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ポナの季節  作者: 大橋むつお
23/92

23『ミス世田谷女学院コンテスト②』


ポナの季節・23

『ミス世田谷女学院コンテスト②』       



 ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名






「由紀、この寺沢新子って子の写真間違ってないか?」


「え、本人から目の前で転送してもたったから、間違いないよ」

「そうか」

「なにか?」

「いや、なんでもない。それより風呂入ってこいよ。お父さんの後だとやだろう」

「ああ、入る入る、今すぐ入る!」


 由紀は、親父の後の風呂には入らないが、いつものことで、わざわざ言われることじゃない。


 湯船に浸かりながら考えた。



――お父さんは嘘のつけない人間だ。小学校で盲腸になったとき、お母さんは「ほんの健康診断」だからと嘘を言った。でもお父さんの心配顔で、盲腸の手術を受けることが分かってしまった。お父さんは大学の人類学者で半分お医者さんや法医学の先生のようなところがある。だからあたしが盲腸の手術を受ける時も、手術の様子や、痛みに弱いあたしのことを分かってしまって顔に出てしまったんだ。さっきポナのポスターを見て「おや?」というような顔をした。何かに気づいたんだ――


 いつもなら三十分は入っている風呂を十分であがった。


「お父さん、ポナのポスター……なんかあるの?」


「いや、さすがは由紀が目を付けた子だけあって、可愛い子だなって思ったんだ」

「うそ、そんな顔じゃなかったわよ。盲腸のときみたいに一瞬真顔だった、なにか気になったんでしょ?」

「……風呂あがてっから教えてやるよ」


 父は、やっぱり嘘が付けない。風呂に入りながら、気づいたことを由紀にどう伝えようかと考えた。


 いつもなら十分足らずであがってくる父がニ十分かかってあがってきたところで声をかけた。


「で、どうなの?」


 由紀はビールのハーフアンドハーフを作りながら待ち構えていた。父はアルコールが入ると口が軽くなる。さりげなく出されたので、風呂上がりの勢いで一気飲みしてしまった。

「プハー!……あの寺沢新子という子は、お母さんやお姉さんとは血縁関係にない」

「……ほんと?」

「専門的な計測をしないでも、あれだけ同じアングルで撮っていれば分かる。お姉さん二人はお母さんの子だが、あの子は違う」

「う、嘘でしょ。たった一枚の写真で……」

「分かってしまうのがお父さんの仕事だ」

「ちょ、ちょっと見てよ。ここに家族の集合写真の写メがあるから、お父さんやお兄さんのも見てよ!」

 由紀は、スマホとパソコンをリンクさせ、集合写真を大映しにした。

「……この子を除く全員血縁関係。この子だけが違う」

「そ、そんな……」


「この子は、おそらく、そのことを知らない。知っていれば、こんな写真を提供するはずがない。この子とどう接するかは由紀の問題だけど、慎重にな……」


 とんでもないことを聞いてしまった由紀だった……。



※ ポナの家族構成と主な知り合い



父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師

母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長





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