その182
「・・・ホント極端・・・いいけれどもね・・・・」
自分の部屋で、教科書とにらめっこしてる、二人のお嬢様を見ながら優希はため息をついた。
次の日は、代休だった。
その後、テスト前で短縮授業が始まり・・・なぜか美香は毎日のように、優希のアパートに来ていた。
「だって、家に帰るのも、優ちゃんちに来るのも一緒の距離だし?ご飯は作れるし、わかんないところは聞けるし一石二鳥でしょう?」
・・・どうせ自分は美香に逆らえないし?・・・・・
それはいいとしてどうして都ちゃんがいるのだろう?
「だって、優ちゃんがいないときわかんないトコ教えあえるし?優ちゃんがいれば一緒にわかんないとこきけるし?だめ?」
・・・いいですよ?どうせ美香には逆らえないし、二人きりになりたいと思うのは僕だけでしょうから・・・
通帳を預けてから早速と言うか、わかりやすい美香の行動に、よかったと思う部分あり、何でやねん!!と思う部分あり・・・まあ、毎日おいしいもの食べれて、いとしい彼女の顔が見れるんだから良しとしようか・・と無理やり納得させる。
・・・デモなんか理不尽・・・・・
今日も、美香が来てるとのメールで、食事と顔を見にアパートへ一時帰宅したもののテキストにかじりついてる二人を見つけて釈然としない思いをどこにぶつければいいんだろうと優希はため息をつく。
「あ!!優ちゃんお帰り~~」
満面の笑みで、優希を迎えるいとしの恋人・・・だよな?
お前は僕が思ってる何分のどのくらい僕を愛してるのかな?
出迎えてくれたって、都ちゃんがいる以上抱きしめさせてくれない、キスなんてとてもとても・・・。
ため息をつきながら、小さく”ただいま”・・と言う。
そんな疲れた様子の優希を見て、美香はそっと優希のほうに寄ってきてささやいた。
「優ちゃん最近疲れてるの?お風呂沸いてるし先に入ったら?」
ああ・・美香のやさしさが身にしみる・・・しかしここは一緒に入らないか!!だろ?・・都ちゃんがいなければそのぐらいさらっと聞いて、赤くなる美香の顔を堪能できるのに!!
・・・と心の中で、美香が聞いたらきっと怒りだすだろう、とんでもないことをつぶやいていたらまたため息が出た。
「・・・美香?わたし帰ろうか?優兄ちゃんなんか疲れてるみたいだし・・・。」
とたんに美香が、不満げな声を上げた。
「え~~?だって、都の分もご飯作ったのに?困るよ?」
そして、美香は優希を見て、言いにくそうに言った。
「・・でも本当に優ちゃん疲れてる・・・よね。美香、こないほうが良かった?」
・・・なんでそうなるんだろうか・・・
優希はあわてて、美香を抱きしめて言った。
「家に帰って、美香の顔見たら気が抜けてほっとしただけ、お風呂はいるから、ご飯用意してもらっていい?」
美香が、思わず優希の手を振りほどきながら、あわてて言った。
「わかった優ちゃん、ゆっくり入ってね。」
逃げていく美香を見ながら、もう一度ため息をつく。
・・・だから、そばにいるのに抱きしめられないのが、拷問なんだって!!!おまえ、この後僕がもう一度出かけて帰ったら寝てるじゃないか!!!・・・
寝てる相手に、あれこれしかける気もなく・・・そんなことしようものならきっと制止が利かない自分がきっといるからうかつな行動には出られない。
優希はもう一度脱衣所で大きなため息をついた。
「・・・美香の顔を毎日見れるのはうれしいんだけれどもな・・・。」
せめて、思い切り抱きしめたい・・・美香が意識のあるときに!!
ーーーーーー
夕食は、優希の好物だった。
美香は健康をきづかって和食中心である。
「・・茶碗蒸しって、レンジで作れるんだ。」
みやこの感嘆の声に、美香が真っ赤になった。
「・・うん、たいていのものは、レンジで作れるよ?たくさん作るときは、普通に作るけれど。」
都の素直な感想にも赤くなる美香が可愛い、と優希は思う。
「そういえば、美香焼き豚もレンジで作ってたね。」
優希の言葉に都ちゃんがまた目を丸くした。
「え?焼き豚なんて美香ちゃん作れるの!?すごーい!!」
都の賞賛を浴びて居心地悪そうにする美香を見ながら、まあ自分が二人きりになりたいなんて思うことは小さいわがままなんだろうなとも思う。
夕食後の、質問の時間も終了し、優希はもう一度職場へ、都は自分の家へと帰る時間になった。
「美香、上と下のかぎ締めて、誰か来ても出なくていいし、ドアは開けちゃだめだよ?」
優希は何度も言い聞かせて美香に嫌がられる。
「・・別に、いつものことだし、優ちゃん過保護すぎ。」
美香の不満げな言い分にも動じないで、もう一度同じことを繰り返す。
毎日繰り返される、問答にあきれた顔の都が、優希に言った。
「優兄ちゃん、私一人で帰れるし、優兄ちゃん直接職場に行って。」
その都のせりふに優希は眉をひそめた。
「・・女の子こんな時間に一人で歩かせられません。」
「優兄ちゃんは美香のどこが好きなの?」
都の突然の問いに、優希は目を丸くした。
「・・・う~~ん?どこっていわれてもなぁ・・・・ぜんぶ?」
あきれた視線の都に優がひるんだ。
「・・・なんか付き合いはじめの、ばかっぷるみたい・・・」
都の言葉に優が苦笑いした。
「・・それは無いでしょう?本当に付き合いはじめだし?」
都があきれたように優に告げた。
「だって優兄ちゃん、美香と長いんでしょう?美香生まれたときからの付き合いって言ってたよ?」
優が困ったように返した。
「・・・まあそうなんだけれど・・でも、美香が僕のほう向いてくれたのは最近だしなぁ・・。」
・・なんだそれは?その弱気は?12歳年上の大人の余裕は無いのか?
優希は、都の怪訝な顔に苦笑いしながら答えた。
「都ちゃん、恋愛に関しては、年齢はあんまり関係ないって。」
ますます怪訝な顔をする都に優は続けた。
「逆に、美香の年だから、いつ美香が自分の年に会った人のほうにいくかと毎日ひやひやしてるよ。」
都が驚いた顔をした。
ますます、苦笑いを深めて、優希は続けた。
「都ちゃん、恋愛なんてよりほれたほうが負けだって。だから僕は美香に負けっぱなしなんだって。」
都が不思議そうな顔をする。
「・・・そうかなぁ・・優兄ちゃん十分勝ってると思うよ?」
優希は都の頭をなでて、言った。
「・・・そう言って貰えると嬉しいよ。でも僕は何にもわかってない子供をだましてる大人だしね?」
都が不思議そうな顔をした。
「・・美香はたぶん、僕のことを子供のときの延長線上で考えてると思うんだ、自分を庇護してくれる人としてね?僕はそれにどさくさにまぎれて、乗っかってるだけだよ。」
”たぶん、美香の思ってる愛情と、僕の思ってる愛情とは違うと思う。”
都はますますわけ判らんと言った風情で優希を見た。
「美香って、そんなにあほじゃないと思うけれどもな?」
優希は都の顔を見た。
「子供は子供なりに恋愛するし?自分を小さいときから庇護してくれた人に、恋愛感情もって何が悪いの?悪いけれど?優兄ちゃんよりも美香のほうがずっと大人に見えるときがあるよ?優兄ちゃんは何が怖いの?美香の心変わり?そんなん、判らないじゃん、大事なのは美香が今誰を見てるかで、これからどうなるかじゃないでしょう?そんなん誰にもわからないこと考えたって仕方ないじゃないの?」
まっすぐに優希の目を捕らえて言われたその言葉。
きっと、同じことを誰かが打ち明けたら自分も同じ答えを返したであろう返事・・。
「・・そうだね、たしかにそうだ・・。自分のことは見えなくなるって本当だね。」
笑いながら答えた優希の顔を見て、都が憤然と言い放った。
「ほんとしょうもない!!情けない!!美香が聞いたら絶対怒るよ!!」
「「”そんなに美香が信じられないなら、別かれてあげる”って」」
同時に叫んで言ったそのせりふを聞きながら、優希はため息をつく。
「・・・そんなこというから不安になるんだけれどもなぁ・・」
都があきれたように言った。
「ほんと優にいちゃんって、美香に翻弄されてるよね?」
・・・・まったくです・・・・
ーーーーーーー
で・・いつの間にか話題は都の好きな人に移っていた。
大人な都ちゃんが付き合う人ってどんな人なんだろうね?と言う優希の言葉に都がしぶしぶ打ち明けた。
「・・最初であったときは苦手だったんだ。怖くて話もしたくなかった。」
へえ?と優希は最初は面白そうに聞いていた。
「すごい年上で大人の癖に子供みたいで、なんかかっこ悪いと思ってたのに・・いつの間にか気づいたら、そこが可愛いと思ったんだ。」
「・・・・ふ~~ん?それで?」
「でもその人は、別の人が好きで。」
「・・・そっか、残念だったね。」
「・・・・うん残念。でもいいんだ!!私もっといい男見つけるから!」
「ああ、美香が都ちゃんは最強って言ってたしね。」
「そうだよ?もっといい女になって、その人にもったいないって思わせるんだ!!」
優希は、わらって、都の頭を軽くひとつ叩いた。
「そうだね、そんな融通の利かないやつより、もっといい人が見つかるよ?都ちゃんなら。」
笑って手を振って分かれた、後ろから小さく、ごめんね・・と聞こえた気がした。
きっと気のせいだと、都は思った。
だって、私の気持ちを受け取って、それを言うならありがとうじゃんか!!




