その153
優ちゃんは、御免なさいと言うわりには、私を離さなかった。
私としては、ギャラリーのこともあり、ここに後4年通わないといけない事もあり離して欲しかった。
優ちゃんは私の肩に顔をうずめた形で、私に抱きついており・・彼と私の身長差ではかなり彼にとって苦しい体勢だと思うのだが・・・
もう一度優ちゃんの背中軽くたたきながら、私は言った。
「・・・優ちゃん?この体勢しんどくなぁい?」
優ちゃんはそのまま、答えた。
「しんどいけれど離れたくない・・。」
・・・・・どこの幼児!?・・・・
優ちゃんの肩越しに、谷内先生の呆れた顔と、後ろから都の溜息が聞こえた。そして、吉田会長はうろたえている。
都が優ちゃんに耳打ちした。
「・・・優兄ちゃん?せっかく、美香の悪い噂が消えようとしてるのに、あなたがもう一度たてるんですか?」
次の瞬間、優ちゃんは私から離れた。そしてばつが悪そうに私の顔を見た。
ーーーーーー
義弘の言葉を反芻する。”美香を信じていれば、美香は僕の横にいたんだ。”
負け犬の遠吠えとは思うものの、無視できなかった。
受付で見てた美香から伺える美香と同学年の、年齢のつりあった友人や異性との楽しそうな様子。
義弘の言う通り、12才も年下の子供を、たぶらかしてる自覚はある。
でも、・・・それでも手に入れたかった。
・・・そして彼の言う通り、手に入らないのなら、僕の目の届かないどこかに行って欲しいと思った。
・・・・・だって目の前にあればきっと無理やり自分のものにしてしまいそうだから・・・・たとえ壊してでも・・・・。
義弘と言い争った後で、美香を見つけてほっとすると同時に上目遣いで見つめられて、我慢できず ”僕のものだ”という独占欲から、もう自分の中に閉じ込めたいと思って抱きしめた。
美香が怒って何か言ってるのが聞こえたが無視した。
父親の、言葉がよみがえる。
”お前と関わる事で、美香の成長を止めるな。”
わかってはいるが、止められない。美香は僕のものだ、誰にも渡したくない。
・・・・義弘の事は責められないかも・・・と言う思いと、いや、許せないという思い・・・
・・・・そして美香はそんな僕に呆れないのか?という想いが僕をますます不安にする。・・・
”・・・美香、解消しても困らないけれど?”
美香の言葉に、即座に謝ってみたものの、ますます不安はつよくなる。
・・・美香って、僕のことその程度にしか思ってないんだ。・・・・
ますます離れたくなくなった。
ますます離れられなくなった。
美香が僕の背中を僕をなだめるようにやさしくたたいてるのもわかった。
・・・でも離れたくない・・・・
何か言うのも聞こえた。
・・・でも離れられない・・・・・
都ちゃんが、僕の耳元でささやいた。
「・・・優兄ちゃん?せっかく、美香の悪い噂が消えようとしてるのに、あなたがもう一度たてるんですか?」
・・・それは駄目!!!・・・・
慌てて離れて、周りを見たら、呆れる谷内先生の顔と、真っ赤になってうろたえる吉田君と、溜息をつく美香の顔見えた。
美香がもういとど溜息をつくのが聞こえた。
「優ちゃん?美香に聞きたいことがあるんだったら聞こうか?」
・・・ああ・・どちらが年上かわからないね?・・・




