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昨日見た夢  作者: 清水澄
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その21

   

 町に出て、何となく、二人で取り留めのない話をしながら歩いた。いつもと同じのはずだが、どことなくぎこちない。


人ごみにまぎれる美香と離れないようにと、手をつなごうとしたが、昨日のことを思い出し思わず出した手を戻した・・。そして行き場なくポケットに入れた。


そっと美香の様子をうかがうが、美香も僕と目をあわせようとしない・・・。


 ・・・・・・・そりゃそうだろうな・・本当は僕と並んで歩くのもいやかもしれない・・


 ネガティブな思いに支配されながら、これからの時間をどうごまかそうかと思案していた。突然美香が話しかけてきた。


「優ちゃん?映画どれ見るの?美香今日は優ちゃんに少しだけ合わせてあげる。」


「それは、血のでるシーンの少ないものを選んでくれると言う事かな・・?。」


「・・・・優ちゃんの大好きな、べたあまの、ラブストーリィでなければ、どれでも良いよ。」


・・・ものすごい譲歩だ・・・


「じゃあお礼に、何か美香の欲しいものを買ってあげるよ?もともと、家事のお礼だしね?」


僕の提案に美香はこちらを向いてにっこり笑い、あのね、欲しいアクセサリーがあるの・・。でも高いのよ・・・。と僕を引き寄せて耳元でささやく。


思わず抱き寄せて、良いよ映画のあとで一緒に見に行こう・・・と美香の耳元でささやいた。


美香は真っ赤になって、首をすくめた。・・・でも逃げなかったし、怖がってもいない・・・。


僕は気をよくして、美香の手を握って映画館のほうへ引っ張った。

美香は嫌がる事もなく、むしろ握り返してくれ、僕のほうを向いて微笑んだ。


 昨日の気まずさと、僕の中のネガティブな気分は一瞬でどこかに行ってしまった。


このまま抱きしめたいと言う思いと戦いながら、僕は何気ない振りをして美香に観たい映画を告げる。


 医療がテーマベストセラーの書籍が映画化された話題作だ。

美香もそれなら見たいと言ったので、二人で映画館に向かった。

 映画が終わった後、美香は今見た映画の内容を思い出し、涙が止まらなでいた。


「優ちゃんも、あんなお医者さんになってね。」

「僕は救急医になりたいし、消化器目指してないし・・・。」

「そういう問題でなく、姿勢の問題!!」

・・・・相変わらず、子供とは思えない発言・・・わかってますよ・・・。


「・・・あんまり泣くと、不細工になるよ・・・。」

僕の発言に、むくれた美香は逆襲に出た。

「・・・・優ちゃん、アクセサリー買ってくれるって言ったよね・・・?」

「・・・うん、いったよ・・?」

にっこり笑う美香にいやな予感がする。

「あそこの、ショップにうってるし、もちろん一緒に入ってくれるよね。」

美香の目指す方向を見る・・・うわ・・。僕の苦手とする・・・ファンシーショップがそこに有った・・・。


・・・・・はいるのか・・・。ちらりと美香を見ると、にっこり微笑んで僕の手を引っ張った・・・。


「いくよ・・・ね?」


・・・僕が、美香に逆らえるはずもなかった・・・。


 可愛いぬいぐるみや、お菓子、アロマのグッズに、アクセサリー・・・そんな、ファンシーなものたちに囲まれて、美香に手を引いてもらい・・・ものすごく居心地が悪い・・・。


 美香はそんな僕の様子など無視して・・・(と言うか判ってて)お目当ての、アクセサリー売り場に向かう。


美香が目指したのは、シルバーと淡水パールで出来た、ネックレスだった。


「これね、京都のお店で手作りしてるんだって、」


京都の工房で一つ一つ手作りされていると言うそれは、とても繊細なつくりで、美香の白い肌に似合う。


「ふ~ん、すごく可愛いね。」


でしょう?・・とまるで自分が作ったかのようににっこり笑って、僕に見せてくれた。


「でもちょっと高いんだよ?」


手に取り値段を見たが、6千円程度・・高い?まあ中学生にはそうかもしれない。


 ふとその横に、同じデザインの指輪を見つけた。


「これも可愛いね。」


美香に見せると、美香が・・でも、優ちゃんそれ指輪だよって言う。


「指輪だと駄目なの?」


駄目じゃないけれど・・・。と歯切れが悪い。


「でもこれも可愛いよ?」と言うと。赤くなってそうだけれど?と続く。


「・・・・こっちだけでいい・・。」これがいい・・・と美香は、ネックレスのみを持ってレジに向かった。


僕は暫く指輪を見ていたが、おもむろにそれを取り上げて美香と一緒にレジに並んだ。


美香から品物を受け取り、プレゼントですか?と聞く店員に、僕はそうですと答えて指輪も一緒に並べた。

 美香がそれを見て僕の服を引っ張り僕を見あげる。


でも有無を言わさず、支払いを済ませる僕を見て、あきらめたようにラッピングの番号札を店員から受け取った。


ラッピングを待つ間、美香が言った。


「・・・優ちゃん、指輪は、妹に送るものじゃないよ?」


「・・・・わかってるよ。」


僕の顔を、怪訝そうに伺いながら・・・見つめながら・・下を向いて美香は続けた。


「・・・叔父さんと、お父さんには、なんていえばいいの?」


「・・・・・・ネックレスだけもらったって言ってください。・・・お袋にも・・・・。」


美香が何かいいたそうに、でも結局何も言わずに、うなずいた。


もう一度、美香の手を握り締めたら、美香も黙って、握り返してくれた。


ラッピングを待つ間、美香は又アクセサリーや、小物を見て優ちゃん可愛いね・・・と話しかけてきたが・・・う~~ん居心地が悪い・・・早くラッピングが終わらないかと思う。


 そんな僕に気づいているのか、美香は笑いながら、でも、僕の手を離そうとしない・・。


ものすごく長く感じたラッピングが仕上がり、僕たちは店を出た。


何となく勢いで手をつないだままぶらぶらと、ウインドーショッピングを楽しんだ。


 暗くなった周りの景色を見ながら美香に夕食に何が食べたいかを尋ねた。


美香は少し考えて、言った。


「お家に帰って、何か作ろうか?・・・優ちゃんが嫌じゃなければ・・?」


「嫌な事はないけれど、めんどくさくなあい?」


僕の問いに、美香は小さな声で答えた。


「めんどくさくないよ?だって、優ちゃんのために作るんでしょう・・・? それより、優ちゃんこの間から携帯とか、今日のアクセサリーとか、出費多いし・・・・」


 可愛い・・・思わず抱きしめたくなる。美香の顔を覗き込んで思わず笑ったら、美香が真っ赤になって口ごもった。


 「・・・・・なんか変なこと言った?」


笑いながら首を振った僕の顔を見て、美香が又真っ赤になってすねたように言う。


「・・・・優ちゃん、美香のこと馬鹿にしていない?」


笑いながら、してないと言ったが、信用してもらえなかったようで、膨れられた。


 でも、本当に帰ってから作るより食べて帰ろうと言う僕の提案に美香はしぶしぶうなずいた。

 何が食べたい?と言う質問に美香が暫く考えた後にパスタ・・と答えた、この先に少ししゃれた、ハーブを扱うお店があるらしい。

そこで出されるパスタが美味しいと友達が言っていたと言う。


 僕たちは、美香の案内でそのお店を目指した。

美香は僕の右側に並んで歩道を歩いていたが、突然後ろにいた誰かに手を引かれうしろによろける。

びっくりして後ろを振り返った美香と僕はそこに義弘を見つけた。


「・・・やっと逢えた。」


 美香を抱きしめようとする義弘からみかを引き剥がし、僕は美香を後ろに追いやり前に出る。


「・・・何の用かな?」


 僕は義弘に表面上はにっこり微笑み、心の中で消えうせろ!と悪態をつく。


「・・・・どいてください、コーチには関係ありません。これは、俺と美香の問題ですから。」

きっぱりと僕を見据えて義弘が言う。


僕は、微笑を崩さず、義弘に返す。

「自分の問題で美香にそっぽ向かれた奴に意見されるいわれはないね。」

いこう、と美香の背中に手をやって、僕は義弘を無視して歩き始めた。


「美香もう一度きちんと話し合いたい。」

「あれからすぐに彼女とは別れた、あれからずっと美香のことが忘れられない」

「新入生名簿に美香の名前を見つけた。お前も本当は同じ気持ちじゃあないのか?」


義弘が次々と美香と僕の後ろを追って話しかけてきた。

最後の一言に、美香が振り返った。


「・・・もう一度きちんとお話したら、納得できますか?」

こんな奴と話すことはない、と言う僕の言葉をさえぎって、美香は優ちゃん私は話したい。ときっぱりと言った。

美香の勢いに、仕方がなく、進行方向にあるカフェを指す。

義弘もそれを見てうなずく。友達に断ってきます・・と、遠巻きにこちらを伺っている一団のほうに走っていった。


 「・・何を話すの?」

不機嫌を隠さずに、僕が尋ねる。


「怒ってたの?にこやかに話すし、怒ってないと思ったのに・・?」

美香がいたずらっぽく笑う。


「・・おまえ、僕の性格知ってるだろう?」

知ってるから、このまま誤解されたままにしたくなかったんだよ?このままだと、学校生活大変でしょう?・・と又笑う。

・・・?よくわからない?


義弘とともに、先ほどのカフェに入った。義弘が話し出す。


 「あの子は、同じクラスで委員会で一緒になって、仲間内で遊びに行くうちに何となく付き合ってるんだとみんなに思われて、いつの間にか公認の仲になってたんだ。・・否定するのもめんどくさいしほっといたら彼女の中でも付き合ってることになってたようで。

 あの日帰りに、きちんと美香と付き合ってることは彼女に言ったよ?」


美香は黙って、抹茶のラテを飲んでいた。

「あの後美香が、連絡を取ってくれなくなったから、何度か家に行ったんだけれども、コーチのお父さんに追い返されて。」

    ・・・・・水かけられなかっただけましだと思え。生ぬるいぞ!!父さん!!


「電話は、取り次いでもらえないし・・・」

         ・・・当たり前だろう!!ふざけんな!!


「サッカーチームもぬけたって聞いたし。」

            ・・・・お前と、会いたくなかったんだよ。


「どうしようと思ったら、入学制の名簿に美香の名前見つけて。」

・・あ、俺今去年生徒会長してたから、手伝ってるんだ・・。と続ける。


    ・・・・・聞いてないし、あんなめんどくさい事良くするな。僕は心の中で毒づく。


「もしかしたら、僕を追いかけて来てくれたのかと思って。もう一度話したかったんだ。」


義弘は、美香の手を握って、美香を見て言った。

美香はその握られた手を、何気にはずし、窓のむこう見て、コーヒーを飲んでいる僕をちらりと見て、義弘に言った。


「よっちゃんが、なんと思おうといいけれど、あの学校は美香がなりたいものになるのに、推薦枠持ってるから選んだので、よっちゃんを追いかけようと思ったんじゃないから。」


 ラテをもう一口飲んで続ける。


 「美香悪いけれど、もうよっちゃんのことは大事な友達としか思っていない。」


あっけに取られている義弘に、静かに続けた。


「中学に入って、良い先輩として声をかけてください。泉先輩。」


呆然としてる義弘を残し、優ちゃん行こう?と飲み残したラテを飲み干して美香は立ち上がった。


「・・・容赦ないな・・」

僕の言葉に振り向きもせずに美香はいった。

「女を馬鹿にしてる、何様ですか?美香がどんだけ悲しい思いをしたと思ってるのよ!!」

彼女の頭をぽむぽむたたいて、撫で回して僕は言った。


「・・・そうだな・・?」


まっ赤な顔をして、今にも泣き出さんばかりの目をして僕を見つめる。


「パスタは止めて、カラオケBOXはいるか・・?」


       何も言わず、美香はうなずいた。





読んでいただき、ありがとうございます。

 ちょっと、登場人物の年齢の確認を・・・。

 美香・・12歳 (新中学1年)

 義弘・・14歳 (新中学3年)

 優希・・これが一番大人気ないですが、驚きの24歳

 職業医師・・・研修医・


睡眠不足で・・頭がうに・・・。


 次回カラオケで、優が、警察に通報されかけます・・・。


    清水 澄拝


 

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