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昨日見た夢  作者: 清水澄
179/185

その179

 撤収が終了し、生徒たちは・・・美香と優希を・・・気にしながら帰宅した。

 加治も、美香と優希の様子を見てまたな・・と言葉少なげに帰宅した。

 

吉田と、義弘は最後まで残り、優希たちに何か言いたげでにたたずんでいた。


 その様子をしばらく無視していたが・・やがて優希は彼らに声をかけた。

 「美香と話しょうと思っても無駄だよ・・・だってこいつ寝てるもの・・・。」


 あきれたように・・でも、愛おしげに・・優希が抱きかかえなおした彼女を覗き込むと・・確かに熟睡していた。


 「・・・いつから?」

 「・・・さあ?撤収準備のころは僕になんか言ってたから、その後かなあ?いつものパターンだね。」

 「いつもの・・・?」

吉田の問いかけに優希は面白そうに、笑いながら答えた。

 「・・いやなことがあったら、いつも僕のひざの中で丸くなって寝るんだ。小さいときからずっと・・・それで翌日にはいつの間にか元気になってる。」

 そういいながら優希は、大事な宝物を慈しんでキスををとした。

 「最初っから、かなわなかったんだ?」

 義弘のせりふに、優希はため息をついた。


 「・・・おまえ・・まだ言うか・・・?」


 「僕のおろかな横恋慕で、幻覚だったんだ・・・」


「槙原さん、こいつもっててもらえますか?」

 優希は槙原を呼び寄せて美香を預けた。美香はひとつ身じろいだがまだ寝息を立ててる。

優希はその頭をひとつなでると、”約束破ってごめん・・・”

と言って義弘に向き合った。

「柳のつけた手形だいぶ引いたな・・・?おなかに力入れろ。」

彼の肩に手を置いて優希はそのまま、握りこぶしを義弘の腹に叩き込んだ。

むせて、うずくまる彼を冷たい目で見ながら、優希は彼に言い放った。


「自分のやったこと、美香の思いを、なかったことにしてまで自分を守りたいのなら、美香を巻き込まずにひとりでやれ!あった事実を否定したってお前がした事はなくならないよ。」

義弘の横に座り込んで、彼に視線を合わせて静かに言った。


「腹立つことにな、あの頃のみかは、あの頃の美香なりに君のことが好きだったよ、間違いなくな?」


槙原から美香を取り戻しながら優希は続けた。

「・・美香が一晩中泣き続けるのに付き合った僕が言うんだから間違いない。」

美香を抱きしめながら優希は続けた。

「人に罰してもらおう、許してもらおうなんて甘ったれたことを考えずに、自分が何をすべきか、自分のやったこととどう向き合うかを、自分自身で考えろ!」


 「槙原さん、申し訳ないですがタクシー呼んでもらえますか?」


優希は美香を抱きかかえながら会場を後にした。


ドアを抜けたところでみやこが真っ青な顔をしてたっていた。

優希は都に話しかけた。


「都ちゃん僕らタクシーで帰るから、一緒に乗らない?」

少し、考えた後都は小さくうなずいた。


美香を挟んで、後部座席に座った。

都が小さな声で、つぶやいた。

「・・・ごめんなさい・・・」

行き先を運転手に告げて一息ついた優希がゆっくりと都を見た。

「・・ごめんなさい・・・優兄ちゃんの言いたいことはわかるけど・・でも、ごめんなさい・・・」

次々と涙がこぼれた・・。なくな。。と思ってもとまらなかった。


なんて事をしたんだろう、あれをなかったことにして自分は今のうのうと美香と友達なんかしてる・・。

自分はなんて浅はかでおろかなんだろう・・・。都の頭の中から美香の泣き顔が離れなかった。


「・・・ごめんなさい・・・・」


優希の大きな暖かい手が、美香を越えて都の背中をゆっくりと覆った。


「・・人間てね・・おろかで浅はかな生き物だと僕は思うよ・・。」

優希は前を向いて、誰に言い聞かせるでもなくゆっくりと言った。

「いつも間違ってばかりいるし、自分の感情に任せてついやりすぎるし、いらないこともしてしまう。」

「謝ればいいって言うけれど、謝ったってしてしまった事実は変わらないし、取り消せない。」

優希は続けた。

「自分がこんな職業についてたらひしひしと自分のいい加減さ、ふがいなさ、力の無さを毎日感じるよ。」

「だからこそ、昨日の自分を見て、今日何ができるのかを考えたいとおもう。」

「間違ったか、間違ってないかだけではなくてね。」


・・・都ちゃん、美香とのトラブルは、そこにあった事実なんだよ?それをどうして行くのかそれは都ちゃんが考えてほしいと思う。今日と明日のために。・・・・

そういって優希は都の背中を温かい手のひらでなでていた。

都の心の中に背中から優希の暖かさがしみこんでくる気がした。


・・・・・ずーっとこのままでいたい・・・都がそう思った瞬間美香が身じろいだ。

とたんに優希の手が都を離れて美香を抱きしめる・・・


「美香?目覚めた?」


いとおしさにあふれたその甘い響き・・・


急に寒くなった背中が寂しいとおもいながら都は、もう一度心の中で美香に謝っていた。



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