15『中間テスト二日目』
ポナの季節・15
『中間テスト二日目』
ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名
今日は奈菜と由紀の三人で学校を出た。
でも、試験の話なんかはしない。そういうことには無頓着なのが三人の共通点なのだ。
あれこれ世間話をしながらチンタラと駅まで歩く。
「お饅頭おごるよ、選挙に協力してもらってるから」
「だめだよ、選挙はボランティア。饅頭一個でも買収になる」
奈菜のお堅い一言で、各自が自腹で食べることにする。
あたしは、ポチが年寄りになった話と、薮医院に通う若い奥さん風の話をした。
「犬は人間の五倍で歳とっちゃうからね。でも犬って、自分が年寄りって自覚は無いと思うよ」
「そこが健気で可愛いとこなんだけどね」
と、ポチの事は「犬の気持ち」になって、よく話してくれた。でも若い奥さん風には反応が分かれた。
「う~ん、あたしも分かんないなあ」
と、これは奈菜。
「そういうことは自分で学習することね」
由紀は、分かっているようだが、笑うだけで答えを言わない。同じ言わないのでもお母さんとは感じが違う。曖昧に笑うのではなくて、豪快に笑う。当選前から副会長の貫録十分だ。
で、家に帰って、ポチを連れて大川へ。当然のごとく薮医院の前を通る。
今日も昨日の若奥さん風が、うかない顔で出てきた。藪先生は玄関には出てこず、窓を開けて奥さん風を見送っていた。
「なんだ、またポチとボール遊びか。カラは高校生だが、やってることはガキンチョのころと変わらんなあ」
「ストレス解消には、これが一番なの。ね、あの若奥さん風は?」
「個人情報」
言ってることはまともなんだけど、やっぱり目がおちょくったように笑っている。
今日も大川の河川敷で、15回ボール遊びをやって、芝生のいいとこを見つけて寝っ転がる。
雲がゆっくり流れている。
「雲も景色もガキンチョのころと変わらないけど、ちょっとずつ変わってるんだよね、いろんなものが……」
ポチが、ペロリとホッペを舐める。これも昔からの習慣。
「いつまでも空見てると日焼けしちゃうよ」
ポチが、そんなことを言ったような気がしたので、さっさと家に帰る。
珍しくチイニイが家に居た。
「あ、ひょっとして仕事クビになったとか?」
口から冗談のつもりが大当たり、チイニイは苦笑い。
「オレ、免許あるから、高校の非常勤の先生でもやろうかな。ポナみたいなの相手にしてりゃ、済むんだからな」
みたいなのは余計だ。あたしは、いつまでたっても、ミソッカスだと思った。
※ ポナの家族構成と主な知り合い
父 寺沢達孝(59歳) 定年間近の高校教師
母 寺沢豊子(49歳) 父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男 寺沢達幸(30歳) 海上自衛隊 一等海尉
次男 寺沢孝史(28歳) 元警察官、今は胡散臭い商社員
長女 寺沢優奈(26歳) 横浜中央署の女性警官
次女 寺沢優里(19歳) 城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女 寺沢新子(15歳) 世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ 寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。
高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜 ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀 ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長候補




