2
「傷ついても何とも思わんはあかんやろ」
「勢いで言うてもうてん」
「そら傷ついてんで、美波ちゃん」
「まぁしゃーないやろ。美波もわかっとるわ」
「甘えてんな。子供の頃から一緒におるからって、何でも分かりおうてるとか。それなら美波ちゃんの割りきれん気持ち察したれよ」
「けじめつけなあかんやろ。そうせな、ひかり傷つけてまうわ。いつまでも俺が美波のことなんでもわかるような男やったら、あかんねん」
「そんなややこしく考えんと、3人で仲良くしたらええんちゃうの。子供の頃は仲良かったんやろ」
「子供の頃と一緒にすんな。仲良くしてたら、俺が浮ついてまうねん」
「浮つくて、お前美波ちゃんのこと、何でもないんやろ」
「そう決めたんや。美波がサッカー部の先輩追いかけてる時に。俺は美波とこのままでいたいから、俺のダサい嫉妬は永久に胸にしまおて」
「はーそうなん。でもあかんかったやろ、その先輩とは。なんでその時に俺がおるやん言わんかったん」
「言えるか。俺かって傷ついてんねん。ざまーみろ思ったわ」
「まー美波ちゃんも、そういうことしといて泣きつくんはちょっとちゃうな」
「付き合うと結婚はちゃうんやろ。美波がサッカー部の先輩追いかけてる時は、俺には美波が本気に見えんかった。美波にもそう見えたんやろ、昨日の俺は」
「俺にも本気には見えへん。美波ちゃんから逃げる為に結婚してるように見えんな」
「マジか。別に逃げてへんよ。美波にはほんまにそういう気持ちないから」
「さっき浮ついてまう言うたやろ」
「ひかりを傷つけてまうくらい、仲良くしてまういう意味や」
「ほんまか。ブレブレやんけ言うてること」
「ホンマにないって。美波やって、わかってたはずやねん」
「それはどうやろな。側にいた人間が現実に離れていくってなるのは、そんな簡単に割り切れるもんちゃうで。側におるだけでも幸せと思ってたら尚更」
「幸せやったんか、美波は俺といるだけで」
「いや、知らんけど。美波ちゃんちゃうから俺は」
「そら引くわ実來君」
「幸せがなくなった時に冷静でいられる人なんておらへんわ」
「幸せて別に付き合ってたわけでもないやん」
「幸せやったの!私はずっと実來の側にいれると思ってた」
「それなら祝ってあげたらよかったやん。それやったら実來君も怒ったりせんかったよ」
「わかってる、そんなこと。でもそんなん出来へん。腐れ縁とか言うてヘラヘラ笑って、幸せそうにする実來の側になんかおられへん」
「ややこしいな、美波は」
「なんで私はあかんの。子供の頃からずっと一緒やし、ひかりちゃんなんかより、ずっと実來のことわかってるし、実來だって私と一緒におる方が楽しい筈やのに」
「それは自惚れちゃうかな」
「そうやっても、付き合って2ヶ月て。私との時間はなんやったん。あんなに分かってくれてて、私には何の気持ちもないの?」
「それは実來君じゃないとわからへんけど、美波やってずっと実來君のこと一途に思ってたわけちゃうやん」
「あれは実來が何も言ってくれへんから、寂しくなっただけ」
「そんなん、実來君にはわからへんよ。それで実來君、あんたのこと諦めたんかも。俺はそういうのじゃないんやって」
「そんなんで諦めんといてよ」
「まぁ仕方ないわよ。自分もふりまわしたんだから、同じことされたって」
「付き合うのと結婚は違う!最後通告やんか。もうお前とは一生無理って」
「別に今まで通りでよかったんちゃうの、実來君は。美波がこじらせただけで」
「そんなんずるい。自分だけ幸せになって、私はそのままでいてくれなんて」
「美波が側にいてくれたら、それだけで幸せやったんかもしれへんよ。どんな形でも」
「それやったら、私を選んでよ」