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―僕のものになればいいやんか…。
―僕の方がミハルの事を好きやのに。何で僕じゃだめなん?
そう言ったら、ミハルは困るだろうか。
少しくらい困らせて見ようかとも思うが、そうは出来ない性格なのは自分が良く知っている。
ミハルの困った顔を見るくらいなら僕が困った方がいい。
キヨシは苦笑いしながらそう思った。
友達の紹介で知り合ったミハルとは、すぐに意気投合した。
キヨシより2歳年上のミハルは、キヨシの事を「ヨッシー」と呼ぶ。
古臭い響きの自分の名前が嫌いなキヨシは、自己紹介の度に
「キヨと呼んで」とお願いするため、殆どの友達がそう呼んでくれる。
だがミハルだけは違った。
「私だけの呼び方で呼びたい…ヨッシーってのはどう?」
あっけにとられるキヨシをよそに、「決まりねっ!」と無理矢理カンパイしたミハルに、
キヨシは一気に心を奪われた。
だが、出会った頃からミハルには遠距離恋愛中の彼氏がいた。
だからキヨシは自分の気持ちをひた隠し、友達Aとして接してきた。
その関係を壊したのはミハルだ。
「今夜、ヨッシーの部屋に泊りに行っていい?」
突然の申し出に「何言うてんの、あほか」と笑って返したが、ミハルは笑っていなかった。
それどころか今にも泣き出しそうだった。
「彼氏と何かあったん?」
「何もない。ただヨッシーと居たいだけ。」
嘘を付いているのは一目瞭然だ。
「…意味分かって言うてんの?僕も一応男やで?」
強めに言ったキヨシの言葉にミハルは黙って頷いた。
その夜以降、ミハルは彼氏との事をキヨシに話さなくなった。
キヨシも敢えて何も聞かない。
共通の友達から聞こえてくる話ではまだ続いているようだ。
もちろんキヨシとの関係は誰にも秘密のままだ。
「ヨッシー、彼女が出来たらちゃんと私に言ってね。」
「…その時ミハルはどうするん?」
「彼女ちゃんにヨッシーの取り扱い説明書を渡す。」
「なんでやねん。」
キヨシのツッコミにミハルは寂しげに笑う。
そんな顔をするくらいなら、僕にすればいいやんか。
と、キヨシは思う。
僕なら…ミハルにそんな顔なんてさせへんのに。
たまらずミハルを抱き寄せる。
ミハルは確実にここに居る。キヨシの腕の中に。
だが、心はどうだろう。
遠い地に居る彼氏にあるのだろうか。
少しくらいはここに…。
ミハルの冷たい手が、キヨシのTシャツの裾から入り込んで来た。
でもすぐに温かくなっていく。キヨシの身体に溶け込むように。
キヨシの心にまた同じセリフが浮かぶ。
―僕のものになればいいやんか…。
ミハルがそれを待っているとは知らずに。




