その113
優ちゃんの優しい心臓の音と、紙をめくる音をずっと聞いていたかったのに、何を思ったか優ちゃんは、私の頭にキスをした後、私の顎を持った・・・。
・・・キスされるんだろうか・・・・・
・・・・・キスだけで済むんだろうか・・・・・
優ちゃんが、我慢してくれてるのはわかるし、させてるのも知ってる。
でもこんな気分の時に、初めてを体験したくない、思わず私の顎にかけてる優ちゃんの腕に噛み付いてしまっていた。
思わず噛み付いたままうなり声を上げた私に、優ちゃんが”おなか空いてるのならコンビニスイーツ買いに行くか?という・・・。
・・そんな風に見えたのか・・・
・・・・・何かされると思ったのは美香の考えすぎだったのか?・・・・
思わずうなずいた私の頭を軽く抱きしめて優ちゃんは出かける用意を始めた。
コンビニはここから歩いて10分ほどのところにある。中に入ってお目当ての品を目指した。・・・新作が出ている!!!
思わず嬉しくなり優ちゃんに”いくつかって良いか?”と聞いたら呆れられた。
私がどれにしようかと迷ってると時間がかかると思ったのか、優ちゃんは雑誌コーナーに行って雑誌を選びはじめた。
ゆっくり選べという事だろう・・優ちゃんの心ずかいに、感謝しながら夢中でどれにしようかと選んでると後ろから名前を呼ばれた。
「橘さんこんな所で何してるの?」
振り返って私の名前を呼んだ人を見て、思わず表情が凍った。
「こんな遅い時間に、こんな所で何してるの? 家この近くじゃないわよね?」
続いたクスクス笑いとその言い方に、苦いものがこみ上げてきた。
優ちゃんがこちらに来ようとしてるのが見えた・・コナイデ・・・
私が優ちゃんに、癒されたかった原因のひとりがそこにいた。
彼女は私が着ている男物のルームウエアを見て、したり顔でうなずきながら続けた。
「・・エンコーの話って本当だったんだ?」
優ちゃんが表情を変えてこちらに来ようとしてるのが見えた。
・・来ないで欲しい・・・・
思わず優ちゃんにわかるように目配せをして首を振り、そして悪意をこめて私に話しかける人をじっと見る。
「違う、いとこの家がこの近くだから泊まりに来たの。」
私の言葉に、まだくすくす笑いを止めずに”口ではなんとでもいえるわよね”という。
こちらに来ようとする優ちゃんにもう一度、来るな!と目配せして選んでいたスイーツを棚に戻して、一人でコンビニをでた。
しばらくして優ちゃんが追いかけてくれてるのはわかったが、コンビニから見えるうちは傍に来て欲しくなかった。
コンビニから見えなくなったところで、優ちゃんに腕をつかまれ、暖かい腕の中に閉じ込められた。
「帰って寝ようか?」
優ちゃんの優しい声が、私の頭に響く。
何も聞かない優ちゃんに感謝した。
そして、私は優ちゃんの暖かい腕の囲まれて、夢の世界へと向かった。
明日は現実に向かってがんばるから、今は甘えさせて・・。
・・・・・ありがとう優ちゃん、何も聞かないでくれて・・




