その125
忘れ物を取りに教室に向かっていたら、声をかけられた。
「橘さん、あの人本当に婚約者なの?」
振り向くと、あの噂を無責任に流している彼女がいた。
私は彼女を見ながらうなずいた。
彼女の視線が、指輪にいった。そして彼女はそれを見ながら言った。
「・・・信じられない、私達まだ中学生よ?」
彼女の台詞に、どう返事をしようかと考える、だが彼女は言葉に詰まった私を、無視したと取ったようだ、表情を変えて、私のほうを向いて続けた。
「先生まで巻き込んでこんなでまかせをして、あなたどうするつもりなの?」
・・・・どうするもこうするも、事実だし・・第一事実出なければ父兄代理なんて無理だろう。・・・
どうしてこのひとは、優ちゃんとのことが嘘だと思いたいんだろう?別に彼女に実害があるわけではないのに。
私が考えをめぐらせてるのも、無視されたととったようで、彼女が私の手をいきなりつかんで、指輪を私の指からあっという間に抜き取った。
「!!!!」
彼女は笑いながらその指輪を、校舎の窓から中庭に向かって投げた。
「何するの!?」
思わず彼女につかみかかる私がいた。
ーーーーー
谷内先生の頭に、石が当たった。
「痛い!」
跳ねて僕のほうに飛んできた、石を僕は受け止める。
「何が、降ってきたんだ?」
谷内先生の痛そうな顔を見て、天罰だと僕は思う。
その先生に天罰を与えた物体を僕は手のひらを開いてみてみた。
・・・美香の指輪?・・・・
思わず上を見上げると、誰かに摑みかかってる美香が見えて、僕は校舎に駆け込んだ。
取っ組み合いをしてる二人を教室の前で見つけた。
こんなに怒る美香を見るのも久しぶりだ。僕は、関係ないことに感心しながら、さて止めようかどうしようかと、悩んでいた、
・・・美香も相当たまっているだろうしなぁ・・・ある程度の仕返しは許されるかもしれない・・・
だが僕のそんな思いも、遅れて到着した谷内先生には伝わらなかった。
「お前、足速いなぁ・・。」
息も絶え絶えになりながら、谷内先生が目の前の光景を見て、止めに入った。
「おまえら、中学生にもなって、取っ組み合いの喧嘩するなよ・・・」
呆れた声と顔で、止めようとするが、息が切れてるために谷内先生の声は小さく、夢中になってる二人は気がつかない。
僕のほうを向いて、谷内先生が言った。
「中野・・お前面白がってないで、止めろよ?」
先生に向かって僕は淡々と返した。
「・・学校でのトラブルに僕が関与していいんですか?」
”お前保護者代理だろ・”谷内先生の呆れた顔に僕は返した。
「・・じゃあ、なおの事美香の好きにさせます。あいつは、一年近く我慢してたんですよ?」
僕の言葉に谷内先生がうなって黙った。
「怪我したら、僕が手当てするのでもうしばらくほっといてください。」
僕の言葉に谷内先生がわかったと小さく言った。
どのくらい時間がたっただろうか、やがて美香が相手に大きな声で言った。
「あなたが無責任な噂を流して、その噂が嘘だとばれてあなたの立場が悪くなったとしても、それは私のせいではないわ!!!責任は自分で取りなさいよ!!私は知らないし、あなたに当たられる筋合いもない!!」
相手が、美香に対して言った。
「援助交際してないって証拠がどこにあるのよ!!今日連れてきた人がその相手とは限らないし、あなたがひろ先輩弄んで捨てたのは事実でしょう。」
美香がそのこを睨みつけて、うなる。
「私が、よっちゃんを捨てたって言うのは誰が言ってるの?誰から聞いたの?」
そのこが口ごもりながら言った。
「クラブの先輩が、ひろ先輩が好きな子が年上の人にだまされてるから、助けたいから手伝って欲しいって言われたって・・・。」
美香が溜息をついて、思い切り呆れた。
「・・そのでまかせ、本当によっちゃんが流したんだったら、あの人、さいてーだわね。」
「ほんとにな・・・」
自分の声が思い切り低くなるのがわかった。
美香を含めた、回りが息を潜めたのがわかった。
怒りを隠そうとしない僕の顔を美香が覗き込んだ。
谷内先生が”何があったんだ?”と静かな声で聞いていた。
美香と取っ組み合いをしていた子が言う。
「私が歩いてたら、橘さんがいきなり飛び掛ってきて・・」
そのこの言葉を谷内先生が確認した。
「橘が先に手を出したんだな?」
「そうです」
即答した彼女に、谷内先生が、”中野かせ。”と指輪を見せた。
「実はこれが僕の頭の上に降って来てね?」
”誰が投げたのかな?”
にっこり笑って言う谷内先生を見て、僕の横にいた美香が小さく呟く”優ちゃんの性格見破ったのは、類ともだからだったのね。”
・・美香・・お前本当に何気に失礼・・・・
指輪を見せられて、彼女はうなだれた。
「校内でアクセサリーする橘も悪いが、婚約指輪を取り上げて窓から捨てる行為もどうだろうと思うが?」
「でも、暴力振るうなんて!!」
厳しい目をして、谷内先生が言った。
「そうだな、暴力はいけない、でもな・・」
彼女に諭すように厳しい目を向けたまま続けた。
「無責任な噂が、暴力以上の効果を生むことも、君はもう知らないといけないと思うよ?」
静かに、そしてきっぱりといった先生の言葉を彼女はうつむいたまま黙って聞いていた。
僕は隣にいる美香を後ろから抱きしめて、谷内先生に渡された指輪を彼女の左手の薬指にはめながら言った。
「・・・美香・・お前凄い顔してるよ?洗っておいで。その後、二人とも保健室で手当てしよう。」
美香が、珍しく素直にうなづいたとおもったが・・。
「わかったけれども?優ちゃんここは学校です、どさくさにまぎれて抱きつかないでください。」
恨めしそうに僕を見上げて、その後溜息をつきながら喧嘩相手の手を引いて、洗面所に向かう美香の後ろ姿を見送った。
谷内先生が笑をかみ殺した声で言った。
「・・お前のほうが年上とはとても思えないな?いつもあんなのか?」
・・・・よけいなおせわです・・・・




