#71
毎度(以下略
エルミーラちゃん回です。
最初はフレーバーテキスト的なモブのつもりだったのに……。
終わらないセレスメア義勇艦隊(笑)の話……。
「敵、星征艦隊と思われる複数の飛翔体、本艦後方より降下し続けて来ます。数は3。大きさは小型航空艦クラスです。敵、降下軌道変わります。増速しながら明らかに我が艦隊を目指して突っ込んできます!」
ファムアルフートが艦の後方を見上げるようにしながら、新たなる敵の到来を告げた。
糞ったれ。やっとこ正面の星征艦隊が片付いたと思ったのに。俺はファムアルフートを……皆を守れたと思ったのに。やはり別の艦隊が居やがった。
小官、現在ファムアルフートの指揮を臨時代行するマクシム・ステパノヴィチ・オストローメンツは思わず奥歯で苦虫を噛んだ。
「対空砲全門指向開始。射程に入り次第、迎撃しろ。正面の敵はどうか!?」
前後から挟み撃ちにされるのはまずい。だが、先ほど受けた砲撃から驚異的な攻撃力を持つ事が判っている正面の敵に、ファムアルフートの装甲の薄い側面や背面を向けるわけには行かない。
あのとんでもない威力の質量兵器でファムアルフートの側背面を撃たれたら、一撃で中枢防御区画を抜かれて墜とされかねない。
玻璃の乙女たちが居れば、もしかしたなら、とも思うが、彼女たちとは最初の一撃を食らって以降、その安否を確認出来ていない。
何よりも、艦を動かす為の人員が極端に足りなくなっている。救助を行うどころか、何人怪我しているのか、何人死んだのか、それを確認する為の人員を抽出できないでいるのだ。
彼女たちには気の毒ではあったが、今はそれどころではなかった。
「はい、提督。
正面の敵に対して護衛艦隊が攻撃を続行しておりますが、敵の防御フィールドと装甲が強力なのか、思う様に損害を与えられておりません。
本艦の荷電粒子砲でもあまり効果が出ておりませんので、護衛艦隊の小口径砲では……」
思わず唸った小官に、ファムアルフートが申し訳無さそうに視線を下げる。
くそっ!あと少しのところで!あと少しで、ファムアルフートを……皆を返してやれるというのに!
「艦載攻撃機部隊を呼び戻せるか?」
「……はい、提督。いいえ、間に合いません。それに、艦載攻撃機部隊は推進剤を使い過ぎています。帰還しても、戦闘継続のためには一度、推進剤の補給が必要です」
ファムアルフートの言葉に再度、歯噛みする。
何とか、背後から襲い来る敵艦を食い止めなければ。
忌々しいのは星征艦隊の防御フィールドだ。
そういうものを持っている、と言う話は聞いていたが、まさかここまでの防御力を誇るとは思わなかった。天上大陸の艦艇であんなモノを持っている艦は居ない。
ファムアルフートの数十分の一しかないあの船体容積で、どうしてあそこまでの防御力を発揮できるのだ。
忌々しい、忌々しい。
あれ程の戦闘力を有しながら、どこの味方でも無い。
星征艦隊という存在が、今はただただ忌々しい!
誰かが。
そう、何処かの超越者が裏で賽子でも振っている様にしか小官には思えなかった。
その理不尽な、運命の様な何かに翻弄されているようで、底しれぬ怒りが込み上げてくる。
「後方から接近中の敵、間もなく対空砲の射程内。高度を下げて対空砲の死角に入ろうとしています。射撃可能な全対空砲、敵へ指向完了。迎撃開始!迎撃開始!」
ファムアルフートの報告に、小官は戦慄する。
敵艦の狙いが本艦への攻撃なのは間違いがない。
問題はその方法だ。
相対距離から考えて、砲撃戦をするなら既に発砲している筈。
爆撃するにしたって、わざわざ対空砲の射程まで近づく必要は無い。
有らん限りの誘導弾を対空砲の射程外からばら撒いて、反復飽和爆撃してしまえば良い。
ファムアルフートは強力な対空迎撃システムを持つとは言え、その状況は悪夢に近い。
なのに、それをしないと言うことは、敵の目的は一つしかない。
「敵の狙いは移乗攻撃だ!!!
全艦に通達!武器庫を開けろ!残った人員で大至急、応急戦闘班を組織しろ!
誰でも良い!動ける者は急いで武器を持て!!!」
◆
それは、遥か昔、私がバシュカルディアに居た頃の記憶。
刺すような冷たさの風が頬を撫で、柔らかでも優しくは無い日差しに照らされた草原で、自分の背よりも長い牧羊杖を弄びながら羊たちを追う。
私よりも年上の牧羊犬のボリとコクジャルがまるで手の焼ける幼子を導くように、千切れんばかりに尾を振りながら右に左にと走り回ってくれる。
私はボリたちの後を追いかけて、逸れた子羊を牧羊杖で叩いて群れに戻す。
そんなことを繰り返していると、やがて遠くから土を蹴る蹄の音が聞こえてきて、私が振り向くとそこには太陽を背にした大きな影が栗色の雄駿に跨ってこちらを見下ろしていた。
「偉いぞ!俺の一等星!」
懐かしい故郷の言葉とともに、大きな節くれだったザラザラの手が、私を抱き上げる。
そのザラザラの荒れた手が愛おしそうに私の頬を撫でる感触。
肌に引っかかるその感触が、擽ったくて、でも愛おしかった。
「さぁ、家に帰ろう!」
何故かその言葉に、私は強い焦燥を覚えた。
ザラザラした手が私を抱きながら手綱を操り、それに合わせて雄駿が駆け出し、私の手から取り上げた牧羊杖を振って、まるで魔法のように羊たちを追い立てながら、草原をさっそうと疾走る。
その後を追って、ボリとコクジャルが嬉しそうに従いてきて、私がふと見上げた故郷の空は輝く茜色に染まっていく。
やがて地平線と山の間に見えてきた家に向かって、雄駿が力強く駈ける。
ザラザラしたその手に抱かれながら、私は何故か強い強迫観念に囚われていた。
駄目よ。帰っては駄目。
何故かはわからないけれど、背筋に伝う冷たい何かが、雄駿が先に進むのを拒否していた。
辺り一面にうねる緑の波の間に間に、赤や黄色のカラフルな模様が入った屋根が見え始めた。
私たちの集落だ。
見慣れた家の前に、人影が立っている。
駄目。帰っては駄目。
私は帰ってはダメなの。
私は、セレスメアに居なければならないの。
だって、そうじゃないと、そうじゃないとみんな悲しむでしょう?
そんな私の想いとは裏腹に、家の前で歩を止めた雄駿の上から、私を抱えていたザラザラした手が、泣きじゃくる私をその人影に優しく預けた。
温かな両腕で優しく抱きしめられた私が涙を浮かべて見上げたその人の顔は逆光で見えなかった。
「お帰りなさい。私の一等星」
やめて。私を見ないで!
酷く湿った粘着質の咳とともに、私、エルミーラ・イスマイロワは覚醒したのを自覚した。
「あぁ……」
言葉にならない掠れた呻き声と共に、激しい咳が出る。
咳をするたびに胸に激痛が走った。
その激痛が筋肉を硬直させ、それが更なる咳嗽を催す。
まるで、苦痛が苦痛を呼ぶ地獄の連鎖。
何とかその連鎖から逃れようとして、身をひねるために床を突いた両腕からは吐き気を催すほどの猛烈な痛みが脊髄を灼く。
バランスを崩して倒れこみ、顔を強かに打つ。
その衝撃で再び胸に激痛が走る。咳が出る。何か粘着質の物を吐き出す。
必死に身じろぎし、何処か痛くない姿勢がないのかを探し、ようやっとその苦痛の連鎖が落ち着いた時、口の中に広がる饐えた鉄の味に自身の唇から垂れた液体がただの唾液ではない事に気付いた。
左の視界が赤い。しかも、まるで太陽を直視してしまった時のような、視界を塞ぐ黒い跡で左の赤い視界に不気味なまだら模様が出来ていた。
そのせいなのかは判らないが、両の耳も聞こえない気がする。
頭の芯に金属を差し込まれたような、悪寒を伴う激しい頭痛がする。
沸騰するように痛む頭に反して、左頬が硬質で冷たい感触とともに、微かで不規則な振動を伝えていた。
そこでようやく、自身が今力なく床に倒れ伏しているのだと認識ができた。
「……ぅ゛……」
眼球だけで辺りを見回す。
私はどうなったの。
艦は、どうなったの?
まだら模様の半分だけ紅い視界が、隣りに居たはずの仲間を探す。
視界の上側に、力なく伸びる特徴的なアイスブルーのブーツが見える。
そのブーツの持ち主を見上げようとして、また胸に激痛が走り、粘着質の咳が出る。
咳をしたおかげで少しだけ動いた視界が、ブラウスを赤く染めて力なく壁に凭れる仲間の姿を映した。
期待はしていなかったけれど、それでも現実をこの目で確認するとしないのでは大違いだった。
思わず、息が詰まる。それは、胸の痛みのためなのか、それとも違う理由なのかはわからなかった。
窒息するように、寒気と絶望が全身へと広がってゆく。
痛い。痛い。痛くて、痛くて、痛くて、辛い。
助けて。
痛くて辛くて、もういっそ、殺して。
諦念とともに瞼を閉じたのに、唐突に身体が動かされて再び胸に激痛が走る。
やめて、痛いの。動かさないで。
尚も執拗に揺り動かされる体と、それに伴って走る激痛に茫洋と見開いた視界を、誰かが覗き込んでいた。
「……ぁおぅ……」
迸る胸と腕の激痛に、思わず呻く。
痛いの。そっとしておいて。本当に痛いの。もう、殺して。
なのに、その人は呻いた私を見て、嬉しそうに笑って尚も私を揺り動かす。
やめて。本当にやめて。殺すなら、せめて楽に殺して。
左腿に何かを押し付けられた。
胸の激痛、脳の芯を焼く裂痛、両腕が催す吐き気、それらが途端に引いてゆく。
何を打たれたの?
耳が急に聞こえ出した。轟々と暴風のような自分の脈拍だと気付く。
「――ょうぶだからな!絶対助かるからな!気を確かに持て!」
次第に両腕の感覚も、痛みも、全てを感じなくなって、まるで全身が痺れたみたいに力を失ってゆく。
それに伴って、今度は強烈な目眩が襲ってきて、まだらに赤い左半分の視界が狭窄してゆく。
「聞こえるか!?聞こえるな?救護班!コッチだ!まだ息がある!」
狭窄する赤い視界の中で声のする方に眼球だけを向けると、まだ垢抜けない同い年くらいの男の子が誰かを呼んでいた。
すると、今度は小さな丸メガネを掛けて立派なヒゲを蓄えた小太りの男がドタドタと駆けて来た。
「よく頑張ったな嬢ちゃん。イリューシャ、打ったのはケタミンだけか?エピネフリンは打ってねえな?どこに打った?」
「青いやつだけだ。血が出てる奴には赤いやつは打っちゃダメなんだろ?左の太ももに打った」
「よく覚えてたな。応急救護班にしちゃ上出来だイリューシャ!」
髭面の男は私を爪先から頭の先まで舐めるように見下ろすと、乱暴に私の肩を押さえて両の腕を引っ張った。
「おい、おっさん!どうなんだ?助かりそうか?」
「ちょいと黙ってろ……どっちも肩が折れてるかも知れねぇ。下腕は両方ポッキリだ。とりあえず下腕の骨の位置だけ治すぞ。手首は……複雑骨折だなこりゃ」
まるで分厚い綿の上から触れられるような、すべてが鈍くなった感覚の中で、糸の切れた人形の様にされるがままにされる。
「彼女たちに何があったんだ?!」
「玻璃の乙女たちってなぁ、艦を守る最後の盾だ。だが防壁系の碩術で対艦砲が完全に防げるわけがねぇ」
赤くてマダラの視界に強い光が翳される。
「まず、防御術式に掛かるとんでも無い負荷が碩術師に逆流して並列思考が吹っ飛ぶ。吹っ飛んだらどうなるか?脳内出血程度で済みゃ運が良い」
赤い視界を照らしていた光が引っ込められて、黒い影が視界の真ん中に残る。
「嬢ちゃん、服切るぞ。ちょいと我慢してくれよ。イリューシャ、変なこと考えんじゃねぇぞ?」
お腹になにか冷たいものが当たったかと思うと、その冷たい感触が首元まで登ってくるのが分かった。
玻璃の乙女たちの制服が裂かれてしまったのが悲しかった。
「対艦砲を生身で防いだ時に起こる怪我ってのは、それだけじゃぁねぇ。もし敵の対艦砲が荷電粒子砲だったら、まず助からねぇ」
胸にヒヤリと冷たい空気が当たり、素肌が晒されたのが判った。
「装甲板があるとは言え、大抵は荷電粒子が装甲に当たった時に発生する超高熱で丸焦げだ。そいつをやり過ごしたとしても、同時に発生するとんでも無い強さの放射線が装甲の裏側に居ても襲ってくる。一瞬で超重度被爆だ。
重度被爆ってのは、そりゃ酷ぇもんだ。全身が赤く水膨れて出血し続けるんだ。しかも、そうなっちまったら、もうどうやったって治しようがねぇ。もう二度と見たくねぇな。
その点、嬢ちゃんは運が良かった。今回敵が撃ってきたのは、質量兵器だ。嬢ちゃんは装甲表面の剥離被害と衝撃波で吹き飛ばされただけで済んだ。被爆はしてねぇ」
「だけって、それだけでこんなに酷い有様になるのかよ!?」
「なるんだよ。音速の何倍もの速度で数十プードも有る重金属の塊が飛んでくるんだ。着弾の瞬間に発生する衝撃波と付随破壊効果は、例え装甲板の裏側に居たって、超音速で駆けてくる。普通、生身で食らったら骨の一本や二本じゃ済まねぇのさ」
胸元でバチン、と硬いものを断ち切る音がする。
「素晴らしい。肋骨はグチャグチャだが、左肺が潰れるだけで済んでる。心の臓は無事の様だ。嬢ちゃん、アンタよっぽど日頃の行いが良かったんだな。本来なら心臓はおろか、上半身と下半身がオサラバしてたっておかしくねぇんだ。
神様の御加護が有ったに違いねぇ。左眼は見た目にゃちょいとアレだが、頭蓋骨は大丈夫そうだし、綺麗なお顔も傷ついちゃいねぇ。医療用ナノマシン打っとくから、直に内出血も止まる。脳の損傷によっちゃ玻璃の乙女たちを続けられるかは解らねぇが、後は医務官に任せりゃ、多分助かる」
今度は慎重に、乳房に手が当てられて、何かを注射された。
「良し!イリューシャ、下腕に副木固定具巻いたら運べ!ここで出来るのはこのぐらいだ。胸は絶対に圧迫するなよ!そっと、とっとと運べ!」
そう言って丸メガネの髭面は駆け去ってゆく。
イリューシャと呼ばれた男の子が、丸メガネの言う通りに分厚い布で出来た細長い筒を開こうとして、慌てて目を反らしながら私の胸元にケープレットコートを掛けた。
「ゴメンよ。何も見てないから。何も」
そう自分に言い聞かせるように、イリューシャは布製の細長い筒を私の腕に巻いていく。
巻き終わった両腕がお腹の上で組ませられると、胸の上にかけられたケープレットコートで私の体を包むように足と背中の下に腕が通されて、ゆっくりと抱き上げられるのがわかった。
「ちょっと揺れるかもだけど、少しだけ我慢してくれよな」
そう言って私を見下ろすその顔に見覚えがあった。
そうだ。朝、通路ですれ違った。
顔を赤らめていた、あの整備科の子だ。
そう気づいた瞬間、私の頬になにか熱い物が落ちてきた。
朦朧としながらゆるりと視線を上げれば、イリューシャが泣いていた。
喉を鳴らし、鼻をすすり、私を抱いているものだから、溢れる涙を拭うこともできず、ただただ、上を向いてこみ上げる嗚咽を、歯を食いしばって呑みこみながら彼は走った。
「ごめんよ」
震える声でそう絞り出したイリューシャの頬から、雨の日の軒先のように熱い雫が垂れてくる。
何処か遠くから響く断続的な太鼓のような空気の振動を感じた。
「俺は、何にも出来なかったんだ」
イリューシャは上を向きながら走る。
彼の熱いくらいに熱を持った腕を伝って、私の身体が揺れて、その度に息が詰まる。
「警報が鳴って、俺は頭抱えて震えてることしか出来なかった」
私にはイリューシャが何で泣いているのか解らなかった。
一際大きな振動が空気を震わせる。
「アンタたちがあんな目に会ってまで艦を守ってるなんて、思いもしなかった」
私も、こんな目に会うなんて思ってなかった。だって、戦いになるなんて、誰が思うのよ。
「俺はアンタたちのこと、内心面白く思ってなかったんだ。ちょっと綺麗なだけで、チヤホヤされて、式典にしか出て来ない癖に俺たちよりも待遇良くて、お高くとまってて――」
私の方こそ、ごめんなさい。内心、貴方のこと、バカにしてたのよ。
貴方のこと『可愛い』だなんて、地上世界出身の私が勝手に高嶺の花になった気で居たの。
「なのに、いざとなったら、俺は体張って艦を守ったアンタの影に隠れて、震えてることしか出来なかったんだ……!」
何言ってるの。貴方、助けに来てくれたじゃない。
貴方が来なかったら多分、私はあそこでゆっくりと冷たくなってたわ。
「玻璃の乙女たちはスゲェよ。アンタたちが居なかったら、俺たちは今頃……畜生。チクショウ!」
買い被り過ぎよ。私たちだって、何をしてるのか、何をさせられてるのか理解していた訳じゃないのよ。
でも、嬉しいわ。ど田舎の地上世界出身のこんな小娘が、煽られて乗せられて、見栄張って意地張って、良い気になってただけなのに。
そんな事を言って貰ったのは、多分初めて。
もう私は、玻璃の乙女たちを続けられないかもしれない。
それでも、故郷に帰ったら――お父さんとお母さんは微笑って迎えてくれるかな。
多分、微笑って迎えてくれる気がする。
だって、私のことをすごいって言ってくれるヒトが居るんだもの。
――貴方みたいに。
だから、私は胸を張って故郷に帰れる気がする。
身体はボロボロなのに、心だけはなんだかとても暖かかった。
「なんで俺には……アンタたちがこんな目に会わなくて済むような力が無いんだ!チクショウ!」
なのに、上を向いて表情が見えないイリューシャの頬からはとめどなく熱い雫がこぼれ落ちてくる。
貴方、整備科でしょう?貴方が居ないと、艦は動き続けられないじゃない。
私より、ずっと必要なのよ。
だから、元気出してよ。自分を責めないで。
そう慰めてあげたかったのだけれども、朦朧とした意識は、潰れた肺は、必要な言葉を私に喋らせてくれない。
だから、力の入らない左手で、手首から先が力無くブラブラ揺れていたけれど、それで今の私に出せる精一杯の力で、イリューシャの胸を叩いた。
走る彼が気づいたかどうかは分からないけれど。
ごめんね。ありがとう。
今度、ちゃんと喋れる様になったら、自己紹介させて。
こんな風に。
私はエルミーラ。貴方に救って貰った女よ。
エモさに振ってみました。
ちょっと試行錯誤中。
皆さんのご意見いただけると嬉しいです。
※検討の結果、#66と#69を小改変する事にしました。
改変終了後に#72を投稿しようと思います。
度重なる改変になり申し訳ございません。
(#72はまだ一文字も書いてません……)




