その152
集めてもらった情報を確認しながら、義弘に対して効果的な制裁を加える方法を考えていた。
だが、生徒会長の吉田さんと、谷内先生がぼそぼそと話してるのが聞こえた。
「・・・ただ、彼の今までの様子や、行動から考えても・・ここまで卑怯なまねをするのがどうもしっくりこなくて・・。」
彼の言葉に冷たい視線を送った僕を、谷内先生が少しあきれた顔で見た。
僕はそんなかれに悪態を心のなかでついた。
だから、回りが勝手に誤解したのを放置してただけなんだろう?
谷内先生が僕をさとした。
「・・まあ・・確かにあいつの行動を聞く限り、おなじ男として、どうだろうと思うけれど?どうも腑に落ちない部分もある。教師に対して本性を出さない奴・・お前みたいにな?は時々いるがどこかでぼろが出るのが多い・・でも、彼は、意図して作ってるようには見えないんだ。」
ただ・・と谷内先生が続けた。
「吉田が集めた情報もあながち嘘ばかりとも思えないし、そんなかれが、此処まで何で、美香ちゃんに不利益なことをしたのかだよな?」
「・自分のプライド?意地?引くに引けなくなったんじゃないんですか?」
「・・・というか、見ない様にしてたら、気がついたらにっちもさっちもいかなくなっていた?・・にしても・・なんかこう・・そこまで、気が回らない奴でもないし・・何かを待ってるというか・・・。」
谷内先生は考え込んでいるが、僕はどうでもよかった。
「どちらにしても、美香にしたことは許される事でないでしょう?僕は許す気もありませんよ?」
「いや・・それは俺も同じ男として許せないとも思うし、好きにすればいい。・・でも、何か違うんだよな?」
そう言って、谷内先生は考え込んでしまった。
義弘の気持ち?僕はそんなのわかりたくもない、美香にしたことを思い知れと思う。
むかむかしながら、二人の顔を見ていたらドアが開いた。そしてはいってきた人が言った。
「吉田さん、どうして部外者がここにいるんですか?」
・・入ってきたのは義弘だった。今日は高等部の生徒会室しか使わないと思っていたのに、吉田君を探してやってきたらしい・・。僕と視線をあわし、淡々と義弘は言った。
「・・今日、橘さんの父兄として参加してらしたので、生徒会OBとして話を伺っていた。」
吉田さんの言葉に、義弘が笑う。
「・・・そうですか・・確かに昔は凄い人だったようですね?」
僕は義弘に静かに言った。
「・・凄いかどうかはしらないが、少なくとも何もしていない子に濡れ衣着せて陥れるようなまねはしたことなかったな?」
義弘が僕のほうを見てにっこり笑った後言った。
「12歳も年下の何もわからない子供を取り込んで、騙して自分のものにしてしまうあなたの手腕と比べて、どちらがましなんでしょうか??当然彼女を一年以上も傷つけたけた僕のほうが罪は重いのかもしれない。でも、僕もあなたと同じでどんな手を使ってでも彼女を手に入れたかった。治外法権のここで、彼女に嫌われたとしても僕に頼ってくれるかも知れない方法を僕は考えただけです。幼馴染だという特権を利用できるあなたと違って、僕にはほかに方法がありませんでしたから?」
僕のほうを向いて、淡々と言う義弘の姿を見て、僕は怒りが抑えられなかった。
「君のその自分勝手な想いが、美香をどれだけ傷つけたと思うんだ?そんなことをして美香が手に入ると本気で思っていたのか?」
僕の怒りに義弘が笑いながら言った。
「・・手に?入るわけないでしょう?・・良いんですよ?・・・もう僕の手に入らないものなら、壊れてしまえば良いと思っていましたから・・、もう二度とぼくの目の届かないところに行って欲しかった・・。」
・・こいつはなにをいってるんだろう?回りが息をのむのがわかった。義弘は、淡々と続けた。
「あなたにはきっとわからない、最初の興味は、あなたの目が彼女に向いていたからただそれだけだったのに・・何時の間にか僕の心の大半を占めて・・そして手にいれたと思ったのに、いつもいつも・・あなたの影に怯えて・・挙句・・横からあなたにさらわれた・・。」
義弘がこちらを睨んでいった。
「・・・美香は僕のものだったのに、なぜ今あなたの隣にいるんですか?」
僕は呆然と義弘を見た。その僕の目を見て、義弘が言った。
「でも先輩?あなたは僕の気持ちわかりますよね?僕とあなたは同じ種類の人間だ・・。」
僕は、義弘に返した。
「・・でもお前のしたことは、許される事ではないだろう?」
「そうですね?最初はめんどくさいから傍観してただけです。その内話が大きくなって・・でも、手に入らないならどうでも良かった・・でも、」
”あんなに傷つけるつもりはなかったんです。”
義弘は僕に聞いてきた。
「・・ねえ?先輩はもし、美香に裏切られたらどうしますか?美香を許せますか?」
「美香がお前を裏切ったんじゃない、お前が美香を裏切ったんだろう?」
僕の言葉に、義弘が言った。
「・・あれは単なる誤解です。美香はもう知ってます。」
何が誤解だというんだ?どう見ても誤解ではなかった。
「僕がもっと美香を信じていれば、今美香の横にいたのは僕だったんだ。あなたではなかった。・・でも、もう時は戻せないんです。」
義弘はにらみつける僕を無視して、吉田君に空き教室の状況を報告して、次の見回り区域の相談をしてその場を去った。
僕は、怒りに震えながら彼の言った事を考えた。
”時を戻して、美香を信じれば美香の隣にいるのは僕だった・・・?”
ではあのことがなければ僕は美香の心を捉えることが出来なかったというのか?
「・・・美香が帰ってこない。」
”・・・え?・・”
回りが僕を見るのがわかった。
「・・・・美香はどこに行ったんだ?義弘がいるのに、一人で出かけさせるんでなかった。」
僕は美香を探しにドアに向かった。




