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ポナの季節  作者: 大橋むつお
47/92

47『ちょっといいかな』


ポナの季節・47

『ちょっといいかな』    

  


ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名






「ちょっといいかな」


 これは、日本においては、相手との関係性を深化させるための常套句で、日本中で一日に何千万回と使われている。

 むろん相手によって反応は異なる。

 友だち同士なら「え、なに?」と気楽に人の、主に悪口を中心とした噂話になったり。お巡りさんだったら職務質問の枕詞で、こちらにヤマシサがなければ普通に答える。母親なら、なにか用事をたのまれる前兆。親父なら、一般的に説教の前兆……とかね。


 今日、ポナは、この「ちょっといかな」を二回も聞いてしまった。


「ちょっといいかな」の最初は吉岡あかね先生である。

「ほんの三十分ほど観て欲しいものがあるんだけど」

 放課後のピロティーで気軽に声をかけられた。

「「いいですけど」」

 由紀と奈菜がいっしょだったので、互いにチラ見して、お気楽に返事した。

 で、玄関わきの相談室に入ると、鈴木友子がいた。父達孝の公立と違って、掃除も設備も行き届いていた。その行き届いた設備が、ある状態にしてある。

「じゃ、いくわね」

 程よい冷房、締め切った暗幕、目の前のスクリーンがわりのホワイトボードにプロジェクターとパソコン。


 いきなり『アルプスの少女ハイジ』のテーマ曲が流れて画面の中の緞帳が開く。


 ほとんど女の子一人の芝居。


『クララ ハイジを待ちながら』というロゴが入っていて女の子がクララであると察せられる。

 このクララは、ハイジとオンジのお蔭で立つようになれたあとのクララの話し。

 立てるようになっただけで、しばらくは人生バラ色だったが、やがて学校にいくと意に沿わないことが多く、クララは明るく元気に不登校をつづけている。一日の大半を同じ不登校の女の子とのチャットで潰している。相手の女の子のハンドルネームは「あなた」であり、観客は、いつのまにかクララが自分に語り掛けてくるように思える。

 途中シャルロッテという新人のメイドがチラリと出てくる。ロッテンマイヤーさんの声も、時々する。


 大阪の天〇寺商業という学校の演劇部が、数年前に上演したのをYouTubeから拾ってきたものらしい。そんなに上手い演技ではないけど、一生懸命さと、ストーリーと台詞の面白さは、はっきり分かった。


「どうかな、これをアゴダ劇場で演ろうと思うんだけど、シャルロッテとロッテンマイヤーさんをやってもらえないかな……」


 由紀は生徒会があるので、自動的に奈菜とポナが引き受けることになってしまった。

 新入りの常勤講師とはいえ、先週初顔合わせのときに人間関係ができてしまっている。それにクラスメートにして唯一の演劇部員である鈴木友子に、すがり付くような目で見られては断れるものではない。ま、ほんのチョイ役だし……と思い直すポナであった。


 二度目の「ちょっといいかな」は、帰りの電車の中だった。


 知らない(相手はポナをよく知っているが)修学院の男子生徒だった。

「よかったら、この手紙読んで!」

 顔を真っ赤にして手紙を押し付けると、ちょうど停まった駅で、そそくさと降りてしまった。

 駅に着いてから、歩きながら手紙を読んだ。

「……バカじゃない?」


 手紙には「付き合ってください。蟹江大輔」とだけあった。



ポナの周辺の人たち


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師

母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊

吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。

佐伯美智  父が顧問をする演劇部の部長


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