第七話血濡れた貴方を愛してる血に酔う貴方を愛してる血に嗤う貴方を愛してる
隠し扉は、エレベーターになっていた。シブキとローレンスの2人は、エレベーターで降りていく。
とても長くこのままずっと閉じ込められるのではないかと思った時エレベーターの扉が開いた。
そこには、月光街とは別の街が広がっていた。
近未来的ではなくヨーロッパ風のゴシック建築が目立つ赤く美しい街並みだった。しかし、不気味なほどに人の気配は一切なく、ここからでもごまかせないほど血の匂いがあふれていた。
「ここは旧都モーティス、おぞましい罪人達を生み出した街にして今や彼女のおもちゃ箱だ。
「少し、昔話をしようか。かつて神がこの地に幸福をもたらしていた時代この旧都の住人達は、もっとも信仰心が高くもっとも幸福な街だった。」
ローレンスは、どこか懐かしむように街を見る。
「だが、生まれてしまった。この地で7人の冒涜者達が彼らは、神を信じぬ不届き者達をまとめ上げ愚かにも神に挑みやがった!」
「神に挑んだって。普通に負けるだろそいつら。」
「ああ、本来ならそうだった。だがやつらは、あろうことか神に傷をつけ血を流させた。これが何を意味するか分かるか?やつらは、希望を見出した。奇跡だなんだとのたまいながらな!」
ローレンスは、口調は、どんどんと荒くなるが一度落ち着いて話を続ける。
「そうして戦争は、激化し馬鹿どもは大量に死んだが神もたくさんの血を流してしまった。およそ100日の間、この地に神の血が降り注いだ。それが後に獣人やエルフ達を生み出した。」
「そして、100日目のあの日!最上位の神、神王エレンホスの胸が貫かれ大量の血が世界を飲み込んだ!」
ローレンスはまた、怒りを溢れさせる。
「だが、ここで終わらない。やつらの真の罪はここからだあの血に飲み込まれた生き物は、軒並み死んだがたった2つの生き物は、生きていた。一つは、まだなにも知らぬ赤ん坊後に救世主として目覚めると言われている。そして、もう一つ一匹の虫もあの地の海で生き残った。だが虫は、神の血を覚えてしまった。血の味を知った百足は、神の国に襲いかかり喰らいつきそして焼き尽くした!」
ローレンスは親の仇のように旧都モーティスを睨む。
「あの虫は、まだ生きている。神を喰らったことで知能と力を得、強い肉の味を覚えた百足は、子孫を増やし人の悪意に快楽を与える毒を持ってより強い肉に育て上げ喰らう。おぞましく救いがたい虫に成り果てて。」
ローレンスは、話を終えると。街の広場の門の前に立ち、微笑みながらシブキを見る。
「さあ、ここで彼女は、遊んでいるしっかりノックをしたまえよ。」
「門を開ければあいつが俺を殺そうとした理由が分かるか?」
「もちろん、でも覚悟を決めておけよ。多感な中学二年生には、だいぶショッキングなえいぞうだからね。」
シブキは、ローレンスに言われた通りノックを門を開ける。
門の先の広場の光景は地獄絵図というにふさわしかった。
そこには、千はゆうにこえている子供の死体が積み重なっていた。首を切られた死体、腹を裂かれ中身が漏れ出した死体、真っ二つになった死体、鼻からから上の部分がなくなっている死体など様々な死体がそこには、あった。そして、その死体の顔は、ツキミに、瓜二つであった。
「・・・なんで?」
「言っただろおもちゃ箱って?」
「ツキミくんはここで大量の自分と遊んでいる。」
「そうじゃねぇ!なんでこうなっていると聞いてるんだ!あの死体の山はなんだ!どうしておれに見せた!あいつは、何をしようとしてるんだ!」
シブキは、もう一つローレンスに問いたいことがあったがその問いは、自分をおかしくさせてしまう一線を越えてしまうと言葉であり押しとどまった。
「え!?な、なんで2人ともこんなところにいるんですか!?少し待って。はあッ!」
シブキの怒鳴り声に気づいたツキミは、残っている遊び相手を斬り文字通り皆殺しにする。
2人のところにかっ飛んでやってきたツキミは、ローレンスを睨む。
「ローレンス、なぜこの人を連れてきたの?ここは、許された人間しか入ってはいけない場所のはず。」
「いやー。問題がないんですよね~これが。この子は、君に好意を抱いてもしても殺意には、変換しなかった。実は、これが以前私が話していた例の─。」
ゴニョゴニョとシブキに聞こえないように耳元で話す。
「分かった。」
「さて、さっきの質問についてツキミ君も交えて話すとしようか。」
ローレンスは、あらためてシブキの質問に答える。
「まず。あの死体の正体だけどあれは、私が開発した彼女のクローン。ツキミ君は、ある時毎日千人以上殺さないと満足できない体になっちゃったんだ。」
「いまなら週に2、3回1日百人まで我慢できますから。」
ツキミは、照れながら訂正する。
「そこ照れるところじゃないぞ。」
「次に、なぜこんなことをしているかというとさっき説明したあのクソムシの毒に関係がある。」
ローレンスの怒りがまた溢れだしそうな予感を感じツキミから説明した。
「むかし神を喰らった虫は、また神のように強い肉を求めたの。その時、人間を虫は殺し合わせればより強い肉を生み出せばいいって考えた虫は毒を造りはじめたの。」
「考える力を奪って悪いことをすればするほど気持ちの良くなる毒を。」
「この毒でわたし達の世界には、たくさんの悪い人がいっぱい生まれたの。わたしも何回も殺されそうになった。でもわたしは、強いから逆に殺した。」
冷静さを取り戻したローレンスがツキミの説明と交代する。
「だが、それがまずかった。あの毒の感染者の血を浴びると浴びた本人もまた同じかそれ以上に毒に侵される。一人ならまだどうにかなるが10人を超えた時はどうにもならない。」
「私が解毒薬を完成させた頃には、ツキミ君は、すでに100人の感染者の血を浴びていた。後から知ったが彼女は、生まれつき犯罪者に狙われやすい体質だった。」
「そんな体質あるのかよ!」
「あるんですよ!それが。人間には、生まれ持った才能と体質がもはや神秘的と言っても良いくらい魂に刻まれた完全な才が。その状態を黄金比から取って黄金的体質と。」
「ツキミくんは、生まれつき2つのこの才を持ち合わせていた。1つは、あらゆる闘い方、勉学、運動を瞬く間に達人の域に達してしまう黄金的才能。もう一つは、その見た目、匂い声など様々な要因から殺人鬼を魅了し狙われやすくなる黄金的被害者これらが彼女を師匠と殺人鬼の前で輝いていたんだ。」
「そういえば君の父の鳳利くんもそうだったね。あの読心術も黄金的─」
「!!なんで父さんの名前を!」
「実は、すこしだけあったことがありましたからね。これ以上は、彼に口止めされているので言えませんが。」
彼の言葉に嘘はなくまた黙っている理由も善意からだと読み取るとそれ以上は、詮索しなかった。
「少し話がそれたね。黄金的体質の話は、ここまでしよう。」
「要するにツキミは、殺人鬼に狙われる体質から犯罪者達に狙われ、それをことごとく返り討ちにした結果今度は、血を浴びた彼女が殺人鬼になってしまったということか?」
「まあ、そんな感じだもう少し速くに解毒薬が完成していればどうにかなったかもしれないが。今は、国民に被害が及ばないようにこうやって殺人欲を解消してもらいなんとか収まってくれるのを待つしかないそんな状態なんだ。」
「そう。だからローレンスには感謝してる。ローレンスがいなかったら多分私を信じてくれている人みんな殺しちゃってた。」
ツキミは、ローレンスを見て感謝を伝える。
「さて最後に、どうして君のこの光景を見せたのかの質問に答えよう。君は、ツキミ君に惚れていながらそこに殺意が一切なかった。これが理由だ。」
「どういうことだ?」
「まず彼女の体質的に彼女に惚れた人間は軒並み犯罪者行為に及ぼうとする人間ばかりだった。これはまず論外。では次に惚れていなく殺意を抱いていない普通の人間、君の友人がこれに該当するがこれもだめだ。秘密の共有ができない。」
「秘密の共有?」
「そう、この光景を見て普通の人間は、動揺しこのことを周りの人間に伝えるだろう。そうなった時どうなる?国は言うまでもなく大混乱を招く。だからこそ、そうならないように彼女に惚れてかつ危害を及ばせない君のような存在を待っていた。私では、彼女をずっと見ているのには限界があるからね。」
「待ってくれよ!」
ローレンスの言葉をシブキは、否定する。
「仮に俺が惚れたとしてこんな光景を見せられてあんたらは本気で俺が秘密を守ると思っているのか?第一惚れたなんてなんで分かる?なんなら、俺は今からでもここを出てお前らのことを周りの奴らに伝えることだって─。」
「大丈夫ぶ君のことは鳳利君に聞いているからね。彼の読心術で君は、確実にツキミ君に惚れ、この光景をみても秘密を隠し通せる人間だってことをね。」
それを聞いてシブキは、押し黙る。
その言葉は、父をよく知っている。シブキには、何よりも勝る説得力を秘めていた。
「そして、鳳利くんから聞いた。その光景を見て抱いた疑問だけど押し留めた質問の答えも言おう。」
「!!」
「どうして、自分は、この異常な光景をみて彼女をより愛しく感じてしまったのか?でしょ。」
「それは、何よりも君が答えを持っているはずさ。さっ今一度よく感じてみて。」
どうして彼女を愛しく思ったのか?
その答えは、単純だった。
ただ、美しく思ってしまった。それだけだった。
血に塗れ白かった服も髪も真っ赤に染まった彼女が美しかった。
血の匂いに酔い恍惚とした表情で人を殺す彼女が美しかった。
血が噴き出し全身にそれを浴びて子供のように笑っていた彼女が美しかった。
だだそれだけだった。
「シブキ。」
ツキミは、真っ赤に、染まった手をシブキに差し伸べる。
「お願い。私と一緒にこの秘密を一緒に守ってほしいの。どんなことでもするから。血に塗れたわたしのどうしょうもないあなたとわたしだけのお願い。」
死屍累々としたこの地で怯える彼の手を優しく握る彼だけの女神は、この世のどんなものよりも美しく輝いて見えた。
書きました表現が難しい。