その24
怖いシーンは出てきませんが、生殺しシーン?(笑)は出てきます。
ある意味これが一番怖い・・?
3ヶ月ぶりに家に帰った。そういえば、美香には中学の入学式以来あっていなかった。
「優ちゃん!!お帰り!!」
無邪気に僕の胸に飛び込んでくる美香を何気に抱きしめて、僕が顔を上げると、叔父と視線が合った。
あわてて美香を引き剥がし、家に入った。
「仕事は忙しいのか?」
むすりとしながらいかにも社交辞令だという雰囲気をかもし出して、僕に聞いてくる。
「・・仕事というよりも、日々勉強ですから。」
僕の台詞に、眉を上げて、ふ~んと暫く何かを考えているようだった。
そんな、やり取りを父は不思議そうに、母と叔母はおかしそうに、遠巻きに見ていた。
美香が空気を読めずにソファーに座っている僕の首に後ろから抱きつく。そして言った。
「優ちゃん痩せた・・?」
顔が減っていないからごまかせるかと思ったが、抱きついた美香はわかったらしい。
「そんなに仕事忙しいのか?」
父が心配そうに言った。
「忙しいというより、食べるのを時々忘れて・・。」
前に回った、美香が、優ちゃん美香土日にお泊りでご飯だけ作りに行こうか?と言う。
叔父が鋭い目をした。
・・・いやいや、それは何かとまずいでしょう・・・。
「いいよ、殆んどアパートにはいないから。」
あわてて断った僕に、母が目を輝かせて聞いてきた。
「なに?彼女のとこに泊り込み?」
美香がびくりと震える。そんな様子を横目で見て、僕は母に言った。
「・・・お母さん、僕はまだ一人身です。・・話をややこしくしないでください。」
何でややこしくなるの?追い討ちをかける母に、溜息で返して、疲れたから寝る・・・と言い残して僕は自室に引き上げた。
暫くうとうとしていたら、美香がやってきた。何でパジャマ?
「優ちゃん。大丈夫?」
何がだ!?お前が僕の部屋にパジャマで来なければ僕の身の安全は保障されている・・。多分・・・。
「・・・一緒に寝るなんていうなよ」
僕は、少し引き気味になりながら、美香に言った。
ああこれ?と、自分の姿を見ながら美香が言った。
「叔父さんがね、優ちゃんが家を出ておばさんが寂しがってるから、時々泊まりにきてって、優ちゃんの部屋のお隣を美香の部屋にしてくれたの。」
・・・・そんなこと僕は聞いてない!!第一それは言い訳で、自分が美香を取り込みたかったんだろう。
「今日は美香そこで寝ようと思って。」
「その部屋は、鍵はかかるのか?」
「かかんないけれど・・・? 何で?」
では僕は、手を伸ばせば届くところに一番欲しいものがある。
けれどまだ求めてはいけないから我慢を強いられる環境で夜を過ごすわけか・・・。
・・・生殺し状態とも言う・・・・。今日は寝れるんだろうか・・・?
「それで、何?」
美香のほうを見ないようにしながら、用件を聞く。
「・・・優ちゃん何かあった?」
驚いて美香を見た。
「だって、嫌な事があったときの顔をしてるよ?ずっと。」
美香は近づいて、僕の頬をなでた。小さいときに僕のご機嫌をうかがうとき、僕を慰めるとき、いつもしてくれたしぐさだ。
僕は、美香の両手のひらをそっと僕の手で包んだ。
「自分の無力さと、情けなさに、嫌になってる。」
「・・・・・?」
「医者になったていっても、何にもわからないし出来ない。せいぜい、右と左に物を運ぶだけ。患者さんが来たって、あっけに取られてるうちに、すべてが終わってしまう。知りたい事、学びたい事は山ほどあるのに時間がない。あせるばっかりで何一つ思うように出来ない・・自分が何がしたかったんだろうと思う毎日だよ。」
美香は暫く僕の顔を見て考えていたけれど、僕に向かって厳かに告げた。
「叔母さんがいつも言ってたよね。人生挫折が大切だって。」
・・・・何を言い出すんだこいつは・・・・
「良かったね、味わえて? 出来ると思うこと事態が間違いって気づけて・・?」
あっけに取られてる僕の布団に美香はもぐりこんだ。
「!!おまえ!!一緒に寝ないって言ったろ!!」
美香はきょとんとした顔で言った。
「何言ってるの?優ちゃんが美香と寝てくれるんじゃなくて、美香が優ちゃんと寝てあげるんだよ?」
「夜中に泣きたくなったら、ちゃんと背中なでてあげるから・・・。」
安心して・・・ね?とにっこり笑う。
こいつには、一生勝てない気がする。
僕の高尚な悩みがどこかへ行ってしまった。
「・・隣で寝るのは許す。でも離れろ・・。」
僕の精一杯の抵抗も、美香は一笑に付す。
「離れたら、背中なでにくくなるから嫌!!」
・・・たのむ・・美香・・・僕の大人の事情も理解してくれ・・。
きっと一睡も出来ないに違いないと思った僕の予想と裏腹に、美香の体温と柔らかさと、なんともいえない香りは、僕を瞬く間に夢の世界へと引きずり込んだ。
朝早く目が覚めた、本当に久しぶりにぐっすりと寝られた。
隣に目をやると、眠り姫はすやすやと夢の中だ。
「自分が狼の檻の中に入ってるなんて思ってもいないんだろうな。」
寝返りを打ってこちらを向いた美香のパジャマの襟首から、白い鎖骨が覗いて見えた。
・・ヤメロ・・と言う理性の声と。・・少しなら・・と言う悪魔の声が交互に聞こえる。
結局悪魔が勝利した。
そっと、起こさないように、ひとつ、パジャマのボタンをはずして布地を広げる。
白い肌が広がった、いつこれが僕のものになるんだろう。
そんな思いを抱きつつ、ひとつ、またひとつ、所有印を刻む。
4つめにトライしようとしたとき、美香は身じろいだ。
あわてて僕は、ボタンをはめて、熱くなった体を冷やすために、シャワーを浴びに行った。
あさ、起きて来ない美香を、シャワーを浴び服を着た僕は起こしに行った。
となりの部屋で着替えていた美香が怪訝そうな顔をして僕の部屋に来た。
「優ちゃん?優ちゃんのベッド虫がいるみたいだよ?」
・・・嫌な予感がする・・・
「優ちゃんは咬まれてない?美香3箇所もかまれたみたい。でも痒くないの?何の虫かな?」
「・・・・今度、ふとん干しとくし、母さんには内緒にして・・あ、叔父さんにも言うなよ」
「・・・・??いいけれど?変なの?」
あせる僕の顔を怪訝な目で見て、でも美香は僕の言葉にうなずいた。
・・・・ がんばれ僕・・・後3年だ・・・
・・・・3年たったら、何が変わるんだろう・・・。
・・・と、優の台詞に、つっ込んで見る。
清水澄 拝




