その131
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澄 拝
一年以上も続いた状況がそんなにすぐに変わるはずはない・・と思った私の予想を裏切って、私の周りは急速に変化していった。
お昼は都と食べる事が多かったが、クラスメートからも良く話しかけられるようになり、遊びにも誘われた。
そして頼まれた生徒会の手伝いが予想以上に大変だった。
私達の学校は文化祭と体育祭を日を続けて4日間で行う。
しかも、中等部と高等部が合同で行うので非常に大掛かりなものになる。
手伝って欲しいと言われて、たまに参加と答えたはずなのに、気がつけばしっかり都と共に主要人員に組み込まれていた。
都と雑務に走り回る日々・・一人の時間なんてもてるはずもなく・・・。
今までひたすら、目立たないように隠れてひっそりと日々を過ごしていた私はこの環境の変化についていけないでいた。
たまにかかってくる優ちゃんからの電話で愚痴をこぼすと、優ちゃんは面白そうに笑うばかりであまり熱心に聴いてくれず・・。
「優ちゃん美香、本当に困ってるんだけれども?」
私の不服そうな声にも笑って聞き流している・・・。
「一年半分の出来事が一気に押し寄せてるんだと思ってしばらく我慢したら?その内慣れるよ?」
・・・全く取り合ってくれない・・・・
都が、その内あなたの彼が何とかしてくれるって言ったが、一体いつの事なんだろう。
・・ああ優ちゃんに逢いたい。でもそんなこと言ったら喜ぶから悔しいし言いたくない。・・・
友達と遊びに行く機会も増えて、おこずかいも足らない、優ちゃん家までの電車賃を捻出できないでいる私は、以前のように突然思い立って優ちゃんのところに尋ねていく事も出来ず・・・。
・・・優ちゃんって、美香と会えなくても寂しくないんだ・・・・・
八つ当たりに似た想いまで、こみ上げてくる・・・。
でも、今の学校生活を考えて、仕事は大変だけれども沢山の人に囲まれてわいわいする事が楽しくないかといえばうそになる。
これで優ちゃんに合いに行く時間とお金がもっとあれば言う事はないのに・・・。
私の気持ちがわかったのか優ちゃんが笑いながら言った。
「どっちにしても、今整形外科回ってるから、時間は取れない。外傷が来たときに、必要だからしっかり勉強しておきたいんだ。秋の総合祭(文化祭+体育祭)には必ず顔を出すから、頑張って。」
・・・う~~ん・・・
「・・わかった・・・」
私の不服そうな、歯切れの悪い答えに優ちゃんは笑いながら言った。
「美香、愛してるよ。指輪が直ったから、今度逢えるときに渡すね?おやすみなさい。」
「・・・オヤスミナサイ・・・」
棒読みの私の台詞に、優ちゃんは笑いながら電話を切った。
今度って、いつだろう?
まさか!!一ヶ月先の総合祭まで逢えないの!!
来月分のおこずかいもらったら、早々に合いに行こうと思ってたのに、暗に来るなといわれたし。
「・・信じられない!!釣った魚にえさやらないって、ホントだったんだ・・・。」
私は思わず、傍にあった以前優ちゃんにもらったくまのぬいぐるみに八つ当たりをした。
「優ちゃんなんか、大嫌い!!」
ーーーーーー
美香との電話が終わって思わず微笑がもれた。
今まで愚痴も出なかったのに、文句満載の受け答え。
生徒会がどれだけ大変で、都ちゃんと共にどんだけ振り回されて、友達との付き合いがどんなに大変かと・・・。
でもその言葉の端々に、ものすごく楽しいよ・・と美香が笑ってるのが聞こえてくる。
整形外科のローテートは思ったより大変だった。
外傷を見ることを考えると、はずせない分野なので、必要だという軽い気持ちで回っていたが、単なる骨折を見るだけでなく、頚椎や脊椎の損傷例が多く、一生その問題と向き合っていかないといけない人が多いことに驚いた。しかも年齢が若い人が多い。
バイクや車の外傷で受傷した事を思えば当然だが・・・。
救命率は年々向上している。それに伴って後遺障害を持ったまま、その後の生活を送る人も増えている。
僕は救命を目指してるので、今後専門医になればなかなか向き合うことの出来ないかもしれない、救命後のQOLに対して考える良い機会だと思った。関わっていく方法をこの機会に真摯に考えたい。
「また、槇原さんたちに程ほどっていわれるんだろうなぁ・・・」
美香とも2週間以上あってないのに、忙しいからと少し邪険に扱ってしまった自分を反省する。
「きっと今頃釣った魚に・・とか言いながら、ぬいぐるみに、八つ当たりしてるんだろうな・・」
思わず目に浮かんで、笑がこみ上げる。
・・でも?と、ふと考える・・・
「今までも、逢いたくなったら勝手に来てたのに、回数へってないか?」
・・・そういえば、冷蔵庫の食材も増えていない・・・
思いあたりを考える、今まで誘いのなかった友人に誘われて、カラオケやなんだと、遊びに行ってるから、交通費がないのかもしれない・・・。
「・・・言えば、出すのに・・・。」
思わず言った自分の台詞に、美香の性格を考えると、そんなおねだりする奴じゃないよな・・と思う。
「考えてやらないとな?・・・」
とりあえず、風呂に入って文献を読もうと思い立ちあがって、机に飾ってる美香の写真に話しかけた。
「もう少し、僕に甘える方法を覚えて欲しいな・・・。」
僕の台詞に、”代償が怖いから、ヤダ!!”と写真が言った気がして、笑ってしまった。
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