その145
美香こそ僕の気持ちがわかってないんじゃないか?
僕は美香しか見てないのに、どうして美香は、中野先輩を優先させるの?
僕は美香との誤解を何とか解こうと必死になった。
だが、自宅に行っても会えず・・あわせてもらえず。
学校は、下校時間が合わず。
もちろん電話は取り次いでもらえず。
塾で会えるかと思ったが、止めており。
週末のスポーツ少年団は、退団しており。
徹底した、拒否ぶりに・・・身近な人の工作を感じると共に・・
美香の怒りと、そしてこんな潔さが好きだったんだと、改めて思った。
逢えないまま、季節が過ぎた。
もう忘れようと思った。
きっと美香は、本当は中野先輩のことが好きだったんだろう・・僕とのことは気の迷いだったんだとも思った。
・・・でも、美香はあんなに人の話を聞かずに決め付ける子だっただろうか?
・・・・・・僕は重要な何かを、見落としてないだろうか?
・・・・・・できることならもう一度会いたい。
季節の移り変わりと共に、何人かの子に声をかけられたがその気にもなれなかった。
新入学予定者の名簿に、美香の名前を見つけたのはそんなときだった。
「・・美香の名前がある・・・。」
生徒会で、入学式の準備をしていて、僕が呟いた独り言を、周りの人が”知り合い・・?”と聞いてきた。
「・・誤解が元で、別かれた元彼女・・・・」
思わず口から出たその返事に、自分でしまったと思ったが遅かった。
「・・まだ好きなの?」
聞かれて返事をせずにその場を離れた。
周りが僕の様子を伺ってるのがわかったが、僕はあえてその話題に触れて欲しくないそぶりを見せた。
その週末、僕らは連れ立って、遊びに出かけていた。
人ごみの中で、美香を見つけた。
相変わらず隣に先輩が居て、
・・・・・おまけに、二人はこの前であった時よりも、空気の色が同じに見えた。・・
僕は思わず友人たちを残して美香に走りよって美香の手を引いた。
美香がびっくりとしたまなざしで僕を振り返った。
「・・・・やっと逢えた。」
思わず両手を伸ばし、美香を腕の中に取り込もうと引き寄せようとしたら、中野先輩が邪魔をする。
「・・・何の用かな?」
自分の後ろに美香を隠して、にっこり笑う先輩を睨んだ。
「・・・どいてください、コーチには関係ありません。これは、僕と美香の問題ですから。」
「自分の問題で美香にそっぽ向かれた奴に意見されるいわれはないね。」
そういいつつ美香を抱きしめるようにして、その場を離れようとする。
僕はこのチャンスを逃すまいと必死だった。
美香とやり直すんだ。
「美香?もう一度きちんと話し合いたい。」
「あれからすぐに彼女にはちゃんと話をしたよ。僕はずっと美香のことが忘れられない。」
「新入生名簿に美香の名前を見つけた。お前も本当は同じ気もちじゃないのか?」
中野先輩を意識しての台詞だった。
中野先輩がどうして僕たちの間に割り込んでくるのか?美香は僕のほうを向いてくれてたはずなのに・・・。
美香がゆっくり振り返って、僕を見て言った
「・・・もう一度きちんとお話したら納得できますか?」
中野先輩が、美香に文句を言ってるのが聞こえたが、美香は僕と話をしてくれる気になったようだ。
友人に断りを入れてカフェにはいった。
僕の話を淡々と聞いたあとに、美香は言った。
「よっちゃんがなんと思おうと良いけれど?美香はなりたいものになるのにあの学校が良いと思ったから選んだの。もう大事な友達としか思ってない。」
・・・みか?・・・やっと逢えたのに?・・・
「中学に入ってから、先輩として声をかけてください。」
・・・・ねえ?確かに誤解させるような生返事をして彼女の誤解を招いた僕が悪かったけれど?どうして僕を信じてくれないの?僕はそんなに美香に信用なかったの?・・・
呆然と彼らが去った後も動かずにその店に居た僕を、現実に引き戻してくれたのは心配して見に来てくれた友人たちだった。
何も言わずに帰宅すると告げる僕を友人たちは見送ってくれた。
ディズニーでの出来事でもそうだった。彼らは僕に協力してくれて・・・。
僕は友人には恵まれていると思う。
その後美香に、変な噂が流れてるのはうすうす気がついていた。
友人が関与してるのも知っていた。
でも、美香が何とかして欲しいとなきついてくれるかもと期待していたのも事実で・・・。
・・・でも放置していた本当の理由は、僕の手に入らないのなら、どうとでもなってしまえばよいという身勝手な思いが一番をしめていたからだった。
ねえ?美香?僕が君をどんなに好きだったか君はわかっていないよね。・・・・
時々見かける美香が、どんどん元気がなくなるのは気になったが、見ない振りをした。
僕の顔もきっと見たくないと思う・・、事実黙認してるだけで何もしてないなんていいわけは通用しない。
・・・・最低な自分は自覚していた。・・・
彼女の話題は友人たちも避けてくれていたので幸いな事にリアルタイムでは入ってこなかった。
それは僕が彼女に与えてる影響を直視しなくて良かったので、僕の救いにはなった。
でもその間彼女がどんだけ、苦しい思いをしてるのか、僕は僕の身を守るために考えようとしなかった。
でも彼女が助けを求めてくれたら助けたいと思っていた・・本当に最低・・・。
今思い焦がれた彼女が目の前に居る。
いろんな想いが、僕の中を駆け抜ける。
「君は、いつから中野先輩のことが好きだったの?」
僕のほうを向いて美香が溜息をついた。
「兄弟だって・・・思い込みたかったのに。やっぱり違ったんだね。」
「君たちはいつだって・・恋人同士にしか見えなかったよ?」
もう一度僕の顔を見て、美香が目を見開いて言った。
「・・・もしかして、よっちゃんがあの時妹って言ったのって、そんな理由だったの?」




