その135
美香にいつ手が空くのか聞いたら、下を向いて小さな声で20分で交替の時間と言う。
周りの人たちがもう良いよ?と言ってるのが聞こえたが、美香がそれは嫌だろうと思う。
僕は、美香に言った。
「さっきの所で待ってるから大丈夫だよ?」
こちらを見て小さくうなずくのが見える。わざわざ来た僕に自分の態度はどうだろうと反省してるようにも見えた。
「・・ごめんね・・・・」
僕にしか聞こえないぐらいの小さな声でささやいてるのが聞こえた。こちらもからかいすぎたし・・と笑って、後で・・と伝えてその場を離れる。
小さくうなずく美香を見ながら、僕は先ほどのベンチへ向かった。
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優ちゃんが離れた後、父兄受付にいた高等部の人が”あれが噂の・・”とささやいてるのが聞こえた。”
・・・どうしてあの人は、波風立てないように行動できないのかと思う・・・
・・・・・でも、確かに誰にも迷惑かけてないし、悪いことしてるわけでもなく・・・・・
自分の思考に、溜息が出る。
自分はいつからこんなに臆病になったんだろう。
失いたくないものが出来たからって、自分に嘘ついて守っても仕方ないのに、
一年前の話す人もいないあの寂しい状況に戻りたくはないから、優ちゃんに波風を立てて欲しくないと思う。
もう今のままで触らないで・・・・、美香今のままで充分だから。
優ちゃんにあまり聞かせたくないこの感情。
優ちゃんは、私のほうをまっすぐ見てくれてるのに、私を守るためにがんばってくれてるのに、それを素直に受け入れられない自分が嫌になる。
ごめんね、美香なんでこんなに臆病になってしまったのかな?
一緒に一般入場者の受付をしてた高等部の先輩が私の顔を見て笑って言った。
「大丈夫だよ。なるようになるよ。」
思わず、顔を見たら、もう一度笑っていってくれた。
「何が本当かは、もう分かってるから、美香ちゃんはそのままで良いよ。」
私と、優ちゃんを見比べて、相変わらずひそひそばなしいてる高等部の先輩のほうをむいてしかたないな・・と言う顔をした後、もう一度笑って私のほうを向いて”気にしないの”と笑って言ってくれた。
その笑顔を見ていたら自分が情けなくなると同時に、だんだん腹が立ってきた・・・。
美香なんで、こんなに考える事が多くなってるんだろう?
どうしてこんなに注目される羽目になってるんだろう?
この状況を作り上げてる原因を考えているとどうしてもある人物の顔が思い浮かぶ・・。
にこにこ笑いながらわが道を歩いて人を混乱の渦に巻き込むあの悪魔・・。
そうだ!!優ちゃんの思考がお子様なのがいけないんだ!!
わが道を行くのが悪いとは言わない!!でも周りの状況を考えて!!わが道を行ってくれ!!
私は巻き込まれるのは真っ平だ!!!
私の表情を見て、先輩がびっくりした後、苦笑いをする。
”ホント面白い・・百面相だわ・・・”
いえ、すべてあそこに涼しい顔して座ってる男が悪いんです!!小さい時からそうでした!!私はずっと彼に振り回されてる気がします!!
私の心の声が聞こえたのか聞こえないのかわからないが、笑ってる先輩の顔を見ながら思う。
「うじうじ悩むなんて美香じゃないわ!!!」
思わず心の声をだだ漏れにした、私に都が言った。
「・・確かにね?一年半、じっと我慢した根性を発揮しても良いよね、少しの噂話なんか今更でしょう?」
都の顔を見て思う、そうだ今更だ、あの頃こんなに色々な人と関わる自分を想像できただろうか?
トラブルなんて自分の力で何とかしないと前に進めないと思う。
見据えて、逃げなければきっと道は開ける。
優ちゃんあなたがナニ企んでくれてるのかしらないけれども?美香は黙って王子様の登場なんか待ってないことを思い出してもらうわ!!
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じっと美香の様子を見ていたら・・・
何かこっちを睨んでぶつぶつ言ってるのが見えた・・。
あまり良い予感はしない・・・・。
昔からそうだ、もう少し頼ってくれても良いと思うのに、見守ってると結局は自分で解決して何時の間にか前に進んでいる。
もっと頼って欲しいと思うのに、僕の腕の中から出て行けなくなれば良いのにと思うのに、何時の間にか自分で出口を見つけて、出て行ってしまう。
そんな美香を見てると、凄いなと惚れ直すと同時に、僕がいなくては生きていけなくなれば良いのにと悔しくも思う。
「父さんが、 成長を阻むなって言うのは僕のこんな感情のせいもあるんだろうな・・・。」
でも今回に関しては、美香に怒られても手出しをさせてもらおうと思う。
「僕が、許せないんだ。・・ごめんね美香。」
さて、美香に怒られるのを覚悟して、僕の気がすむ落とし前を付けに行こう。
僕は美香がこちらに走ってくるのを見ながら考えていた。
・・・でも、美香?ちょっと顔怖いよ・・?・・
美香・・きっとそれは八つ当たりではないかと思うんですが・・・?




