その11
練習場について美香の動向を見ていたが、特に誰かにべたべたしているわけでもなく、いつもの調子のように思う。
・・・美香の相手は誰なんだ?それとも叔母さんと美香で僕をからかってるんだろうか?
・・と思ったその時。
「コーチ!!」
後ろから声をかけられて振り返る。ああ、美香より2学年上の義弘だ。そういえば、美香がサッカーを始めたきっかけはこいつだった。
「お元気ですか?お会いできて嬉しいです。」
嬉しそうに話しかけてくる義弘に、あいまいに返事を返した。
「・・塾が忙しくて、これないって聞いたけれど?参加してるの?」
顔を赤くして義弘が答えた。
「時々、でないとあまりあえなくて忘れられそうなので。」
・・・?だれに?
怪訝そうな僕の顔を見て、義弘が照れたように返す。
「・・・美香から聞いていませんか?」
・・何をだ?何で呼び捨てなんだ!!いやな予感が頭を掠める。
美香がこちらに向かってかけてくるのが見えた。
「よっちゃん!!!いつ来たの?美香今日お弁当作ってきたんだよ?」
・・・・・・こいつか!!
「それは、嬉しいような、怖いような・・」と義弘は笑いながら美香に返していた。
美香・・・・そんな失礼な奴に、お前の手作りの食事をやる必要はない。
心の中の嵐を隠しつつ、やんわりと冷静な振りをしながら義弘に聞いてみた。
「・・・どっちから言い出して、付き合ってるの?」
「あ、俺からです。まだ小学生だしどうかとは思ったのですけれど、中学行って離れたら、このすきに誰かに盗られるんじゃないかと心配になって、つい・・・。」
照れたように顔を赤くして答える義弘を苦々しい思いで見ていた。
・・・・・・・僕は、大学行ってる隙に、お前に掠め盗られたよ・・・。
心の中の怒りと、持って行き様のないムカツキを隠しつつ大事にしてくださいね?僕の妹分なんですから・・と伝えた。
わかってますよ、当然です。・・と笑顔で返されて、ますますむかついた。
美香の笑顔を一身に受ける義弘を見たくなくて、用事を思い出したと嘘をついてその場を離れて帰宅した。
家に帰って、何もする気になれずベッドに横になってボーっとしていたら母親に呼ばれた。
グラスに日本酒を注がれて渡された。
「すごい顔ね。付き合うわよ?」
母親の誘いに、素直にうなずく。
「・・・・知ってたの?」
「そりゃあね、お隣ですから。たかくんが、大騒ぎ!!」
「・・・・なんで?」
俺の父親がなぜ騒ぐ?僕は怪訝な顔を母に向けた。
「僕の大事な、美香に虫がついたって」
飲んでた酒を吹きかけた。
「・・・・何者?」
「・・・・馬鹿丸出しよね」
あんたがショックなのはしょうがないけれどもね・・・。と母親が続けた。
「ロリコンって言わないんだね?」
「だって、あなたの対象は美香ちゃんだけじゃないの?嗜好の問題じゃあないでしょう?・・・まだチャンスはあると思うけれど?あの子達の好きは、”愛”じゃあないわ」
やさしく僕を慰め持ち上げてくれた・・・・が、・・・
「でもね、これから”愛”になるかも・・・・ね?」
にっこり微笑み、とどめをさしてくれた・・・。
母上、あなたは傷心の僕を酒の肴にしていらっしゃいませんか?
その日は、酔いつぶれた。
・・・・・ 挙句・・・・・
・・・・・ものすごくいやな夢を見た・・・・・




