」
よく言うわ・・・と苦々しく、柳が言う。うるさい!!お前に僕の今までの努力をつぶされてたまるか!!
「でもそんなことしたら、優ちゃんオジサンになっちゃうよ?」
「大丈夫だよ、美香が20までにお嫁にいけば、ぼくはまだ槇原さんの年にもなってない。」
おい・・と槇原さんから黒い影が見える。
柳が僕の言葉に反応した。
「・・!!えぇ!!槇原先生っておいくつなんですか?」
「もうすぐ40」
僕が変わりに答えた。
柳が容赦なく続けた。
「私より16歳も年上なんですか!!」
「・・・・・・・・・」
「美香と優ちゃんより離れてる!!」
「・・・・・・中野・・覚えてろよ・・・」
ものすごい視線で、槇原さんは僕を睨んだ。
・・・いえ、残念ながら必要のないことは忘れるたちなもので・・・
・・・明日には綺麗さっぱり忘れてると思います。・・・・・
らぶがまたどこかにいってしまった・・・。
清水澄 拝




