その177
久しぶりに泣いた。
ドンだけ涙が出るんだろうと思った。
誰も傷つけたくないと思った。
だから自分が我慢すればいいと無理やり納得した。
過去は振り返らないと決めて、自分の気持ちにふたをした。
今が問題なければそれでいいと、自分のどろどろした思いを閉じ込めた。
・・・モウアノコトニハ、ダレモフレテホシクナイ、サワッテホシクナイ・・・・
優希に甘えたいとは思ったが、優希が義弘に報復することは、はっきり言って迷惑だった。
・・・・ダッテナカッタコトニシタイノニ、ミヤコガトモダチニナッテクレタンダシ、ケッキョクアレハ、ジブンニプラスニナッタンダ・・・
無理やりそう思い込もうとしていた・・・。
・・・・・でも違う・・・。
いま、次々とあふれてくる涙を止めることができなかった。
ふれてくる涙を感じながら、美香は思う。
・・・・・・・ああ・・私って悲しかったんだ・・・・・・。
柳に抱きしめられたとき。
次々と流れる涙に驚いた。
悔しさより、悲しみがあふれたとき、傷ついていた自分をごまかしてずっと無理していたことに気がついた。
「・・・どうして、誰にもいおうとしなかったんだろう・・。」
周りの手を煩わさないように?
言えば、もっと自分が惨めになるから?
言わないで済ませられるなら・・と思った。
心配かけたくないと思った。
手を煩わせたくないとも思った。
でも今私を抱きしめてくれてる人たちは私のその行動に傷ついている。
そして黙ってたことを悲しんでいる。
もうこのまま、無かった事になんかできない。
自分の気持ちをごまかしても、傷ついた気持ちはなくなっていなかった。
・・・ああ、わたし・・悲しくて悔しい・・・・・
なき続ける美香を、いつの間にか優希が一人で抱きしめていた。
少しすねた口調で、優希は美香に言った。
「・・・結局僕が、美香のそばに一番いたくて、美香を理解したいとと思っても、美香はそうでないんだ・・・。」
優希に抱きしめられたまま美香は優希の顔を見上げた。
「・・・優ちゃん・・・?」
優希は美香を抱きしめる腕の力を入れて、美香の首筋に顔をうずめた。
「・・いいよ、美香が僕ほど僕のことが好きでなくても?僕は絶対美香を手放す気はないから・・・。」
その言葉とともに美香は優希に抱きしめられた、息が詰まった・・。
「優ちゃん?苦しいよ?」
優希は美香のせりふが聞こえないようにますます強く抱きしめた。
この人は、私が黙っていたことで、私が傷ついたことでこんなに悲しんでいる。
「・・・ごめんなさい、これからはちゃんと相談します・・・。」
美香のせりふに、もう一度優希は美香を抱きしめた。
・・・・・・息ができないほど強く・・・・・




