その121
優ちゃんは電話の相手と明日会う約束をしていた。
その様子を見ながら、谷内先生が言う。
「・・・お前のする事に、俺は関与してないからな?」
首をすくめていった谷内先生の言葉に優ちゃんが、笑いながら言う。
「別に関与はしなくて良いです。美香の落とし前を僕がつけるだけですから・・・。」
ますます首をすくめながら、谷内先生が”程ほどにしとけよ・・・”と言った。
・・・やくざじゃあるまいし・・・でも優ちゃんだよね・・?
思わずもれた独り言に、谷内先生が笑いながら言う。
「・・・良くわかってるじゃないか?・・まあ当然かもしれないけれどもな?」
優ちゃんは、平然とした顔でにっこり笑い。
「お手をとらせました。本日はありがとうございました。」
と谷内先生に挨拶をした。そして、私を見て言った。
「美香?これからどうするの?」
・・・今日は、クラブに夕方まで出て・・・
頭の中で本日の予定を考えてると、優ちゃんがにっこり笑ってもう一度聞いた。
「・・・美香、これからどうするの・・・?」
・・・その笑顔は、僕が誘う前に私に一緒にいたいと言えってことですね・・・。
どこかの子供がだだをこねる前の不気味さのような・・・押して知るべしと言うような、優ちゃんの俺様な誘いに溜息をつく。
「・・・優ちゃん・・、自分のほうが12歳も年上なんだから、ちょっとは大人になるってこと覚えたほうが美香は良いと思うんだけど?」
「・・・・・」
黙って返事をしない。そればかりかむすっとして、私の顔を睨んで横を向いた。
・・・どんだけお子様なんだろう?ありえない!!・・・・・
「優ちゃん?今日は病院帰らなくて良いの?」
私の問いに、明日朝一番で覗く・・と言う。
私は少し考えて、「優ちゃん美香優ちゃんと遊びに行きたいから、夕方までどこか行こう?」
・・と言ってみた。
・・優ちゃんは、谷内先生の前で爆弾を落とした。
「夕方までなんてヤダ。僕は朝まで美香と過ごしたい。」
谷内先生の目が丸くなり、その後顔が青くなった。
「・・・おまえら・・・」
私は慌てて否定した。
「先生!!一緒に寝るだけです。」
・・・しまった!!余計に悪い!!・・・
思わず出した失言に優ちゃんが笑いながら、補足した。
「抱き合って寝るだけです。それ以上は何もさせてくれません。」
・・・優ちゃんお願いだから黙って・・・・・・
真っ赤になってうなづいた私の顔を見ながら、”中野、たのむし無事卒業させてくれよ?”と言う。
もちろん!と、優ちゃんがうそ臭い笑顔を谷内先生に向ける。
・・・先生、そんなこと優ちゃんにいってもきっと聞いてないと思います・・・・
でもその後優ちゃんが言った、言葉に胸が熱くなった。
やっぱり優ちゃん大好き。
ーーーー
谷内先生の言葉を聞いて僕は友人に電話をした。
5年ぶりに聞くその声は、でもすぐに僕だとわかってくれた。
「中野!!成人式以来だな。」
手短に要件を告げて明日会う約束を取り付けた。
谷内先生が僕は関与してないとの念押しに、笑が漏れる。
・・自分が巻き込まれること気にする方ではないでしょう?・・
彼の言葉に、美香の落とし前だから、良い・・と伝え、”程ほどにな・・”と言う彼の言葉を聞き流した。
美香の相変わらずな、いとしの恋人に対してとは思えない評価を聞きながら、せめて、僕のこの休みを美香の口からぼくと過ごしたいと言わせたくて言った僕の遠まわしな誘いをスルーすべく、美香が自分の予定を考えてるのが見えた。
・・・僕はもう一度、言外の思いを込めて美香に今日の予定を確認した。
美香が呆れた顔で、もう少し大人になれと言う。
むかついたので横を向いて黙ったら、諦めたように美香が誘ってくれた。
・・・でも夕方まで・・・・
一晩そばにいたいといったら谷内先生が、青くなり僕らを見る。
美香は慌ててフォローの仕様がない、いいわけをする。
その後の僕の台詞に溜息をついて卒業だけは・・・といった谷内先生に僕は言った。
「先生、僕は何があっても、美香の可能性はつぶしたくないので、学校生活ができない事態にだけは絶対しません。」
僕の台詞に先生が、”いろんな意味で頼むぞ”と言うのが聞こえる。
美香、もう少し待ってね。




