その117
本日、2投目・・。
清水 澄 拝
優ちゃんと戸外に出た。
どこに行くのかと聞いたら、大学で槇原さんが待ってる、合わせたい人がいるという。
・・・合わせたい人?・・・
継いで優ちゃんから出た、それにあそこなら会いたくない人に会わないでしょう?という台詞に思わず優ちゃんの手を握り締めてしまった。
・・・何があったか聞きたいんだろうなぁ・・
でも、私は伝える気はさらさらない。きっと知ったら優ちゃんが自分のせいだと傷つくから。
そんなことを考えている私を、優ちゃんは握った手を引いてどんどんと構内を歩いていった。
その内陽子ちゃんの顔が見えた、
思わず駆け出して、その胸に飛び込んだ私を見て優ちゃんが笑う。
マッキーがうんざりとした顔で、”やっぱりつれてくるのか?”と優ちゃんに言ってるのが聞こえた。
「一人の患者を、特別扱いは良くないんじゃないか?」
マッキの台詞に、優ちゃんは笑いながら言った。
「いえ?僕は今医師でなく、槇原さんの友人で、槇原さんの恩師がご入院されてたので、一緒にお見舞いに来ただけですよ?」
・・・何か問題が?・・・
と続けた優ちゃんを呆れた様子で見ながら、槇原さんは続けた。
「・・勝手にしろ・・・美香ちゃんを見せるんだろう?」
槇原さんの言葉に優ちゃんが笑いながら、私を抱き寄せて言った。
「ここで、槇原さんとしばらく待っていて?」
言葉と共に、頭のてっぺんに落ちてきたキスに私は怯んだ。
「・・・優ちゃん人前!!」
文句を言った私を笑ってみながら、優ちゃんはしゃーしゃーと言う。
「口にはしてないだろう?それに槇原さんだよ?」
全然反省してない優ちゃんに嘆息しながら・・・陽子ちゃんを見たら、口が”諦めなさい”と動くのが見えた。
・・・・・・・・・・あきらめよう・・・
頭を思わず押えた私のその手を、手のひらで優しくたたいた後、槇原さんに挨拶をして優ちゃんはその場を離れた。
ーーー
「槇原君、その子は誰?」
優ちゃんがその場を離れた直後声をかけられる。
その方向を見たら、看護婦さんに連れられたお年寄りがいた。
「根岸さん。今中野が病室に迎えに行きましたよ?」
マッキーの答えに、私はその老婆の顔をまじまじと見る。
向こうも穴の開くほど私を見た。そして言う
「あんた、ものすごい童顔か?」
・・・・・このひとは何が言いたいんだろう?・・・
きょとんとした顔をした私から、マッキーに視線を移してもう一度恐る恐るマッキーに聞いていた。
「・・昨日、ゆうちゃんが、急いで帰った原因?」
マッキーは黙ってうなずく。
「・・私には、どう見ても中学生ぐらいにしか見えないけれど?」
槇原さんはもう一度うなずいた。
もう一度、私の顔を見てその人は聞いてきた。
「・・・年はいくつ?」
「14です」
淡々と答えた私の台詞に、車椅子の後ろから聞いていた看護婦さんが、”うそ、信じられない・・”と呟いた。
・・・優ちゃん?美香ものすごく居心地悪いんですけれど?・・・・・・
ーーーーー
病室に、根岸さんを迎えに行ったら、不在だった。
聞くと、三木さんが中庭に散歩に連れて行ったという。
・・・あそこには美香がいる・・・・
三木さんと言う名前に、嫌な予感がしながら、僕は中庭に走った。
心臓が破けるんじゃないかと思うぐらい久しぶりに走った。
中庭に着くと、美香達と根岸さん、・・それに三木さんがいた。
駆け寄る僕を皆がいっせいに見た、三木さんが僕に何か言うのが聞こえる。
僕は無視して、美香に抱きついて言った。
「美香走ったらのどが渇いた。何かのむものある?」
息を切らしながら美香の肩に顔をうずめてねだる僕にしょうがないな・・と言った美香が水筒を出してお茶を注ぐ気配がした。
「優ちゃんはなれないとのめないよ?」
一緒にタオルらしきもので僕の汗を拭きながら言う美香の台詞に、僕はだだをこねた。
「・・もう少しこうしてたい。」
僕の台詞に美香が少し困ったように言う。
「・・優ちゃん人前だよ?槇原さんだけじゃないでしょう?」
僕が下を向いたまま、”キスしてくれたら離れる・・”
と言ったら、美香は怒り出した。
「優ちゃん、人がいる前でだだをこねない!!美香怒るよ?」
思わず離れて、”もう怒ってるじゃないか?”と言ったら、低い声で”美香帰るよ?”と言う。
・・・しまったやりすぎた・・・・
うろたえる僕を見て呆れる柳と、苦笑する槇原さん。
あっけにとられる根岸さん・・・ その内根岸さんが笑い出した。
「どっちが年上かわからないな?」
根岸さんの台詞に、美香が真っ赤になって、”申し訳ございません、恥ずかしいところをお見せして”と謝る。
・・・その光景を見て夫妻も笑いだした。・・・
何時の間にか何も言わず三木さんはいなくなっていた。
・・・・・ごめんね、僕は君の気持ちには答えられない。・・・・
僕は、改めて根岸さんに紹介した。
「僕の未来の妻です。高校卒業後に結婚する予定です。」
根岸さんは、笑って聞いていた。




