第26話 理不尽なる被害者
「シブ、キ?」
「なんでだよ!心臓潰しただろ人間なら死んどけよ!理不尽だろ!こんなの」
ヘンリーはもう一度同じように心臓を潰そうとするがシブキの心臓はすでに潰れているため何も変わらなかった。
シブキはヘンリーの手を刺した槍をさらに強め身体に突き刺し吹っ飛ばす。
「ぐあっ!」
吹き飛んだヘンリーよりも速いスピードでシブキは移動しヘンリーを蹴り飛ばす。
蹴り飛ばした先にいつ投げたのか槍がありさらにヘンリーを吹き飛ばす。
それをさらに飛んできたところをシブキは顔面を殴る。
そうしてヘンリーは先ほどシブキ達が隠れていた大きな木に激突する。
ヘンリーのフードが脱げ素顔が見える。
その顔は女性を思わせるような顔立ちだった。
木に激突したヘンリーは倒れ込む。
倒れた拍子に何かが溢れ落ちる。
「…いってぇな。…なんか落としたなぁ。…あぁ、俺の義眼か久しぶりだなぁ…俺がこんな目にあうの。…そういえばあんときもこんなかんじだったっけ?」
ヘンリーは落とした自分の目をみて何かを思い出す。
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確かあのときはお母さんの仕事のお手伝いをした時だっけ?
僕の家にはお父さんがいないだからお母さんは毎日夜にお仕事をして朝に帰ってくる。夜の方がお金を貰えるかららしい。
お母さんはある時僕にお仕事を手伝ってほしいと言われた。
僕は嬉しかった。いつも大変で疲れたお母さんを休ませる事ができるならといっぱいいっぱい頑張りたいとそう思ったっけ。
僕はお母さんとおそろいの服を着た女の子の服でとっても恥ずかしかったけどお母さんに似合うと褒められて嬉しくなった。
その後は…なんだっけ?どんなお仕事をしたっけ?思い出せないけど確かお母さんよりもずっとずっと大人な人とすっごく痛くてすっごく汚くてすっごく苦しい事をした気がする。
痛くて痛くてずっと泣いていたし辞めたいと思った。でもお母さんもこんなに大変なお仕事をしていたんだから僕がもっと頑張ればきっとお母さんはきっと褒めてくれる。また、一緒に公園で遊んでくれる。そう思った。
だから僕は一生懸命にお仕事を頑張った。首を絞めるのが好きなおじさんにはなるべく苦しい顔と声を出した。汚いのが好きなおじさんと一緒に汚くなった。お腹を殴るのが好きなおじさんに甘えるワンちゃんみたいにお腹を見せた。
そうしていつの間にか僕はあのお店で1番の人気者になったと目玉を取るのが好きなおじさんとお仕事をしている時に言われた。
とっても嬉しかった1番になったからきっとお母さんに褒められる。
また一緒に公園で遊んでくれる。そう思ってお母さんの元へいった。
お母さんに殴られた。
殴った勢いで治してもらった目がとんだ。
お母さんは怒っていた今まで僕に1番を取られたことを。
僕はお母さんに殴られたながら転がる自分の目を見た。
こんなにも痛いのに、こんなにも苦しかったの、にこんなにも気持ちが悪いかったのに、それでもお母さんに褒められれば辛かった事は全部忘れられるそう思ったのに。
理不尽だ。こんなにも頑張ったのに、理不尽だ。何も悪いことをしていないのに、理不尽だ。自分の頑張りが足りないだけなのに1番になれない原因を僕のせいにする、理不尽だ。
理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ。
だから僕はお母さんを殴った。
さんざん僕を殴ったんだからこれは正当な行為だ。
お母さんは倒れた。
お母さんはたった一回殴っただけでお母さんは動かなくなった。
理不尽だ。僕はこんなに殴られたのに痛い思いをしたのにお母さんは一回だけで痛い思いが終わるなんて。
それから僕はお店のおじさんにおんなじ事をした。
首を絞めたおじさんを絞めた。
ほんの少し絞めただけでおじさんは苦しそうな顔をして止まった。
理不尽だ。
汚いおじさんに僕と同じ物を食べさせた。
おじさんは病気になってずっと寝ちゃった。
理不尽だ。
お腹を殴ったおじさんのお腹を殴った。
お母さんとおんなじだった。
理不尽だ。
目玉を取るおじさんの目玉を取った。
おじさんはうるさく泣いて何処かへいって車とぶつかった。
理不尽だ。
全部バレて僕のせいになった。
僕はおんなじ事をしただけだなのに正当なのに。
正当な行為のはずなのに。
理不尽だ。
逃げているとストレスが溜まった。
逃げている最中に僕よりも弱そうな女の子を見つけた。
女の子におじさんにされたことと同じ事をした。
女の子の友達や家族が僕の敵になった
僕には味方なんて一人もいないのに。
理不尽だ。
「そうだねそれは確かに酷く我慢できないものだね。」
「なら僕が味方になるよヘンリー。俺が君に降りかかる理不尽を取り除いて見せるよ。私が保証する君は自由に生きていい。なぜなら僕は君を愛しているしここにいるみんなも君を愛しているから。さあ、俺達と一緒に生き抜いていこう。きっと素敵な日々になれるよ愛しい愛しい正当なヘンリー。」
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ヘンリーは立ち上がり落とした義眼を踏み潰した。
「この世は理不尽があふれている。」
「理不尽なる世界よ呪いあれカースアンリーズナブル!」
ヘンリーは失った右目から黒い涙を流し赤く禍々しいオーラを放つ。
そして拳をシブキの動きに合わせるように腹に拳をぶち当たる。
ヘンリーは時間差で吹き飛ぶ。
不思議なことにシブキの身体には殴られた腹以外にもヘンリーに付けられた傷と同じ箇所に傷が付いていた。
そして右目も吹き飛んでいた。
「これが俺が今まで受けてきた理不尽の数だ!受けた理不尽とは全て返さねばならない!なぜならそれは正当だから!人間として当然の事を行っているのだから!故に俺は正当だ!そしてお前は理不尽な加害者だ!」
続けてさらに拳を顔面に叩きつける。
先ほどと同じ箇所の傷から血が噴き出す。
シブキも負けずに槍を振るい新たに傷をつける。
そしてその反撃で新たに傷が増える。
2人のほぼ互角のスピードと力で渡り合っている。
勝負に差があるとするなら自信が傷つけば傷つくほど有利になっていくヘンリーの方が有利であった。
だが、ヘンリーの動きに慣れていったシブキは攻撃をかわしていく。
顔面に向かってくる拳をギリギリで避け彼に反撃を喰らわせる。
大きく体勢を崩したヘンリーにとどめを食らわせようとする。
しかし、シブキの身体は壊れた人形のように動かなくなった。
心臓が止まった自分の身体を強引に動かしていたシブキはついに限界を迎えていたのだった。
「ふふふふふふ、はーはっはっはっはっはっ!やはり俺が俺の行いのほうが正当だった!やはり理不尽は返されるべきなんだよ!」
ヘンリーは高笑いしながら理不尽に終止符を打つ。
だが、その拳は止められた。
「誰だ!!」
「ただの正義の味方だ。」
拳を止めたユースチスがそこに立っていた。
書きました。次回で一旦章が終わりそうです。




