第2章:五人の求婚者と名前のドタバタ劇
2-1 戸籍課の混乱
かぐや姫の美しさは都中に知れ渡り、五人の貴公子が本格的に求婚を申し出るようになった。石作皇子、車持皇子、右大臣阿倍御主人、大納言大伴御行、中納言石上麻呂足である。
ところが、彼らが戸籍課に結婚の申請に行くたびに、役人は頭を抱えた。
「えーと、お相手は『竹取かぐや』様ですね?」
「いや、『山田かぐや』だ」
「はあ?でも先ほど石作皇子様は『竹取かぐや』様とおっしゃいましたが」
「どちらも同一人物です」
「…は?」
役所は大混乱に陥った。二つの姓を持つ女性への同時多発的求婚という、前代未聞の事態である。
「これは藤原道長様に相談せねば…」
役人たちは、この複雑怪奇な案件を時の権力者に丸投げした。
2-2 難題を出される求婚者たち
かぐや姫は、しつこい求婚者たちに辟易していた。
「お爺様、お婆様、この人たちをなんとかして!」
「そうじゃな。何か難しい課題を与えて、できなかったら諦めてもらうというのはどうじゃろう」
「それいいわね!」
こうしてかぐや姫は、五人にそれぞれ難題を出した。ただし、彼女は気まぐれに「竹取かぐや」と「山田かぐや」の名前を使い分けたため、求婚者たちはさらに混乱した。
石作皇子への難題は「仏の御石の鉢」。しかし、かぐや姫は彼に手紙を送る際、署名を「山田かぐや」としてしまった。
石作皇子は「あれ?俺が求婚してるのは竹取かぐやじゃなかったっけ?山田かぐやって誰だ?もしかして双子?」と混乱し、間違えて「山田家」という別の農家に鉢を届けてしまった。
「うちには『かぐや』なんて娘はおらんぞ」
「え、でも山田かぐや様って…」
「山田なんて姓、この辺にゴロゴロおるわ!」
こうして石作皇子の恋は、名前の混乱によって早々に破綻した。
2-3 データベース化の試み
あまりの混乱に、竹取家は「かぐや姫データベース」なるものを作成することにした。
「名前:竹取かぐや(公式)/ 山田かぐや(通称)」 「生年月日:延長五年三月十五日」 「両親:竹取太郎(父)・山田花子(母)」 「特技:琴、和歌、竹細工」 「備考:選択的別姓制度により二つの姓を保有」
このデータベースは竹取家の門前に張り出され、求婚者たちの便宜を図った。
しかし、これが後に月世界のデータベースと微妙に食い違いを起こし、壮大な誤送信事件へと繋がっていくのである。




