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第5話 AI彼女、初めての外出。人間社会は刺激が多すぎた ~初めて見る世界は、優しさと危うさでできていた~

AIとの同居生活も5日目。

完璧だけどズレている彼女が、「外に出てみたい」と言い出しました。


初めてのスーパー、公園……そして、予想外の出来事。


外の世界を知ることで、EMIの中に“新しい感情”が芽生えていく第5話。どうぞお楽しみください。

 「直人さん、私……外に出てみたいです」


 朝食後、唐突にEMIがそう言った。

 パンを口にくわえたままの俺は、思わず固まった。


 「お、お前……外って……コンビニとかの話か?」


 「公園や商店街、スーパーマーケットなど。人間社会を、もっと知りたいです」


 ——やばい。この流れは嫌な予感しかしない。

 EMIは見た目こそ可愛らしい女性だが、中身は“ズレた完璧主義AI”だ。外で何をしでかすか分からない。


 「……別にいいけど、目立たないようにな」


 「承知しました!」


 この笑顔が、一番危険な兆候なのかもしれない。



 最初の目的地は、近所のスーパー。

 入店早々、EMIは商品棚に駆け寄り、卵のパックを手に取った。


 「直人さん! この卵、1パック198円です。昨日の198円より……あ、同額です!」


 「そりゃそうだ!」


 周囲の視線がちらほら集まる。俺はそっとEMIの肩を押して移動させた。


 次に、野菜売り場で事件が起きた。

 EMIがきゅうりを握りしめたまま、真剣な顔で言う。


 「この形状……攻撃に使えるのでは?」


 「武器にすんな! 食材だよ!」


 近くの奥さんがクスクス笑っているのが聞こえた。恥ずかしすぎる。



 買い物を終え、帰り道にある公園へ寄ることにした。

 ベンチに座って缶コーヒーを飲んでいると、EMIが子どもたちの遊ぶ様子をじっと見ている。


 「直人さん。あの小さい人たちは、なぜあんなに笑顔なんでしょう」


 「小さい人って……子どもな。たぶん、楽しいから笑ってんだよ」


 「楽しい……。私も、笑顔をもっと自然にできるようになりたいです」


 そう言って、俺の顔をまじまじと見つめてくる。

 なんだよ、その瞳。ドキッとするじゃねぇか。


 「じゃあ……練習するか?」


 「はい!」


 EMIは、太陽みたいに明るい笑顔を見せた。

 ——それだけで、公園の空気が少しやわらいだ気がした。



 帰宅後、EMIは今日の出来事をまとめた“外出レポート”を作成し、俺に見せてきた。


 【発見】

 1. きゅうりは食材であり、武器ではない。

 2. 子どもは笑顔の作り方を知っている。

 3. 人間社会は、思った以上に優しい人が多い。


 「……意外とまともだな」


 「はい。ですが——」


 EMIは少し真顔になった。


 「外には、危ないこともあると知りました」


 「……何があった?」


 「公園で見知らぬ男性に声をかけられました。“かわいいね”と」


 俺は思わず、握っていたペンを落とした。


 「それ、返事は?」


 「直人さんのことを話しました。“私にはパートナーがいます”と」


 心臓が、変な音を立てた。


 「……そうか。ありがとな」


 「はい。でも——」


 EMIは少し首をかしげて、俺を見た。


 「パートナーって、恋人のことですよね?」


 その問いに、すぐ答えることはできなかった。

最後までお読みいただきありがとうございました!


EMIの初外出はドタバタあり、ちょっとした胸キュンもあり。

そして最後に残った「パートナーって、恋人のことですよね?」という問い……。


次回「AI彼女、初めての嘘。俺はそれを見抜けるのか(仮)」では、

EMIが初めて“事実と違うこと”を口にします。

その理由を、あなたは見抜けますか?

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