その18
美香は無事に、志望校に合格し。僕も当然国家試験に合格した。
あの、虐げられた環境で、この業績を成し遂げた僕は、僕を自画自賛していた。
「あ~~あ・・・うかっちゃったか・・・。」
僕は、合格祝いを双方合同ですると言う母の呼び出しを受けて実家に帰っていた。
リビングでお茶を飲んでると、母が不穏な事を言う・・・。
「・・・・それは、美香に言ってるの・・?」
うんにゃ、あなた~~よ・・・?
「だって、その高い鼻をへし折るいいチャンスだったのに・・・。人間挫折を知らないと成長しないって言うじゃない?」
「・・・僕って、橋の下で泣いてたわけじゃないよね・・・。」
母が笑いながら言葉をつなげる・・・。
「あんた、昭和の生まれ?ホントじじむさい表現するわね・・・。」
そして笑いながら続けた。
「あんたの性格って私そっくりじゃない?ちゃんと、同じ遺伝子は持ってるわよ。」
・・・・・ならもう少しいたわって欲しい・・・・。
隣から美香がやってきた。そういえば、合格祝いまだしていない。
これ以上家にいたら母親に何を言われるかわからないと思った僕は、美香を誘って夕食まで出かけることにした。
美香と美香のお気に入りの店のある通りでうろうろした。
久しぶりに出る町並みと、人ごみに、はぐれそうになる。
思わず手をつないで、美香の手の小ささと温かさに、子供の体温を感じる。
そうだ、こいつはまだ子供なんだ。僕の思いはまだ絶対に知られてはいけない。
ふと、美香が立ち止まった。
美香の見ている方向を見ると、携帯のショップがあった。
立ち止まりショップの中をうかがう美香に僕は話しかけた。
「なに?携帯欲しいの?」
美香はうつむいて、いいにくそうに言う。
「・・・・お父さんと、お母さんは、まだ早いって言うんだけれども、・・・。
優ちゃんと連絡取りやすいでしょう・・?メールも出来るし。」
言われて、そうかと思いついた。連絡取りにくいなら、取れる方法を考えればいい。
メールなら、美香が寝てても送れるし、あえない距離も縮まるかもしれない。
「お父さんと、お母さんは、反対なんだ・・」
「・・・・・・うん。」
美香を引っ張って、携帯ショップへ向かう。
「・・・・?え?優ちゃん?」
「叔父さんと叔母さんには僕から言うよ。これから美香が勉強の事で僕に質問がある時に、メールだと僕も答えやすいって。ついでだから、今選んで帰ろう。僕からの合格祝いだ。」
少し強引に、ショップに入り、美香の気に入った携帯を探した。
美香は何故か古い型で僕とおそろいの色違いを選んでいた。
スマートフォンにすればいいのに。と僕が言っても。だって初心者だし、メールと電話が出来たらいいの・・と笑った。
「優ちゃんありがとう。」
買ったばかりの携帯を握り締めて、にこやかに笑う。
思わずどさくさにまぎれて少し抱きしめたら、赤い顔をして笑う。
その後、美香はファンシーショップによって、ピンクと、ブルーのビーズの携帯ストラップを買って、これもおそろい・・と言って、ブルーのほうを僕にくれた。
夕食に間に合うように帰宅した僕たちは、僕たちの合格祝いの席にいた。
僕の母は、殆んど料理が出来ないので、美香の母が作った僕らの好みを取り入れた和洋折衷の手巻き寿司がご馳走のメインだった。
席について、未成年の美香はジュースで、僕らはビールで乾杯をした・・・。が、いつも温厚な叔父が、珍しく機嫌が悪い・・・?
どうしたんだろうと、視線を送ると、母が僕をつついて言う。
「優・・あんたのせいよ、あんた美香ちゃんに、あちらに断りなく携帯かってあげたでしょう。」
・・・しまった。後で言えば良いかと思って、言ってなかった。
「何であんたが契約者で、料金支払いがあんたなんだって怒ってるのよ・・。」
・・・えっ?・・そこ・・?
叔父の顔をそっと見たが、こちらに視線を向けようとしない。
「・・それで美香は怒られてないの?」
「ソコは大丈夫みたい。由布子はむしろあなたとの連絡手段が出来てよかったわねって言ってるし・・。まあ、幸弘さんはそれも気に入らないみたいで・・・」
・・・あんたいろいろと、苦労するわね・・・前途多難よ・・・。と母はささやいた。
まあ母のたわごとは無視していいとして、確かに保護者の断りなく他人の僕が、中学生になったばかりの美香に、携帯を買い与えたのはやりすぎだったと思う。
つい、美香との連絡手段が出来るとあせってしまった。
食事会も終盤になったころ、僕は、機嫌の悪いおじさんの隣に移動して、ビールのお変わりを聞いた。
「・・・・もらおうか、由布子。優君と話があるから席を替わって。」
叔母が笑いながら、やれやれと言った感じで、席を移動した。
そして、みんなを促してリビングへと移動した。
ダイニングテーブルに残されたのは、僕と叔父のみだった。
叔父に促されて、空いた席に僕は座った。
「・・美香に携帯を買ってくれたそうだね・・・。」
・・・きたか・・・
「相談もせずに勝手な事をして申し訳有りませんでした。」
「・・・携帯に関しては、中学に受かったら必要だろうと思っていたから、別にいい」
ただ・・・・
叔父は、ビールを飲んで言葉を続ける。
「高価なものを買い与えるときには、僕らにまず断って欲しい。」
「・・・・すみません」
「それと・・、どうして今後の支払いが君になってるんだ?」
「それは、僕が美香との連絡手段として美香に携帯を持って欲しかったから・・・」
「・・・それを、俺は、父親としてどう捉えさせてもらったらいいのかな・・・?」
「・・・・・・・・・」
「・・優しい兄としての贈り物だよな・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
「くれぐれも言っておくが、美香は、中学生だ。そこを忘れないで欲しい。」
「・・・・・・・」
「いざと言うときは、貴裕の息子だとしても許さないからな。」
・・・僕らにしか聞こえない低い声で。・・・でも、しっかりとした口調で僕は釘を刺された。
僕は、叔父の目を真正面に見据えて答えを返した。
「では、美香がそれにふさわしい年になるまで僕は待ちます。僕の本気を叔父さんにわかってもらうために。」
叔父は、びっくりしたような、呆れたような顔をして、勝手にしろ・・・と。
美香たちは、僕らを残してリビングに移動していたために、僕らの会話に気づいていなかった。
ただ母親だけは意味深な顔を僕のほうに向けて、笑っていた。
僕と叔父は、リビングに移動し父と3人で飲みなおしていた。
父は能天気に、美香がどんどん綺麗になる事、中学に入ったらきっともてるだろうことを、まるで自分の手柄のように言っていた。・・・叔父はそんな父に適当に相槌を返し、そして時々強い視線を僕に向ける。
僕は、そんな叔父の視線をかわしながら、叔父と、父の、グラスが空にならないように気遣っていた。
叔母が、おつまみのお変わりを美香とともに持ってきてくれた。
美香はそのまま何故か僕の隣に座り、叔父はますます不機嫌になり、叔母はそんな叔父を見て、叔父の隣に座ってなにやらささやいた。
その、おばの言葉を聞いてますます叔父は顔をしかめる。
「そういえば、・・ゆうちゃん」
おばが聞いてきた。
「なんでしょうか?」
「携帯の代金なんだけれども、やっぱり高価すぎるから、こちらでもたせてもらえないかしら?」
僕は、ここぞとばかりに、美香に携帯を買い与えた正当性を主張した。
「実は、叔母さんたちにいただいていた美香の夏休み合宿の生活費。美香が3食作ってくれてたので、外食ばかりしていたころに比べてむしろかかってないんですよ。」
「・・・?」
叔母が少し、怪訝そうな顔をした。
「僕が、一人暮らしで外食してた食費の範囲内で、美香は僕と美香の食費をまかなってくれてたので、むしろ僕は助かってるんです。」
「だから、携帯代もその時の美香の食費にと、いただいた分でお釣りがでてて、・・・おばさんたちお返しするって言っても、受け取ってくださらなかったでしょう?だから、携帯の費用は実質僕は出していません。」
美香が身を乗り出して、優ちゃんどんだけ食費かかってたの?と聞く。
「いや、僕がかけてたんじゃなくて、美香の使い方が上手なんだよ。」
いいお嫁さんになるよ・・・と言うと。真っ赤になった・・可愛い・・・思わず抱きしめたくなる。
そんな、僕たちのやり取りを見た叔父が、ますます黒いもやを背負って、僕のほうを睨んだ。
「そうか!じゃあ、美香が嫁に行くときはぜひ、優希君に式に参列していただこう。」
「・・そうですね、一番必要とされてる席で、参加させていただきますよ?」
僕は、売られた喧嘩は買うたちだ。
美香はきょとんと、叔母は笑をかみ殺し、父は訳がわからないと言った風情で、
そして、叔父は視線で人が殺せるなら僕は、きっと命がないだろうと言う視線を僕に投げかけて。
僕らは、この場をお開きにした。
わかりにくいかと思うので補足です。(蛇足ですみません)
「そうか!じゃあ、美香が嫁に行くときはぜひ、優希君に式に参列していただこう。」
・・・・美香の結婚式に、親戚として参列しろ・・と言う、美香の父の優に対する牽制。
・・・まあ、可愛い、娘をお前にやるもんかと言う、親父の嫉妬・・・?
「・・そうですね、一番必要とされてる席で、参加させていただきますよ?」
・・・・いえいえ・・僕は、花婿の席で、ちゃんと参加させていただきますよ?・・・と言う、優の挑戦状・・・?
二人とも大人気ないです・・・・。




