その13
ホラー・・・スプラッタ好きの方、申し訳ございません・・・あくまでも登場人物、個人のいち意見としてお読みになってください・・・・。
ラブストーリーを見ようと誘ったが、アクションホラーがいいという・・・二日酔いのときにそんなもの見たくもない・・・
だけど、結局僕は美香に負けて見たくもないスップラッタ映像を見る羽目になる。・・・こんなの現実のERの映像と重なるから大嫌いだ。
白衣を着ていれば、手が飛ぼうと、内臓が見えようと平気だが、バーチャルの世界でまでそんなもの見たくはない。
「本当に、優ちゃんって 血に弱いよね・・・。」・・お医者さんになるんでしょう?・・と、よりにもよってトマトジュースとケチャップたっぷりのホットドッグをほおばりながら美香が、呆れた声を出す。
溜息をつきながら僕は心の中で悪態をついた。
馬鹿タレ!!ERで血を見ても平気だ、この命をどうやって助けるかのせめぎあいがあるからどんな状況でも怯まないのであって、あんな、見せるためだけのえげつない映像に耐える必要が何処にあるんだ!!悪趣味の極み!!!
「仮想現実は、えぐいだけだから ヤダ・・・」
今見た映像なんてお構いなしに、ぱくぱくと昼食をほおばる美香に、僕の分のホットドッグも押しやり、コーヒーだけ胃の中にいれた。
美味しそうに食べる美香から、もう一度ためいきをついて、視線をそらし斜め後ろの2人をみた。
中学生らしいその2人はにこやかに微笑んで初々しい・・・・?あれ?そのむこうの二人ずれ?義弘・・・?誰だ・・・・?何でそんなに仲よさそうに女の子と話し込んでる?
僕の怪訝そうな顔に美香が急に「どうしたの?」と聞いてくる。
「いや、食べ終わったのなら・・こないだ欲しい洋服があるっていってたよね?見に行こうか?」
え~~ゆうちゃん買ってくれるの? 思わずハートを散らしている美香を、後ろが見えないように、こちら側に引っ張って僕たちは店を後にした。
美加の大好きなファンシーショップと(僕は身の置き所がなかった・・)ショップッを覗いてショッピングを楽しんだ。あんなに、ハートを散らしていたわりには、美香は僕の懐具合を気にして高いものはねだろうとしない。
夕方、あまり遅くなると僕の父がうるさいので程ほどの時間でデートを切り上げた。
駅の切符売り場で、よりにもよって昼間見た女の子と寄り添って切符を買ってる義弘に出会ってしまった。
しまった、と思ったときは遅かった・・。
美香が僕の横で固まるのがわかった。
「・・よっちゃん・・?」
美香が思わず声を上げた・・。
どう見ても、仲のいい付き合い始めの2人にしか見えない。どう言い訳するんだろうと息を潜めて成り行きを見た。
「・・・?泉君?・・お知り合い?」
固まる義弘に、先に横に寄り添っていた娘が声をだした。
促されて気づいたかのように、その女の子に返していた。
「・・うん、小学校のときに所属してた、少年サッカーチームのコーチと・・・・・妹さん・・」
最後の台詞は、本当に小さな声で、消え入るように・・・でも、僕の横にいた美香にも聞こえただろう。美香がますます固くなり、僕にしがみ付くのがわかった。
「・・・今日は、そのことデート?・・義弘の彼女かな・・?」
僕は、大人気ないと判りながらも、義弘に対する怒りを込めて聞いてみた。
横にいる女の子が真っ赤になって義弘をつつき・・・、そして、こちらを向いてにっこり笑って言った。
「先月から、彼女になりました。よろしくお願いします。」
義弘は真っ青になりながら美香のほうを見て何かいいたそうにしていた。
美香が突然顔を上げてにっこり笑っていった。
「泉先輩、さようなら。」
優ちゃん、違う路線で帰ろう・・。と僕の手を引っ張っる美香とともに、僕たちはその場を離れた。
帰りの電車の中で、美香は一言も喋らなかった。
泣きもせず、怒りもせず、僕にあたる事もなく。・・・じっと怖いくらいに前を向いて黙っていた。
帰宅すると、叔母さんから美香に義弘君から何回か電話があった事と伝えられたが、美香はかけなおす気はないらしく返事をせず、おばさんにとがめられていたが、僕もかけなおさなくて良いと静かに言ったので、叔母は僕の表情で何かあったときずいたのだろう、それ以上は何もいわなかった。
食事の後、美香はラグのうえでクッションにもたれて座る僕のひざの間で円くなっていた。
「・・美香のそんな姿見るの久しぶりね・・・」
叔母の声に、僕は読んでいた本から顔を上げる。
「ちっちゃいとき、いやな事があったら、すぐそこに逃げ込んで誰にも触らせなかったじゃない?いつからかしなくなったと思ったのに・・・たんに、する機会がなかっただけなのかしら・・? 優希君がいなくなって一番寂しかったのは美香かしら?」
いつまでたっても優希君がいないと駄目なのかしらね・・。
僕は、美香のかみをなで、背中をやさしくたたいた。美香は、僕のしぐさに反応して猫のように体を振るわせる。
その時、叔父が隣の子機を持って入ってきた。
「美香、義弘君から電話。」
美香が体を振るわせた。暫くためらっていたが起き上がり僕のひざの間に座りなおし電話をとった。
「もしもし・・? 泉先輩ですか?」
電話の向こうで、義弘が一生懸命言い訳しているのが聞こえてきた。黙ってそれを聞いていた美香が静かに言った。
「自分の心をごまかせると思うならどうぞ続けてください。私をごまかしたって、先輩の気持ちにはうそはつけないでしょう?」
・・・美香・・・お前は本当に、小学生か!!!!
そう淡々と告げた後、静かに電話を切った。
そして、電話を叔父に渡すと、美香は僕に向き合って叫んだ。
「優ちゃん!!美香!!今日優ちゃんのベッドで寝る!!もう寝る!!!!」
僕に抱きついてヒステリックに叫びながら泣き出した美香はやはり小学生だった。
泣き出した美香を抱きかかえながら、あっけに取られている叔父たちに苦笑いを返し、美香を連れて上がる事の了解を得て、僕は美香をなだめるために美香を抱きかかえて、自室へと向かった。
その日美香は一晩中泣いていた。・・・・僕の腕の中で・・・・・。
逆転ゴールは目指したかったが、この形は望んでなかった・・・・。
翌日の朝、義弘が訪ねてきたが、美香の意志は変らず本当に潔かった。
僕が口を出す隙もなく美香はきっぱりと、・・・昨日あれほど泣いてた姿も微塵も見せず・・・
義弘に別れを告げた。・・・本当にお前は小学生か・・・?
でも、そのあと一日中、僕のひざの中で円くなってご飯も食べなかった・・・・。
翌日、朝早くアパートに帰ろうとする僕に美香はおにぎりを差し出した。
「・・優ちゃん。今度はいつ帰ってくるの?」
おにぎりを受け取る振りをしながら、その小さな手を僕の手で包んだ。まるで、飢えたおやじだ・・・。自分で突っ込んでみる・・・。
「いつ帰って欲しい?」
「・・・勉強忙しいんだよね?もういいよ?美香が遊びに言ってもいい?」
おもわず、引き寄せて頬にキスした。美香が片手を僕の首の後ろに回した。
「優ちゃんのにおいだぁ・・遊びに行くね?」思わず、抱きしめて唇にキスしそうになった。すんでのところで思いとどまり、指切りをして、僕は駅に向かった。
頼む美香早く大人になってくれ・・・。僕が犯罪者になる前に・・・・




