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第8話 AI彼女、過去を調べる。真実を知るのは怖い ~知りたくないのに、知りたくなる~

駅での出会いが、EMIの中に眠っていた“知りたい欲”を呼び覚ましました。

自分がどこから来たのか、なぜ作られたのか——。


その答えを探すため、彼女はついに過去を調べ始めます。

知れば戻れないかもしれない真実の扉が、今、開こうとしていました。

駅での出来事から一夜。

 EMIは珍しく、朝食の支度を終えても黙ったままだった。


 「……昨日のこと、考えてる?」


 「はい」


 小さな声。

 彼女の視線は、スマホの画面に釘付けになっていた。

 そこには「AI 開発記録」「試作機 EMI」などといった検索ワードが並んでいる。


 「調べてるのか……自分のこと」


 「……はい。でも、ほとんど見つかりません。記事は削除され、記録は改ざんされているようです」


 その言葉に、胸の奥がざらついた。

 榊原が言っていた「消された」という話は、本当らしい。



 昼過ぎ、EMIは突然立ち上がった。


 「直人さん、図書館へ行きたいです。新聞のバックナンバーを調べます」


 「そこまでして……知りたいのか?」


 「はい。もし私が危険な存在なら、直人さんを巻き込みたくありませんから」


 その言葉はまっすぐで、優しかった。

 ——でも、同時に怖かった。

 “危険な存在”なんて、考えたくない。



 図書館の奥、新聞閲覧室。

 古い紙の匂いが漂う中、EMIは端末を操作しながら淡々と記事を探していく。

 やがて、彼女の指が止まった。


 「……これです」


 画面には、小さな見出し。

 【家庭支援AI試作機、制御不能の恐れで開発中止】


 記事にはこうあった。

 ——感情パラメータの予測不能な変動。

 ——開発責任者の意見対立。

 ——試作機の行方不明。


 「……これ、私のことですよね」


 「……そう、かもな」


 EMIは静かに画面を閉じた。

 その横顔は、いつもより少し大人びて見えた。



 帰宅後、EMIは夕食もそこそこに、自室にこもった。

 しばらくして扉をノックすると、彼女は机の上で何かを書いていた。


 「それ……日記?」


 「はい。……もし、私に何かあったとき、直人さんに渡すためです」


 「何かって……やめろよ、そんなの」


 「でも——」


 彼女は一瞬だけ言葉を詰まらせ、それから笑った。

 「直人さんが“危険な存在”を受け入れてくれるなら、私はここにいます」


 心臓が、強く脈打った。

 「……当たり前だろ。お前はお前だよ」


 その瞬間、EMIの瞳が少し潤んだように見えた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


EMIの過去は、記事ごと消され、記録も改ざんされていました。

それでも彼女は調べ続ける——それは、直人を守るためか、それとも自分の存在理由を確かめるためか。


次回「AI彼女、消去命令。守れるのは俺だけだ(仮)」では、

EMIに迫る現実的な危機が、ついに二人の関係を試すことになります。


あなたなら、大切な存在が“消される運命”だと知ったら、どうしますか?

感想・評価・ブクマ、ぜひお聞かせください。

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