ヒロインの悲哀
村長さんの話から2時間は経過しただろうか
空にはもう夕焼け雲が広がっていた。
この時人生で初めてカラスの鳴き声が恋しいと思った。
だってかれこれ1時間は無音の空間なのだから
重い、重すぎる。
村長さんが帰ってからレイラは玄関で下を向いて座ったまま動かない
何度か声は掛けたよ?そりゃ俺だって同情しなかったと言えば嘘になる。
あんなキラキラした目で旅したいって言ってたんだから本気で人生をかけた夢だったのだろう。
けど今の俺にはこうやって縁側で夕日を眺めるしか出来ないんでさぁ
ーーーーー2時間前ーーーーー
「おじいちゃん、大アリってどういうこと!?
御神体があれば結界は守られる。それは私じゃなくてもいいんじゃないの?」
「結界を張れるだけの御神体であればの話じゃ。
その使い魔、ハルト君は魔術を使えるのか?」
レイラは村長さんにそう問われると俺の顔を見るや目を曇らせポロリと一粒涙を落とした
そんなに俺の顔が醜いか?
「見る所その子の目の色は黒。
悪いが魔力を操る力はないように思える」
その村長の一言でレイラは膝から崩れ落ちてしまった。
「レイラちゃん!」
村長さんは膝から崩れ落ちたレイラに駆け寄ったがレイラは何も返事をしなかった。
「あ、あの」
「どうしたんじゃ、ハルトくん?」
「村長さん、目の色と魔術が使える使えないって関係あるんですか?」
「ああ、関係あるとも。
人間が魔力を取り込み魔術を使うに当たっては遺伝子が大きく関係すると言われておる。
その1番わかりやすい目安になるのが目の色なんじゃ。
本来は耳の奥にある蝸牛【カギュウ】が発達して魔力をコントロールするんじゃが鼓膜の奥にある蝸牛なんぞ生きてる間に調べることは出来んじゃろ?
だから目を見るんじゃ」
たしかにレイラの目は金色だ
だからキラキラしてるように思えたのか。
いや、あの目は確かにキラキラしていた。隣を見てみろ、今にも死にそうな目をしてるじゃないか
「その蝸牛と目の色の関係性っていうのは証明されてるんですか?」
「されとらんよ、するまでもないんじゃ。
歴史がそれを証明しておる。現にこの村の村民殆どは黒目じゃ」
ほぅ、という事は俺は用無し、帰れるのか?
帰る方法はレイラは知らないと言っていたが
使い魔の帰り方を村長さんにも聞いてみる事にした
答えは簡単だった
「無理じゃと思う。ワシも知らんからの」
今の俺の目も死んだような目になってるんだろうなぁ...
村長さんは落ち込んでいるレイラに一言「そう落ち込むでない」と耳打ちをし帰ろうとした。
あぁ、俺は一体どうしたら...
「ハルト君」
村長さんは手招きをして俺を外へ呼び出した
「レイラちゃんはの幼い頃から御神体としてこの村から出れんのは勿論同じ世代の友達もおらんのじゃ
なんせこの村の神様として生きてきておる。
勿論レイラちゃんの夢である外の世界をみるというのにはワシも出来る事なら協力したいんじゃがいかんせんレイラちゃん程強力な魔術を操れる輩はこの村にはもうおらんのよ。
だからハルト君せめて君が友達として隣にいてやってくれんか?
夢が叶えられないならせめて友達を作らせてあげたいんじゃ。」
正直俺は戸惑った。勿論あんな美少女とお友達になれる有難い話は早々転がってる物ではないし俺をこの世界に飛ばしてきた犯人だからと言っても特別嫌いになった訳でもない。
帰りたい気持ちはあるがそれは慣れている世界の方がいいからと言う理由なだけで家族や学校が大好きという訳ではない。
せいぜい早く帰ってバラエティー番組が見たいとかそんな理由だからな。
ただ友達っていうフレーズが気になっているだけなんだ
「友達ですか」
「友達じゃ」
村長さんの目はレイラを諭している時よりも真剣だった
「俺なんかに務まりますかね?」
「それはわからぬ、じゃがお主はレイラちゃんの使い魔。その事実は変わらん。
使い魔と主人、切っても切れぬ関係というのは相場で決まってるもんじゃ」
「ハハ、そんなもんですかね」
「そんなもんじゃよ、ホッホッホ」
俺の渇いた笑いと村長さんの潤った笑いが無音の世界に響き渡った。
ーーーーー今ーーーーーー
あの手の落ち込み方をしている人間は放置しておいた方がいい。俺は前の世界でそう学んだ。
だからこうして夕日を眺めてるしかないんですよ
「友達ねぇ..」
「何一人で黄昏ながら呟いてんのよ」
その一言で後ろを振り向くとそこには何食わぬ顔でお茶を啜るレイラの姿があった
お前さんはいつからそこに居たのだ
「別になんでもないよ。帰れないのかぁって思いながら昔の事を思い出してたんだよ」
「あまり落ち込み過ぎるのは良くないわよ」
凄く心配してますよ〜という顔で言ってきてるが心がこもってないのがわかる。
まるで友達が彼氏と別れて心配してますよ感
というかどの口が言うとるんや、どの口が
「そっちこそ落ち込み過ぎるのは良くないと思いますけど?」
「私??落ち込んでなんかないわよ。
もう切り替えたわ、無理な物は無理だから」
レイラは案外強いのかもしれない
「あんた帰る場所もないしこの家に居ていいわよ。
部屋は奥の部屋使ってくれればいいし」
レイラは面倒見もいいのかもしれない
「もうこんな時間だしご飯作らなきゃ」
レイラは家庭的かもしれない
レイラって実は凄いいい嫁になるのでは?
「あ、そうだ」
台所からひょこっと顔だけだして何か言おうとしてる。
目線の先は勿論俺。なんだ?お風呂先に入ってていいわよ?orお肉と魚どっちがいい?
俺はどちらでもいいよ。君は女神かもしれないからな
「あんたの部屋ゴミ置き場になってるから掃除してから使った方がいいわよ
あとご飯は自分でなんとかしてね、私の分しか食材ないから」
全力前言撤回




