その147
僕は美香へと伸ばしたものの行き場のなくなった手を呆然と見た。
・・・今は優ちゃん以外は考えられない、だから無理・・・
美香の言葉を心の中で反芻する。
”今は?”・・じゃあ、いつだったら良かったんだ?僕は何度も美香と話し合おうとしたじゃないか?
僕の言葉を聞かなかったのは彼女だし、話をする機会すらもたしてもらえなかった・・。
こんなくだらない理由で、誤解で、僕は彼女を失ったっていうのか?
彼女は確かに僕のことを思っていてくれたのに・・・。
何で?まだこんなに好きなのに?
・・・そして、どうして僕は目の目に居る彼女じゃないといけないんだろう・
僕はそのまま、その場にしゃがみこんだ。
涙が出てくる、情けないこんな事でなくなんて・・・
「・・ごめん、よっちゃん・・でも美香本当によっちゃんが・・」
「・・でて行け!!僕の目の前から消えろ!!」
彼女が怯むのがわかった。・・そうだそしてこれは八つ当たりだ。そんなことわかってる。
「僕にしばらく近寄らないでくれ!!何するかわからないから・・。」
搾り出すように言った僕の台詞の後、美香がドアを開けて出て行く音が聞こえた。
少し話し合って、誤解を解けば元に戻ったであろう僕らの関係。
何でこんな事になったのか?僕は彼女の不安を知らず。彼女は僕の不安を知らず。
勝手にお互いにどつぼにはまってしまった。
「・・馬鹿みたいだ・・・」
あの時どうすればよかったのか?
どこまで戻せばやり直せるのか?
僕が好きだという彼女の気持ちがどうして信じられなかったのか?
どうして不安に思ってる彼女の気持ちが理解できなかったのか?
僕も、いつ彼女が先輩に取られてしまうかと不安で不安でたまらなかった。
もっと彼女を信じてればそんな不安はなかったんだろうか?
「・・自業自得・・・、それで、あの子に危害が加わるのを知ってて知らぬ振りしてたなんて、僕って最低。」
戻ってきて欲しいと言いながら、いつも一生懸命だったまっすぐなあの子を陥れて、助けを求めてきてくれば・・と待っていた。
「・・・・・最低・・・・・・」
美香は確かに僕を好いてくれていた。でも、中野先輩という存在に振り回されて、彼女の気持ちだけを僕は見ていなかった。・・・結果がこれだ。
僕は美香に何をした?
きっと今頃中野先輩が報復の方法を、考えている事だろう。
彼女にしたことを考えれば、甘んじて受けようと思う。
僕はゆっくりと立ち上がって、続きの見回りをするべく、教室を出た。




