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ポナの季節  作者: 大橋むつお
88/92

88『陽だまりの五人』


ポナの季節・88

『陽だまりの五人』        







「どうしてプロにならないんですか?」


 そう聞かれて、SEN48のメンバーは答えにつまってしまった。



 初めての記者会見に呑まれただけではない、そんなこと考えもしなかったのだ。

「えと……二か月前に、やってみたいだけで集まって、気づいたら、ここにいたってのが正直なとこです。これでいいかな?」

 安祐美がメンバーに目配せ、ポナたちは顔を見合わせ、せわしく首を縦に振った。

「なんだか仲良しの小鳥みたいだな」

 若い記者が言うと、温かい笑いがそよそよと会場に溢れた。

「そう、実はこの空気なんです」

 田中ディレクターがニコニコしながら核心に触れる。

「T自動車からCMのお話しがあって、すぐに動画サイトで観たこの子たちに結び付いたんです。この子たちは、ごく自然に学校からはみ出たんです。部活へのアンチテーゼでもなくプロになろうという貪欲さでもなく、好きでやっていることが大勢の人たちの共感を得ました。この自然でゆるい明るさが、T自動車のコンセプトとも合いました。一言で言えば、今のこの空気です。この子たちといると、なんだか春の陽だまりの中に居るような気持ちになるでしょ」

「それで『陽だまりの五人』ですか」


 会場の記者たちは納得し、ポナたちは(?)になった。


「どうしよう、ドキュメンタリーだよ」

「いいじゃん、CM用に撮ったビデオ使うんだから、新しく撮ることはないでしょ」

「それが困る」

「なんで?」

「不細工に映ってるのもん、CMで流れてるのは一瞬だからいいけど、ドキュメンタリーだと尺が長いから……」

「ハハハ、笑っちゃうなあ、奈菜」

 ポナが笑うと、他の三人もつられて笑った。

「もう、日本中に奈菜の不細工が流れるんだよ」

「奈菜、自分はおブスだと思ってるの?」

「今は違うよ。自分で言うのもなんだけど、あたし、この一か月で可愛くなった」

「奈菜はもともと可愛いよ」

「そんなことない。あたし最初のころは付いていくのがやっとだった。この一か月でなんとか……」



 歩道の向こうから自転車が走ってきた、それを避けようとしてポナたちは一列になった。



「……奈菜」

 最後尾の奈菜が、そのまま遅れてしまった。

「奈菜、これ見てごらんよ」

 ポナがスマホを手に奈菜の横に並ぶ。

「……なに?」

「この奈菜は?」

「こないだの福島ライブ」

 写メを見せられて奈菜は即答した。

「ブブー。初めての福島ライブのときの!」

「え、うそー、この顔は最近だって!」

「よく見てごらんよ、ここにお婆ちゃん写ってるでしょ」

「ああ、仮設住宅の……」

「お孫さんが亡くなって、お線香あげにいったじゃん」

「ああ、あの……また観に来てくれたんだ」

「ちがうよ……このお婆ちゃん、あの後亡くなったんだ」

「うそ……!」

「だから、これは最初に行った時の。仮設の人たち喜んでくださって、それであたしたちも嬉しくって……ね、奈菜は最初から可愛くてカッコいいんだよ」

「そうなの……」

「そうだよ」

「そうなのよ」

 前を歩いていた三人がポナと奈菜が遅れているのに気付いて、それが可笑しくてコロコロ笑いながら戻ってきた。二人もなんだか可笑しくなってコロコロ笑う。


 どんより曇って肌寒の街だったが、五人がいる歩道の上は、そこだけがまるで陽だまりのような温もりだった……。




☆ 主な登場人物


父      寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師

母      寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊

吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。

佐伯美智  父の演劇部の部長

蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒

谷口真奈美 ポナの実の母

平沢夏   未知数の中学二年生


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