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ポナの季節  作者: 大橋むつお
19/92

19『溺れたそのあと……』


ポナの季節・19

『溺れたそのあと……』        



 ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名



 



 溺れたその日は大事をとって入院した。贅沢なことに個室だった。そこしか空きが無かったから。


 ポチのことが気になったけど、犬は病院には入れない。ま、救急車の中では元気だったから大丈夫だろう。

 夕方までは、みなみとチイニイが付き添ってくれて……二人で喋ってばかりいた。溺れてグッタリだったので気遣いなんだと思うんだけど、ベッドで二人の会話を聞いているだけなのは寂しかった。


「ねえ、チイニイ、ポチ大丈夫かな?」


 分かっていながら聞く。


 わたしだって話に参加したい。そのきっかけにポチをダシに使った。



「大丈夫だろ、お袋が連れて帰ったけど、車の窓からワンワン吠えてたぞ。カナヅチのくせして川に飛び込むなって」

「もう、あたしが溺れたのは脚がツッタから。溺れかけはポチだったんだから」

「うそうそ、感謝して、ポナのこと心配してたよ」

 みなみがフォローする。みなみも小学一年からポチとも友だちだ。あたしほどじゃないけど、ポチのことは分かっている。


 夕方になって大ニイ以外の家族がとっかえひっかえやってきた。あたしのことを心配してのことではないことは明らかだ。


 大ネエは、あたしのことを口実に夜勤を人に代わってもらって、自分はそのまま非番になる。つまり夜から、あくる日いっぱい休みになる。大学生のチイネエは、見舞いをダシに親に生活費のカンパを頼んでいたし、お母さんは病院食に興味があるみたい。来年定年というお父さんは、お母さんの出産の時以外病院なんか来たことが無い。入院した大川病院は看護師さんが可愛いと評判なので、スケベ根性で来ている。その証拠に病室にはほとんどいなくて、ナースセンターのあたりをウロウロしている。「看護婦さーん」と時代遅れの呼び方で、なにくれとなく余計な話をしている。


 かくして、一晩の入院は病室が個室であることをいいことに、家族に談話室を提供して、あくる日には家に帰った。


 だれか付き添ってくれるかと思ったけど、目的を果たした家族は仕事やなんやらを理由に誰も来なかった。ま、ミソッカスだから仕方ないと思うと同時に、こういう形で、おおげさに言えば家族愛を示してくれることに感謝……分かってるんだけど、たった一人の退院は面白くなかった。


 お父さんの意見で学校には内緒だった。連絡すれば職務や義理で先生やみんなが見舞いにくる。同じ高校の先生なので、そのへんは気配りのようだ。


 昨日の差し入れに制服と鞄があったので(見た時は薄情な家族だと思った)そのまま遅刻で学校へ。月曜は生徒会の選挙がある、由紀のためにも休めない。奈菜も由紀も選挙のことでぶっ飛んでいたので、あたしの遅刻を気に留めなかった。

 由紀には二年生の対立候補がいる。ぽっと出の一年生は、どうしても不利だ。しゃかりきになるのも無理はない。

 結果、二期連続の副会長は、フレッシュというか圧の強い由紀に位負け。半分以上の票をかっさらって当選した。

「よ、女橋下! 世田谷維新の会!」

 と、もてはやされたが、由紀は怒っていた。由紀は前の生徒会が勝手きままにやってきたことを元に戻すことが目的で、維新の会とは規模は違うが真逆なことをやろうとしているのだ。


「ほんとに一般大衆というのは、度し難い!」


 由紀というのは事の本質を大事にする子だと感心。


 放課後には前日溺れたことなどすっかり忘れてしまった。





※ ポナの家族構成と主な知り合い


父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師

母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん

長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉

次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。

長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官

次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ

三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )

ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。


高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)

支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子

橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長候補


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