その14
それから、美香からよく連絡が来るようになった。
ただ、僕が実習と、仲良くなった救急の先生に頼まれたバイトのせいであまりゆっくりとは相手が出来ないのがもどかしかった。
僕の手が空いてるときは、美香とは連絡のとり様のない時間だったりする・・。
何か方法を考えないといけない、でないとまた誰かに出し抜かれてしまう。
結構僕はあせっていたが、時間は瞬く間に過ぎて行った。
なるべく接点を持ちたいと思っている僕の気持ちと裏腹に、つき1回帰宅するのがやっとだった。しかもその帰宅も疲れているので殆んど自室のベッドに寝てる状態・・・・。
でも、美香は僕が帰ると必ず、僕の部屋にいつの間にか来て僕が目覚めるころに本を読んでいるか、僕のベッドの僕の横で円くなって一緒に寝ていた・・・。
その行動は僕にちょっと困った変化を起こすので、美香にばれないようにするのが大変だった。でも、起きたときに美香の温かさを感じてこっそり抱きしめる事が出来るので・・ずるい僕は止めろとは言えないでいた・・・。
夏休みに入って、美香がいつものように僕の部屋にたずねて来た。
黙って、僕のほうを伺い・・そのうちにベッドにもたれて国試の問題集を読んでる僕の足元から回り込んで本のしたから僕の顔を覗き込んだ。
「・・・・・?なに?・・何か欲しいものでもあるの?」
何かおねだりをするときの美香だ。
「・・・優ちゃん忙しいよね・・?」
テキストを閉じて横に置き美香と向き合って美香を抱き上げてひざの上に乗せた。
「内容によっては、時間作るけれど?」
あのね・・・美香がいいにくそうに言葉をつないだ。
「優ちゃんが帰ってきたときだけでいいし、ここで勉強したいの」
「・・・・・?」
僕の首に手を回し美香がいきなり抱きついて来た。
固まる僕の頭の後ろで美香の声が聞こえた。
「行きたい中学校があるんだけれど、勉強でわからないところがあるから教えて欲しいの」
・・・!!こいつ!!こんな技!!何処で覚えた!!僕以外の男に絶対使うな!!
僕は美香を抱きしめ押し倒したい誘惑を今の僕にあるすべての理性を使って押しとどめて、なおかつ冷静さを装って、美香に言った。
「・・・教えるのは良いけれど、今からでも間に合うのか?それに、塾に行ったほうが毎日教えてもらえると思うけれど?」
「塾には行ってたんだけど・・この前止めちゃって・・・」
ああ・・・義弘と同じ中学行きたいって、5年のときから通ってたっけ・・
「もう一度通ったら?」
「・・・・優ちゃに教えてもらいたいんだけれども・・・やっぱり忙しいよね・・・。」
残念そうにいいながら、手を解き離れていこうとする美香の手を引っ張り、どさくさにまぎれて抱きしめながら、美香の耳元でささやいた。
「いいよ、美香ががんばりたいのなら協力するよ」
「何処の中学に行きたいの・・・?」
そのまま離したくなくて、抱きしめて再び耳元でささやく。
「・・中学」
一瞬で甘い気分が吹き飛んだ。
「・・おまえ・・?偏差値足りるの・・?ってそれよりも塾止めたよね・・」
この辺で知らない人がいない中高一貫の進学校だ。僕の母校でもある。
「・・・塾やめる前は一応このままだったら大丈夫って言われてた。」
「・・・・・やめる前って・・いつやめたんだっけ?」
「・・・先々月・・?」
「・・・・インターネットの模試があるし今すぐやって!結果で参考書買いに行こう。夏休み前の合格予測なんて役に立たないよ?後、秋にいくつか模試の申し込みするから受けるように。・・・できる?」
矢継ぎ早にいう僕を美香はびっくりして見つめて、優ちゃんいいの?忙しくないの?と聞く。
「僕は、普段から国試対策はしてるし今仕上げをしてる段階だから大丈夫。それよりも美香?入試は夏休み前からみんなスパートをかけるから、君のほうが心配。」とにかくすぐ始めよう。・・といいながら机の上のPCに向かい、適当なネット模試の問題を検索し始めた。
後ろから美香が抱き付いてきた。
そして、自分の頬を僕の頬に摺り寄せて、
「優ちゃん大好き。」
とささやいた。美香の膨らみ始めた胸が僕の背中を直撃する。
・・・・こいつ・・・下着つけてないのか!!
思わず理性が飛びそうになる、このままベッドに連れて行きたい・・そんな思いをひっしで押えながら、
「すぐに、今ある参考書と問題集を持ってきて・・・その間に適当な課題探すから。」
と、やっとの想いで、掠れた声で、僕に無邪気に張り付いている美香をはがしながら言った。
美香が出て行ったのを確認して頭を抱えた。溜息が出る。
・・・僕が美香に抱いてたよこしまな感情・・気づかれなかった・・・よね。
・・・・・・・・あいつは悪魔だ・・!




