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ポナの季節  作者: 大橋むつお
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3《親友……になりかけ奈菜の行方》


ポナの季節・3

《親友……になりかけ奈菜の行方》         



 ポナとは:みそっかすの英訳 (Person Of No Account の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名)





 ポナは、五回のメールと三回の電話をした。


 しかし奈菜からは、なんの返事も無かった。


 配られたプリントなどが溜まっていたので、ポチのお散歩にかこつけて奈菜の家まで行ってみた。

「ごめんなさいね、連休の半ばから風邪こじらしちゃって。今朝も制服には着替えたんだけど、やっぱり本調子じゃなくて……週明けには元気になると思うから、またよろしくね」

 奈菜のお母さんは笑顔で言ったが、ポナはひっかかった。


 風邪であるのは担任からも聞いていた。今週いっぱい休むようなら家庭訪問するとも。


 で、担任が入ってややこしくなる前に、ポナだけでなんとかしようと思ったのでる。

 母親の言葉にあっさり引き下がったポナだが、怪しさは決定的であった。

 ポナは衣替えしたばかりの中間服でポチを連れている。世田谷女学院の中間服は、一見制服には見えないギンガムチェックのワンピだ。校章は外していったが、奈菜が同じ制服を朝に着ていたら気づいて一言ありそうなものである。母親がポナの服を見る目は私服に対するそれであった。

 それに、話しの要所要所で目線が逃げる。女性警官をやっている上の姉・優奈から「人間、嘘を言う時には目線が逃げるものよ」と聞かされている。ポナは、いったんあっさり引き下がって、五分ほどしてから、再び奈菜の家のインタホンを押した。


「すみません、一つ忘れてました。月曜は体力測定で、授業はありません」

「え、ああ……担任の先生からも聞いているわ、ありがとう(;゜Д゜)」

 母親が、ドアを閉めようとした瞬間に核心をついた。

「おばさん、奈菜、家にはいないんでしょ?」


 瞬間母親は笑顔で否定しようとしたが、すぐに表情が崩れた。


「六日前から……」

 そう言って母親は泣き崩れた。

「六日も前から……なんで、ほっといたんですか!」


 奈菜の父親は隣接県の公務員で、社会福祉課長に昇進したばかり、立場上娘の家出を公表することはためらわれた。また両親ともに奈菜は、まだまだ子供で、すぐに帰ってくるだろうとタカをくくっていたのだ。で、そうしているうちに六日がたってしまい。今度は逆の意味で公表しずらくなり、母親は、昨日こっそりと探偵事務所に捜索を依頼したようだ。

「そんなバカな、奈菜はまだ十五歳の高校生で、立派な十五の女なんですよ!」

 ポナは、なんだか矛盾したことを口走ったが、ポナの頭の中では一つの考えにまとまっている。


 十五の女の子は体は一人前だが、頭の中は、まだまだ子どもである。だからとても心配だと。


「すぐに捜索願をだしてください!」

 そう言って、ポチを引きずるようにして家に帰り、遅番で、まだ警察署にいる上の姉優奈に電話した。

「あ、新子。友だちの支倉奈菜のことでしょ?」

「うん、でもどうして?」

「いま、通報があったの、横浜のガールズバーで、よく似た子が働いてるって。詳しくは言えないけど、新子も署まで来てくれる?」


 不思議さと安心を胸に、姉の警察署に向かうポナだった。



※ ポナの家族構成


 父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師


 母     寺沢豊子(49歳)   五人の子どもを育てた、しっかり母さん。


 長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉


 次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員


 長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官


 次女    寺沢優里(20歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ


 三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account ) 


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