その170
まだ、名残惜しそうに私を抱き締めてキスをしようとする優ちゃんをはがして私は優ちゃんにコンビニで傷バンをゲットしてくるように頼んだ。
「そのままで良いのに…」
たわけ者の戯言は無視して睨んだら諦めておつかいにいってくれた。
後ろ姿を見送りながらため息が出た。
・・・・・・なにも、ごまかしてないんだけれどもな?・・・・
美香が信用ないのか、優ちゃんがひねくれてるのか、どっちだと思う?
私は、立ち上がって自分の服を調えた。
シャツは全部出て、第三ボタンまで外れている・・・ほんとに油断もすきもあったものでない・・・・
見えなくなった後姿をにらみつけた。
ーーーーー
コンビニに向かおうと、歩いていたら義弘と出会ってしまった。
こちらを見て、嫌そうな顔をしてるのが見えて、もっと嫌な思いをしろと思い話しかけた。
さすがに無視することも出来ずにこちらを向いていやいや義弘は答えた。
「どうされたんですか?こんな所で?」
彼の口からでてきた社交辞令丸出しの質問・・・・。
僕は義弘の表情を観察しつつ、優しく微笑んで言ってやった。
「美香の首の見えるところにキスマークつけたら怒られて・・傷バンで隠したいからか買って来いって言われたからお使いに来た。」
僕がさらっと言った台詞に、思いっきり不快な顔をして彼は言った。
「美香は、中学生なんだぞ?あなたは何をやってるんだ?」
僕は彼に微笑みながら返した。
「・・中学生活を不快な思い出にかえようとした、お前の行動のほうがどうかと思うけれども?」
僕の台詞に、彼が無表情で返す。
「・・・さっき美香には謝りました。彼女は許してくれるそうです。」
・・・今なんか言ったか?何を許されたって?・・・・
僕は、あっけに取られて彼を見つめた。僕の表情を見ながら彼は続けた。
「美香には謝りました。彼女は解って許してくれましたよ?誤解が原因のすれ違いだと・・・」
なんを言ってるんだろう?、二人が分かれたきっかけは確かに誤解だろう、でもその後の出来事は、あれは故意だろう?
「・・・・・それは君が原因で美香が追い込まれた状況も含めてか?」
彼は笑って答えた。
「・・・美香はそれも含めて許してくれましたよ?」
僕は怒りで頭がいっぱいになった。
「君は、美香が今まで我慢していた学校生活での状況が、君の簡単な謝罪でなかったことに出来ると思っているのか?」
彼は僕から目をそらしながら言った。
「過去は変えられないし僕は自分に出来る事を考えたら謝る事だけだと思ったから、そう行動しただけです。」
僕は怒りに握った手で彼の胸倉をつかみあげて言った。
「潔い行動に見せかけて、自己満足に浸ってるだけの馬鹿だな?君は?」
「美香は、もう君の事なんか怒ってないよ。いやもう考えたくもないんだろう。きっと今は実害ないから復讐なんてどうでも良いともおもってるだろう。そんな美香の気持ちを又嫌な思い出を思い出させてこじ開けるような事をしたんだ?君は。」
「本当に美香にすまないと思うんだったら、もう美香に近づくな!!」
僕は彼の胸倉をつかんで、思い切り押した、彼は倒れて地面に座り込んだ。
そして僕を見上げて、搾り出すように言った。
「でも、僕が今美香から離れたら、そうしたら僕は美香にしたことの報いが受けられない」
「僕には罰が必要だと思うのに、きっと美香は今の状況では自分も悪かったのだからと思って、先輩の報復を止めるでしょう?あの子はそういう子だ。昨日よりも今日を考えてもう良いよというでしょう?」
・・・・・・ソレハボクハイヤナンデス・・・・
義弘の声が訴える。
「僕は、彼女の受けた傷をもっと知るべきだと思う。そうでしょう?」
僕は頭を抱える義弘を見た。
「僕は美香と付き合ってるときもずっと心のどこかで、先輩が美香を取り返しに来るのを知っていた。そして本当は僕のものでもないことも知っていた。でも彼女が欲しかった。」
「一緒の学校になったときにチャンスだと思った。彼女が手に入るなら方法なんて何でも良かったんだ。自分の行動が最低だったのも知ってるしわかっていた。でも学校の中で起こったことに対しては先輩が口を出せないと思って、今しかないと思って、どんなきっかけでももう一度僕を頼ってくれたらって思って・・・。」
思わず義弘の前にしゃがみこんで僕は言った。
「・・・お前ね・・・愛情表現ゆがみすぎ・・・・・幼稚園じゃないんだから・・・・」
僕のほうを向いて彼は言った。
「先輩?もし美香があなたを裏切ったらどうする?」
・・・そりゃ、合法、非合法、ありとあらゆる手を使って、美香を閉じ込めて僕から離れられないようにする。・・・・
僕の表情を読んで彼は言った。
「僕と先輩は似てますよね?」
僕の、表情を見ながら彼は続けた。
「僕は、そこにつけ込んだんです。美香は僕の中に先輩を見たから、僕と付き合ったんですよ?」
僕は呆れて義弘に言った。
「・・お前ね?それは美香に対して失礼・・・」
義弘の頬を軽く手のひらで叩いた。
「お前自分がなに言ってるのか解ってるの?仮にも相思相愛だったはずの人と誤解で別れただけなのに、その間の相手の愛情も信じられないんだったら、そら別れるわな。」
呆れたような僕の言葉に義弘が僕を見た。その顔を見ながら続けて言ってやった。
「僕が、美香に誘われて、サッカーチームに入ったのは美香がお前を好きだったからだよ?」
義弘が納得行かない顔をしている。悔しいから内緒にしてた、”ネタ”なのにくそ!!
「そして、僕がそれを引き受けたのは、お前を見張るためだったんだよ?」
ぽかんとした顔で僕を見る・・・間抜けづらの義弘に追い討ちをかける。
「何が楽しくて、大学まで往復3時間の道のりを下宿せずに少年サッカーのコーチをするためだけに通わないといけないの?」
義弘が呟く”僕先輩の代わりでなかったんだ・・・”
・・・そうだよ!!悔しい事に!!むしろおまえと別れた後は、僕がお前の身代わりだよ・・・・・
「報復はしない、」
義弘が僕を唖然とした顔で見つめた。
「罰が欲しいお前には、報復しない事が報復だろう?」
・・・・ただな・・・・
「公共の場では、美香が話しかけない限り美香に話しかけるな。」
僕は義弘を残し、コンビニへ向かった。
・・・・優ちゃん、人間対人間で、どちらかが明らか悪いなんて事は、あんまりないと思うよ。
報復して過去が変わるの?変んないでしょう?不幸な人が増えて嫌な思い出が残るだけだよ。・・・
美香!!お前はね、お人よし過ぎます。!!




