その176
楽しい時間進むのが早い。いくら時間制限なしとはいえ、学生の帰る時間はそう遅くはできない。
終盤が近づいてきた。
男子生徒二人と話し込んでいる美香と都の様子を、優希はじっと見ていた。
会長のそろそろお開きにしようと言う声に促され、それぞれが帰宅の準備を始めた。
そして、会場の後片付けに、数人の生徒会役員が動き出した。
「美香ちゃん、一緒に帰らない?」
食器類を、かためていたる美香と一緒にかたずけをしてた先ほどの二人が美香に問うた。
「うん・・・」
あいまいな返事をしながら美香は顔を上げて優希を見た。それを見て優希が美香に答えた。
「・・僕は明日は、午後からでいいから、どちらにでも送れるよ?」
優の言葉を聞いて美香は少し考えた後、二人に言う。
「都ともう少し話がしたいし、今日は都ちゃんと帰る。」
そのせりふに二人は少し驚いて美香を見た後方向が違うのに都ちゃん?・・と聞いていた。
そんなやり取りを見て優希が二人に”僕のところに泊めるから大丈夫・・とにっこり笑って伝えた。
それを聞いて顔を見合わせながら、美香に彼らは聞いた。
「え?泊まるって?」
その問いに優希が再び二人の様子を観察し、微笑みながら”僕のところに泊めるよ?”・・と告げた。
二人が息を呑み、顔を見合わせる・・その様子を見ながら優希は追い討ちをかけるように言葉を続けた。
「2kだし、狭いし、声は響くし、何とかしないといけないとは思ってる。」
静かに二人に聞かせるためのせりふ・・
大人気ないな・・と優希が内心苦笑いしつつ言った、そんな優希の意図に気がつかない美香がすねた。
「・・・狭いって、優ちゃん寝に帰るだけだから、これで十分っていつも言ってるじゃん?」
真っ赤になって成り行きを見守る青少年を観察しながら、優希は美香のせりふを何気に無視して彼らに釘を刺すために続けた。
「美香が16になるまでに、何とかしないといけないとは思ってるから・・。」
それを聞いて柳が意味深にうなずく。
「ああ、あそこは筒抜けだから、確かにいろいろ困るわね?・・・。」
ますます真っ赤になって下を向いてる青少年と違い、美香は不思議そうな顔をして優希に尋ねた。
「美香そんなに大きな声でしゃべってないし、何であそこじゃ都合悪いの?」
美香のせりふに、優希は美香の耳元で、でもみなに聞こえるぐらいの声で、美香に言った。
「・・・・美香は、いつまで僕に我慢させるつもりなのかな?」
しばらく黙って考えた後、美香が言った。
「優ちゃん?美香そんなに寝相悪いかな?」
周りの失笑と、ため息と・・その中にはほっとしたものも入っていたが・・、に美香が周りを見回してもう一度すねたように聞いてきた。
「・・・なんか、みんな感じ悪いよ?美香変な事言った?」
優希はため息をついて、美香を抱き寄せて聞いた。
「美香天然って、みんなに言われないか?」
そういった後、優希は笑いながら美香の頭を引き寄せて、”いいよそのままで・・美香は悪くない。”とささやき、頭にキスを落とす。
そんな優希に美香が、どこでもそんなことするのやめて!と怒る。その様子を見て都が
「美香には援助交際なんて、絶対無理だ。何であんなこと信じたのかな?・・。」とつぶやき、それに笑いながらうなずく周りもいた。
だが、そんな都のせりふに柳が反応し、そして都に食いついた。
「・・援助交際って・・・?何のこと。」
柳の低い声に、都が口を押さえてすくんだ。
かばおうと、優希が前に出たその時、ずっと柳に張り付いていた竹中の肩をつかんで引き剥がす大きな影がいた。
「・・・こいつは誰だ?何でこんなになれなれしいんだ?」
ひるむ加治を押しのけて、その塊に柳が抱きついた。
槇原は、柳を抱きしめながら、加治を睨む。そんな二人を見ながら優希はやっと来たかとつぶやきながら告げた。
「僕の友人です。恋人がいるのに、柳のことが気に入ったらしく困ってました。加治、こちら彼女のだんなさん。」
にっこり笑って紹介する優希を見た後、引きつった顔で槙原に向かった。
その後、面白そうに様子を観察する優希に加治が小さな声で言った。
「・・おまえ、既婚者なんて一言も・・・」
優希は、平然と答えた。
「恋人がいるのに、要らん手を出すお前が悪い、槇原さんは怖いぞ、少しは懲りろ。」
槇原は、二人の話を聞いてますますうなり声を上げ、加治を睨んだ。
「・・おまえ、誠意とか誠実、とか知ってるか!?」
今にもつかみかからんばかりの勢いで加治に詰め寄る槙原に、それをしのぐオーラを出しながら陽子はもう一度優希に聞いた。
「・・ところで、援助交際って何?」
その陽子のせりふを聞いて槙原が優希に聞いた。
「え?美香ちゃんのいやがらせって、そんな話にまでなってたのか!?」
まずいことを聞かれたと言う優希の顔を見て槙原はごまかそうとしたが、陽子は槙原のせりふに反応してしまった。
「・・・・いやがらせって何?・・・どういう事?・・・なんで私だけ知らないの!!」
優希は心の中で、お前が出てくると話がややこしくなるからだよ・・と思いつつそんな事は今言ったらえらい目にあう・・。
陽子に詰め寄られても、美香にこれ以上手を出さないと約束した以上は・・と優希は陽子のせりふを無視した。
話す気のない優希は切り捨てて陽子は槙原に詰め寄る。
その剣幕に、槙原は恐る恐ると言った様子で自分の知っている、今までの経緯を陽子に告げた。
今度はその怒りは美香に向いた。
「美香ちゃん!!何で黙ってたの!!」
美香はその剣幕に、おびえながら答える。
「え?だって・・もう解決したし・・・。」
陽子は優希を睨んでいった。
「その、一番の問題児はどいつ!?」
・・・誰も返事をせず、・・・。
だが収支決算の報告を陽子にしに来た会長に陽子が聞いた。
「副会長は・・どいつ?」
思いっきり首を振って言わないでと合図する美香を無視して陽子は会長に詰め寄った。
「早くおっしゃい!!」
会長が指した先に、義弘がいた。陽子は一目散に駆け寄った。
「美香ちゃんの仇!!」
思いっきり入った平手打ちに、自分のおかれた状況が理解できずに目を見開いている義弘がいた。
「・・・あなた、美香とどういう関係ですか?」
そのせりふにますます陽子は逆上して、今度は反対のほほをたたいた。
「誰でもいいわよ!!自分のしたことをしっかり自覚して反省して二度とするな!!」
「・・・・はい・・」
あっけにとられつつも、出た義弘の返事にそれでもまだ憤慨しながら柳が続けた。
「私に叩かれたからってねっ!美香ちゃんにしたことが許されると思わないでよっ!!美香ちゃんはもっとしんどい思いをしたんだからね!!どんなに償っても、あんたの罪はなくならない!!心するがいい!!二度とみかにちかずくなぁ~~」
「・・・・はい・・・・」ほほを押さえたまま義弘がうなずいた。
周りがあっけにとられる中、今度は陽子は美香のほうを向いて叫んだ。
「美香ちゃん!!私はあなたにも怒ってるの!!黙ってるってどういう事!?」
あっけにとられて、見つめる美香の肩をつかんで揺さぶって陽子は続けた。
「学校が何を言おうと、周りが何を言おうと、理不尽なことは理不尽と理解してくれるまで言わないとだめ!!あなたの人生は学校だけで形成されてないわ!!何で黙ってたの!!」
肩をゆすりながら言った後、陽子は美香を抱きしめてつぶやいた。
「・・・ごめん、気づいてあげられなくて・・・。」
なきながらそういい続ける陽子の腕の中で、美香は自分が泣いているのに気がついた。
・・・・・ああ、わたし悲しかったんだ・・・・・
そんな美香を柳ごと抱きしめて、優希が言った。
「ごめん、もっと僕が、早く、きずくべきだったんだ・・。」
・・・・・・ううん、私ももっと早く相談すればよかったんだ、悔しいって・・・・・
・・・・・・なんで言えなかったんだろう・・・・




