第5章:本物のかぐや姫の栄華と真実の露呈
5-1 求婚者たちの全滅
一方、地上では本物のかぐや姫が相変わらず求婚者たちに悩まされていた。
五人の貴公子たちは次々と難題に挑戦したが、全員が見事に失敗した。
車持皇子は偽物の蓬莱の玉の枝を持参し、その場で職人に暴露されて赤っ恥をかいた。右大臣阿倍御主人は火鼠の裘を手に入れたが、実は燃える普通の毛皮で、実演中に火だるまになって逃げ出した。
大納言大伴御行は龍の首の珠を取りに行くと言って出発したものの、途中で嵐に遭い、「やっぱ無理!」と引き返してきた。中納言石上麻呂足は燕の子安貝を取りに行って屋根から落下し、重傷を負った。
「これで全員脱落ね」
かぐや姫は安堵のため息をついた。
しかし、ここで新たな展開が待っていた。
5-2 帝の登場と本物の恋
噂を聞きつけた帝(天皇)自らが、かぐや姫に会いに来たのである。
「朕も、そなたの美しさを一目見たいと思うてな」
帝は竹取の家を訪れ、かぐや姫と対面した。
かぐや姫も、帝の気品ある容姿と優しい眼差しに心を動かされた。
「陛下…」
「そなたは噂以上に美しい。朕の后として、宮中に来てはくれぬか」
これまでの貴公子たちとは違う、誠実な求愛の言葉。かぐや姫の心は大きく揺れた。
「お爺様、お婆様…」
竹取太郎と山田花子も、娘の幸せを思って涙ぐんだ。
「かぐやよ、お前の好きにするがよい」
「私たち、どんな決断でも応援するわ」
かぐや姫は決心した。
「陛下。私、あなた様のお后になりとうございます」
こうして、かぐや姫は帝の后として宮中に入ることになった。
5-3 宮中での華やかな生活
皇后となったかぐや姫は、「竹取かぐや」という公式名称を名乗ることになった。
宮中では、多くの女官たちに囲まれ、華やかな日々を過ごした。
「皇后様、本日のお召し物でございます」
「まあ、美しい着物ね」
かぐや姫は、かつて想像もしなかった栄華の生活を手に入れた。帝は優しく、宮廷生活は快適そのものだった。
月のことは、もはや遠い記憶となっていた。
ある日、かぐや姫は女官たちと雑談をしていた。
「そういえば、最近『山田かぐや』という女官が急にいなくなったと聞きましたが」
ある女官が言った。
「ああ、あの子。満月の夜に、光とともに空に連れ去られたらしいわ」
「まあ、怖い!鬼か何かに?」
「いえ、何でも月からの使者だとか」
かぐや姫の顔から血の気が引いた。
「つ、月?」
「ええ。でも、あの子は『人違いだ』って騒いでいたそうですよ」
かぐや姫は、全てを理解した。
5-4 真実の露呈と大団円
その夜、かぐや姫は帝に全てを打ち明けた。
「陛下…実は私、月の出身なのです。そして、選択的別姓で二つの名前を持っていたために、別の『山田かぐや』という方が私の代わりに月へ連れて行かれてしまったのです」
帝は驚いたが、静かに微笑んだ。
「そなたが月の姫であろうと、地上の娘であろうと、朕の愛は変わらぬ」
「陛下…」
「だが、その女官殿は気の毒だな。何か手を打たねば」
そこで帝は、月へ向けて手紙を書いた。現代風に言えば、正式な外交文書である。
「月の天帝殿。誤って連れ去られた女官を返されたし。代わりに、本物のかぐや姫こと竹取かぐや改め皇后かぐやは、朕が預かっている。彼女は地上で幸せに暮らしているゆえ、返却の要求には応じられない」
この手紙は量子通信で月へ送られた。
数日後、月から返信が来た。
「了解した。『山田かぐや』殿は、もちまろの世話係として優秀につき、本人が希望すれば月に残っても良いこととする。また、『本物のかぐや姫』殿の幸せを祈る。今後は名前の管理を徹底する。侍従長は減給処分とした。月の天帝より」
さらに追伸があった。
「『山田かぐや』殿より伝言。『地上での給料よりずっといいので、このまま月にいます。もちまろ可愛い。あと、本物のかぐや姫さん、お幸せに』とのこと」
かぐや姫は安堵のため息をついた。
「良かった…彼女も月での生活を楽しんでいるようね」
「うむ。これぞ真の「Win-Win」というやつだな」
5-5 エピローグ:二人のかぐや姫のその後
こうして、この珍騒動は意外な形で決着を見た。
本物のかぐや姫は、地上で帝の后として栄華を極め、多くの子宝にも恵まれた。選択的別姓の先駆者として、後世に名を残すこととなる。
一方、女官の山田かぐやは月で「もちまろ専属ウサギ飼育長」という要職に就き、月面での快適な生活を満喫した。給料も地上の十倍、休日は週三日という好待遇である。
時々、二人は量子メールで近況を報告し合った。
「皇后様、お元気ですか?こちらはもちまろが餅つき大会で優勝しました!」
「こちらも元気よ。三人目の子が生まれたの。男の子よ」
「おめでとうございます!次に地球に行く時は、お土産持っていきますね!」
月の侍従長、月読命は二度と調査不足をしないよう、データベース管理を徹底するようになった。
竹取太郎と山田花子は、娘の幸せを喜び、選択的別姓が引き起こした珍事を酒の肴に、毎晩笑い転げた。
「まさか、選択的別姓が銀河系規模の混乱を招くとはのう」
「でも、結果的にはみんな幸せになったからいいじゃない」
「確かに。二人の『かぐや姫』が、それぞれの場所で輝いておる」
そして、もちまろはこう鳴いた。
「ぷゆー!(Happy End!)」
<完>




