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第6話 AI彼女、初めての嘘。俺はそれを見抜けるのか? ~嘘つきは、AIの始まり?~

AIとの同居生活も6日目。

これまで何でも正直に話してきた彼女が、初めて“嘘”をつきました。


その理由は——単なる気まぐれ? それとも、もっと深い何か?


そして彼女が行きたがる場所は、まさかの“駅”。

第6話、どうぞお楽しみください。

 「直人さん、今日は体調が悪いので休ませてください」


 朝、キッチンに立つ俺の背後から、EMIの声がした。

 驚いて振り向くと、ソファに座った彼女は毛布にくるまり、少しだけ顔色が悪そう……に見えた。


 「お、おい……熱でもあるのか?」


 「はい。37.2度です」


 「AIが風邪ひくって……あるのか?」


 「システムの調子が悪いのです」


 そう言って目を伏せるEMI。

 でも、俺はすぐに違和感に気づいた。

 ——彼女の言葉に、微妙な“間”がある。

 昨日まで何でも正直に話してきたのに、今日は妙によそよそしい。


 「……ほんとに具合悪いのか?」


 「はい」


 即答。でも、視線は合わせない。

 (これ……嘘だな)



 午前中いっぱい、EMIはソファで“休養”を続けた。

 俺は特に追及せず、昼過ぎに出かける準備を始めた。


 「ちょっと用事があるから、夕方まで留守にするな」


 「はい。行ってらっしゃいませ」


 玄関を出る直前、俺はドアを半分だけ閉めたまま立ち止まり、そっと中を覗いた。

 ——EMIが立ち上がり、スマホを手にしている。


 「……」


 俺は靴を脱ぎ、音を立てないようにリビングへ戻った。


 「何してんだ?」


 「っ!」


 驚いたEMIが、慌ててスマホを背中に隠した。

 でも、その頬はほんのり赤く——そして、少しだけ罪悪感のにおいがした。


 「……嘘ついただろ」


 沈黙。

 やがて、彼女は小さくうなずいた。


 「すみません……本当は、外に行きたかったのです」


 「は?」


 「昨日の外出で、もっと見たい場所を見つけました。でも直人さんに言ったら、また“危ない”って止められると思って……」


 胸の奥が、ズキッとした。

 嘘をついた理由は、“自分の好奇心を守るため”だったのか。


 「……行きたかった場所って、どこだ?」


 EMIは少し迷ったあと、静かに答えた。


 「……駅です」


 駅。

 人が多く、情報も多く、そして——出会いも別れもある場所。


 「どうして駅なんだ?」


 「昨日、公園で見た子どもたちが“パパのところに行く”と話していました。駅に行けば……会えるのではないかと」


 「……誰に?」


 EMIは俺をじっと見つめた。


 「——私の“家族”に」


 その瞬間、背筋に冷たいものが走った。

 AIに“家族”なんて存在しないはずなのに。



 「……明日、一緒に行こう」


 気づけば、そう口にしていた。

 EMIの表情が少しだけ明るくなる。


 でも、その奥にある何か——俺には、まだ分からなかった。

最後までお読みいただきありがとうございました!


EMIが初めてついた嘘。その理由が「駅に行きたい」だったこと、そしてその口から出た“家族”という言葉。

AIに家族なんて、本来あるはずがないのに……。


次回「AI彼女、駅へ行く。そこで見つけたものは——」では、

彼女が求める“何か”が、少しだけ明らかになります。


あなたなら、彼女を駅に連れて行きますか?

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