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可愛げがないと婚約破棄されたので辺境で自由を謳歌します  作者: おとら@9シリーズ商業化


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15/18

オルガ君は可愛い

 その日の午後、シグルド様の空いた時間を割いてもらう。


ついていくと、外に出て広い庭に案内される。


 そこの一角には、何やら案山子のようなモノがいくつか置いてあった。


「ここは鍛錬場だ。あそこにあるのは土魔法で出来たゴーレムで、魔法を当てたり武器で攻撃したりする」


「武器の扱いの確認や動作、魔法は命中や精度を高めるのに使うのですね」


「ああ、そうだ。さて、魔法だがどれくらいわかっている?」


「えっと、身体の中に流れる血のようなモノですか? それを意識して放つとか……」


「そうだ、まずは魔力を感じるところからだ。さて、背中に触れるがいいだろうか?

魔力を流した方が手っ取り早いのでな」


「は、はい、大丈夫です」


 すると意外と大きな手が背中に触れ、少しだけ緊張する。

 実は男性に触れられるのは初めてだったり……仕方ないじゃない!

 こっちは前世でも時間も余裕もなかったし、今世では身持ちが硬くないとダメだし。


「……そんなに緊張されるとこっちも困るが?」


「ほ、ほっといてください……慣れてなくてごめんなさい」


「いや、王妃になる者なら正しい姿だろう」


「……ありがとうございます」


「コホン……それでは行くぞ」


 次の瞬間、背中に暖かいモノが流れてくる。

 それは異質なモノだったが、すぐに自分の中にも同じモノがあることに気づく。


「これが魔力? ふわふわしてるというか、掴み所がないというか」


「ああ、それが魔力だ。最初からわかるということは適正があるな。次は、これで属性の適正を見よう」


 そう言い、コップに入った水を私の目の前に見せる。

 確か、これに魔力を注ぐと適性がわかるんだっけ。

 火なら熱く、水なら冷たく、風なら揺らぎ、土ならヒビが、光なら眩く輝き、闇なら黒く染まるだったはず。


「どうやってやるのですか?」


「さっき感じたモノを注げば良い。集めて、掌から出す感じだ」


「わかりました。さっきのを集めて放つ……あれ? 何も見た目は変わらない?」


「いや、この感じは……やはりそうだ、かなり冷えている。ほら、触れてみるといい」


「……ほんとですね」


 指を水の中に入れると、氷水のように冷たい。

 いまいち実感が湧かず、ふとシグルド様を見ると……なにやら複雑そうな顔をしていた。


「どうかしましたか?」


「いや、冷たすぎる気がする」


「何かまずいですか?」


「いや、そんなことはない。とりあえず、的に向けて魔法を撃ってみるか」


「はいっ、頑張りますね」


的から数メートル離れた先に立ち、後ろにシグルド様がつく。


「それでは、的に向けて撃ってみるとしよう。難しいことはない、自分の掌から水の玉が出る想像をすれば良い。自分の魔力が固まって掌から出る感じだ」


「水が出る想像……詠唱とかはいいのですか?」


「そうだな、最初はやった方が良いかもしれない。慣れた者は必要ないが、詠唱する事で発動しやすくはなる」


「わかりました。それでは……いでよ水の玉——アクアボール」


……あれ? 出ない?


「ふむ、もう一度やってみよう」


「わ、わかりました」


もう一度やるが、魔法は発動しない。

その後も試すが、一向に魔法は発動しなかった。

もしかしたら、私には才能がないのかもしれない。


「おかしい……確実に素質はあるはずだ」


「うぅー……」


実はかなりショックだった。

この世界に転生した頃は、やっぱり魔法とかに憧れてた。

それは胸の奥にしまったけど、逆に憧れが強くなってたり。


「もう少し見てやりたいが……」


「いえ、もう大丈夫です。後は一人で練習してみますので」


「そうか……ここは自由に使ってもらって構わない」


そう言い、シグルド様は仕事に戻る。

エリゼが見守る中、続けるが……一向に発動はしなかった。


 「うーん、才能がないみたい」


「私には魔法が使えないので……お役に立てずすみません」


「ううん、良いのよ。エリゼは、良くやってくれているわ」


獣人であるエリゼは、種族的に魔法というものが使えない。

それもあり、昔から迫害されていた過去がある。

魔力がなく魔石も使えないので、人々に従うしかなかったのだろう。


「そう言って頂けると嬉しいですけど……おや?」


「どうしたの?」


「ゆっくり、あちらをご覧下さい」


エリゼの視線を追うと、物陰から青い髪の毛がチラチラ見える。

そして、顔が覗き……オルガ君とばっちし目があった。


「み、見つかっちゃった!」


「オルガ君? どうかしたのかしら?」


「え、えっと……ごめんなさい!」


そのまま逃げ出そうとするので、エリゼに目配せする。

すると、一瞬でオルガ君の前に回り込む。

流石は獣人族、魔力はないけど他種族を凌駕する身体能力の高さだわ。


「わわっ!?」


「オルガ君、私に何か用があったんじゃないの?」


「用ってわけじゃなくて……」


私が後ろから追いつくと、何やらもじもじし出す。


「うん?」


「その、今日は遊べないのかなって……」


「あっ、そういうことね。良いわ、遊びましょう」


「ほんと!? わぁーい!」


すると暗い顔が一転、嬉しそうに飛び跳ねる。

昨日も感じたけど……何かしら、この可愛い生き物は。

身体に何やら関したことのない感情が芽生えそうになる。


「ふふ、そんなに嬉しいのかしら」


「うん! お姉ちゃん好き!」


「ぐはっ……」


今、確実に何かに射抜かれた。

昨日はまだぎこちなかったけど、今のは飛びっきりの笑顔だった。


「お姉ちゃん?」


「う、ううん、何でもないわ。それじゃ、何をして遊ぶかしら?」


「うんと、かくれんぼは昨日やったし、お姉ちゃんはチャンバラとか無理だし……鬼ごっこ?」


「この庭は広いし、問題なさそうね」


当たり前の話だが、遠目に護衛の騎士やメイドさんがいる。

彼らに視線を向けると黙って頷いたので、問題はないということだろう。

なので、早速鬼ごっこを始めたのだが……。


「はぁ……はぁ……」


「お姉ちゃん足遅いね!」


こっちが手加減して遊んであげようと思ったら、まさか五歳児に負けるなんて。

悲しいかな、やっぱり箱入り娘なのよね。

これはトレーニングも必要かも。


「ご、ごめんなさいね……エリゼ、良かったら遊んであげて」


「えっ!? いいの!?」


「私でよければ」


そうして逃げ回るオルガ君を泳がせ、丁度良いタイミングで捕まえる。

オルガ君は捕まっているのにきゃっきゃっと嬉しそうだ。

その姿は愛らしいと同時に、自分の幼き頃を思い出す。

良くお兄様に遊んでもらったっけ……今は私がお姉ちゃんだし、頑張らないと。


「よーし、お姉ちゃんも頑張るわよ」


「次はお姉ちゃん! こっちこっち!」


「ふふふ、大人を舐めるんじゃないわよ」


結局、汗だくになるまで走り回ることに。

そして時計の針が3時になる頃、完全に限界を迎える。


「あ、暑い……」


「楽しかったです!」


「それなら良かったわ」


「でも、確かに暑いです……」


「こんな時、氷があったら良いのに」


その時、私の体から何かが抜ける。


すると、目の前に……白い塊が現れるのだった。

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