第3話その槍の名は
驚くほど開放的な空間を前にあっけにとられていたシブキは、一緒扉に入ったはずのイヅミやリオがいないことに気づくのが遅れた。それどころか入ってきたはずの扉もどこにもなかった。
スマホは相変わらず県外であることを確認したシブキは、深呼吸をして心を落ち着かせて人や建物を探し歩き始めた。
幸い、近くに新しい馬車が通った道がありこれをたどれば助けを呼べるのではないかとこの時のシブキは考えていた。
道を歩いて一時間がたち、研究所からずっと歩き続けたシブキは、さすがに疲れを感じ近くの木陰で休むことにした。
いつの間にか寝ていたシブキば、馬の走る音で目が覚める。
「おーい!、遭難者です!助けてください!!」
シブキの全力で手を挙げ助けを求めると馬車もそれに気づき止まり中から人が出てきた。
ようやく助かったと安堵したのもつかの間、出てきた人間の声と顔から悪意を感じ取ったシブキは、すぐに逃げだようとするがいつの間にか背後に立っていた男にスタンガンのようなもので気絶させられてしまった。
気がつくとシブキの手足は枷で縛られており身動きが取れない状況であった。
周りには自分と同じくらいの子供が何人も捕まっていた。
シブキは、状況を整理し自分は先ほどの男たちに捕まりここは馬車の中だと分かった。
「気がついたみたいだね。よかった。」
隣にいた少女が話しかけてきた。年齢はシブキと同じくらいで美しい真っ赤な髪をしていた。首には日本のお守りのようなものをぶら下げている。そして、耳は長くとんがっていていろんなゲームや小説に出てくるエルフのようだった。
「私は、イグニス。いろいろあって村から出たらわずか10分でこうなっちゃった。」
「軽っ!」
知らない大人に拉致されているのにもかかわらずそんなものを一切感じさず楽しそうにイグニスはシブキと話す。
「えっと、俺は春夏秋冬紫吹といいます。道に迷ったらあいつらに気絶させられてこうなった。」
シブキは、自分も名前とどうしてこうなったかを話した。
「えっ!あの漫画知ってるの!」
「まじか!俺とあいつらにのほかにあのゲームやり込んでるやつがまさかこんなところにいるとは。」
その後2人は、捕まっている状況にもかかわらず趣味や好きなゲームや漫画の話で盛り上がった。
すっかり趣味の話で花を咲かせると、
「イグニス、なんであんたはこの状況で普通でいられるんだ?」
シブキは、彼女の心に一切の不安や恐怖がないことに対する疑問を口にした。
「単純な話、私は、あの村から外に出られる事が何よりも嬉しかったから。ずっと憧れてたから、自由に冒険ができることが。だから、村をでて十分で奴隷商に捕まっても外に出れたことが楽しくて仕方がないんだ。こんなふうに初めてあった人と話し合う時私は自由を手に入れたんだって実感したの。」
イグニスは、目を輝かせて楽しいという感情を前面に出して語る。
「そうか、ならもっと自由を謳歌しないとな。」
シブキは、そう言って立ち上がり前に出る。そして
「おらっ!」
ゴッ
「がっ!」
飛び出し見張りに思いっきりの頭突きをお見舞いした。
「てめぇ!状況がわかってねぇ見てぇだな!こいつで勉強して赤点でも回避するんだなぁ!」
当然、頭突き程度で倒せるはずもなく見張りを怒らせ手に持つを武器をシブキめがけて振り下ろす。
だが、次の瞬間シブキは、後ろに下がり見張りの武器が足の枷にあたり破壊した。
「しまった!」
足の自由を手にしたシブキは、見張りの隙を逃さず武器を蹴り上げ武器を奪う。
「ぐぼっ!」
奪い取った武器を見張りの頭めがけて振り下ろし気絶させた。
「すごい。どうやったの今の?」
「この枷手は丈夫そうで壊せそうになかったが足の方は、ヒビが入っていかにも脆そうだったから一か八か壊そうと思ったんだ。見張りは武器を持ってたしうまく当てれば壊せそうだったからな。」
「よく当てれたね。」
「小さい頃、父さんに相手の心を読む方法を教わったんだ。」
「心を読む?」
「ああ、表情や目の動き、呼吸の仕方とかで相手の考えることを読み取ってどんな行動をとるかを推理するんだ。父さんほど完璧に読み取ることはできないが今みたいに避けたり嘘を見抜くことはできる。」
シブキは、手に入れ武器でみんなの足の枷を壊す。
騒ぎを聞きつけた奴隷商達がやってくる。
「なんだなんだ!」「見張りはどうした。」「ってオイオイオイオイオイ伸びてるじゃねえか!」「商品ガキはどうだ!」「大丈夫だ全員いそうだ。」「足の枷壊されてるぞ」「やっぱ、魔封錠足の方も用意しとくべきだって。」「高けぇんだもんしゃあねぇだろ」「これやったのは武器持ってるあいつか。」「ヨシッそんじゃ軽くわからせてやるか。」
次々とやってくる奴隷商は、シブキを取り囲む。
シブキは、一度体を脱力させてから体をひねり父の言葉を思い出す。
「いいですかシブキ、人の心を読むのは目で見るだけではありません。呼吸や鼓動の音を聞き、匂いからも読み取るようにしないと。」
シブキの父鳳利は、暴れる患精神者に近づき無駄な動きを一切せず患者の攻撃をかわすそして一瞬で患者の死角に立ち優しくかつ確実に一撃を入れ患者を気絶させる。
「人間の意識には、必ず弱点があります。そこに一撃を加えればどんな人間でも意識を失います。」
シブキは、そうやって父の読心術と死角の一撃を身に着けたどちらも父ほど完全なものではなく読心は完全な言葉にすることは難しく死角の一撃も百発百中ではない。たが、今シブキを囲む正面、背後横からの攻撃を最小限の動きでかわし持っていた武器を死角から入れ確実に倒していく。
「すごい!」
戦いを見ていたイグニスたちはシブキの戦いに目を見張る。
「全く、どいつもこいつもガキ一人に情ねぇな、足枷だけじゃなく人材までケチっちまったか?」
奥から奴隷商達の親分が現れた。
筋骨隆々で顔に傷が入った男は、不敵な笑みを浮かべながらシブキに近づく。
「どうやったか知らねえがお前相手の動きが見えるようだな。それに度胸も強さもある。どうだ?俺と一緒にビジネスでもしねぇか?衣食住をつけたアットホームな職場だぞ?給料は要相談で。」
「今時、アットホームで騙されるやついねぇよ。衣食住現地だし。何より給料払う気ないだろお前」
「おっとバレちまったか最近のガキは頭良くていけねぇ」
「とっとと鍵渡して俺たちを解放しろ。それと伸びてるこいつらよりも痛い目あいてぇか?」
「ハーはっハッはっ!はハはハはハはハはハはハは!」
親分は、奇妙な笑い方を終えると鋭い目でシブキを睨んだ。
「やっぱりガキは、頭が悪いな自分の弱さをわかってねえんだからな。かけるぞ韋駄天。」
親分は、つま先で床を叩くと突然靴がひかり履いていた靴が金の装飾がついた美しいものに変化した。
「ゴハッ?!」
次の瞬間シブキは、鳩尾を殴られていた。さらに、顔背中、胸、と次々と目にも止まらぬ速さで殴り蹴られる。
「ぐぅっ!」
「どうだ?どんな動きが読めても避けられなかったら意味ねぇだろ?この音を置いていくトルボ様の速さをよぉ!」
トルボは、そう言いながらも何度もシブキを殴り続ける。
だがシブキは、倒れずに耐えている。
「どうした?どんな速くても倒れなかったら意味ねぇんじゃねえか?もっと」
と傷だらけになりながらもトルボを煽り返す。
「そうかならこれならどうなだ」
トルボは、高速で何度もタックルをシブキぶつける。
「がぁはっ!」
ついにシブキは、ふっとばされてしまい倒れる。
「はっハッはっ、どうだこれで大人の強さを理解したかボウヤ?授業料は、就職祝いまで待ってやるよ」
「紫吹!」
「に、逃げろっ。」
シブキば、イグニスの手を握る。
「?これは鍵?」
「何っ!し、しまったー!」
「さっきの体当たりでやつの服から鍵を盗ませてもらった俺があいつを引きつけるから全力で逃げろ散り散りで逃げればきっと投げれるかもしれない。」
「紫吹それは無理、私達の足じゃあいつの速さには逃げられない。」
「それに初めてできた友達を見捨てられるわけないじゃない!私も戦うよ!」
イグニスは、鍵を外し自由を得てトルボと戦うことを決意する。
「ごめん紫吹、ちょっとだけあなたの血を借りね。」
「うん?おう。」
そう言ってイグニスはシブキの傷口から流れる血に触れ言葉を紡ぐ。
「コード認証。レベル3対思想攻撃用プロトコル起動!」
イグニスの言葉と同時にシブキの血とイグニスから流れたちが混ざり弓矢となる。
「穿って吹っ飛べ覇王弓!」
「おいおい、なんだよそれ!!まさかお前あの─」
ズウゥゥゥン!!
イグニスが放った矢は、轟音とともにあたりを吹っ飛ばす。
「へっへーん。どうだった?私つよいでしょ?」
イグニスは自信満々で勝ちを宣言する。
しかし
「確かに強いなまあ当たればのはなしだか。」
「「なっ!!」」
なんとトルボは無傷だった。
「確かに強いが、矢が遅すぎるぜ。あまりの遅さに近くの自販機でスポーツドリンクを買っちまったよ。この出費はお前出払ってもらうぞ。」
「まさか、拾ったガキが血の巫女だとは、赤い髪のエルフなんでもしやと思ったが。ついてるなぁ拾った宝くじで当たったような気分だこれならスポーツドリンクと枷の出費は経費で落とさなくてもよさそうだ。それどころか何百万倍以上の金が手に入るぜ。今日という日を感謝しねぇとな!」
ドルボはそう言ってイグニスに近づき首を掴む。
「ぐぅっ!かはっ!」
「やめろ!」
「さあて早いところ馬鹿どもの目を覚まさせて作業に戻らねぇと。」
シブキは、イグニスを助けようと力を振り絞った。絶対に勝てないと分かっていても自分の行動が無駄であると分かっていても少しでも彼女が生きる可能性に掛けてトルボに殴りかかった。
その時、風を切る音が聞こえた。
シブキは、その音に耳を澄ますと飛んできたものを手でキャッチした。
それは大きな槍だった。三又に分かれた槍を手に持っていた。不思議とその槍に重さを感じずずっと前から握っていたように手になじんでいた。
シブキは、槍を持ったときに流れ込んできた槍の名前を口にする。
「勝つぞ!勝利の神槍!!」
「お前なんだその槍は!」
トルボは、イグニスを離しシブキに襲いかかる。
シブキは、トルボめがけて槍を投げる。
「ふん!今さこんなもの」
余裕なトルボは、余裕な表情で槍を躱す。
しかし、槍は進路を変えまたとるのに向かってやってくる。
「なんだと!?」
「かけるぞ韋駄天!!」
トルボば、韋駄天を装着し音よりも速く槍から逃げる。
たが、槍もまたトルボ同じスピード以上で追いかける。
「何ー!?俺の韋駄天よりも速いというのかまずいな当たる。ぐわああああああああああああ!!!!!」
シブキの投げたグングニルは、見事トルボに命中した。
突然現れたこの槍はなんなのか?ここはどこなのか?イグニスは何者なのか?
ここに来てから疑問は尽きないが今はこの勝利を喜ぼうそうシブキは、思ってイグニスの下へ歩いていく。
しかし
「ずいぶんと喜んでるなぁ。俺は今、痛くて痛くて悲しいのによぉ!!」
倒したはずのトルボは、起き上がってきた。
「今のはマジで焦ったし痛かったぜまさか俺の韋駄天を超えるスピードがこの世にあるなんてなぁ!だが別にぶっ倒れるほどの強さでもなかったなあ!お礼に今ならこの治療費を奴隷として働かせた初任給を全額払うことで勘弁してやる!!!」
舐めらた上に思わぬダメージを喰らったドルボは、怒りが最高点に達していた。全員の手足の骨をバキバキにしないと収まらないほどに。
シブキは、その場でへたり込んだ。もうだめだあれだけやってもだめなら自分は、絶対に勝てないと絶望した。
「さっきの槍もう一回投げれる?」
イグニスは、シブキの槍のに触れる。
「ああ、投げれるぞ。でも、いやそうか!」
イグニスの顔を見てシブキの恐怖と絶望は吹き飛ぶ。
「さあ、てめぇらの身体で支払ってもらうぞおおおおおお!!!!」
イグニスはシブキのグングニルを血で覆うそして二人は、槍で弓を引く。
「穿って、勝ち取れ、勝利の神弓!!」
「なるほど、あの槍に弓の威力を上乗せしたか。だがなぁ、俺に命中する前にテメェらを半殺しにすりゃあテメェのやりも去勢した犬みてぇに大人しくなるだろ!」
「あめぇんだよ!クソガキが!!!」
トルボは、向かってきた槍を高速で躱しそのままの勢いで2人に向かをうとする。だが、飛んできた槍は、無数に増えトルボを取り囲み、一斉に命中した。
「馬鹿なああああああああ!!!!!」
辺りを吹っ飛ばすほどの衝撃で今度こそトルボを倒すことができた。
「ふー。」
「へへっ。」
「大勝利!」
2人は拳を合わしようやく勝利を手にした。
ようやく書きたかったところまで描けるようになりました。
これから頑張っていきたいです。