表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朕は猫である  作者: 名前はまだない
31/70

#31

 明けて翌日。


 昨日の夕食の残りを温めつつ、水筒の清水でライラが顔を洗い、今日の予定を考えていた時分であった。



 「出来たのですーーーッ!」



 姦し娘達が艦載機達を引き連れて戻ってきた。



 「これでどうだなのです!」



 引き連れて来た人型の艦載機が出来上がった薪ストーブをどうだとばかりに朕達の前に置いた。



 「……其方等、これ、鉄ではないであろう」



 朕達の前に鎮座した薪ストーブは、クロガネの光沢ではなく、磁器のような透明感の有る純白の光沢を放っていた。


 形は……朕が地面に描いた設計図の通りのようである。そこは流石と誉めておこう。だが、この独特の滑らかな、まるで表面に極薄の膜が貼った様な鏡とはまた違う光の拡散具合を伴った白い輝き。朕の生前でも見知った輝きだった。


 調理に使う天板は文字通り計器で図ったかのように水平を確保しており、凹みや汚れなど一切ない。正面の観音開きを開いてみれば、内部は4:6の上下2段構造になっており、上段がオーブン、下段が燃焼室となる様に溶接され、さらに観音開きの外側には給気口が口を開けている。正に注文通りであった。のだが。



 「これ、変換放射装甲材(其方等の外殻装甲板)ではないのかの?」



 「その通りでゴザル!昨日の説明では輻射熱が肝要と理解したでゴザル!だから最も輻射熱を発生させられる素材を選んだでゴザル!」



 エッヘン、と胸を張る姦し娘ズ。ライラが「きれ~」と光り輝く純白の薪ストーブを眺めているのを横目に、朕は思わず天を仰いだ。



 「鉄で作れと申した筈がどうしてこんなゴミが出来て来るかの……」



 天を仰いだ朕に姦し娘達が口々に抗議の声を上げる。ほんと煩い。



 「鉄よりも熱輻射効率がダンチなのです!」



 「そうでござる!これなら熱源の伝熱をスチール材の百倍近い速度と効率で輻射熱に変換できるでゴザル!熱源の熱を無駄無く暖房効果に使えるでゴザル!」



 「千∋宀υ”∋宀ξヽ”(超丈夫)



 「まぁ、実際にやって見せた方が良かろ」



 煩い姦し娘達を黙らせるべく、昨日の焚火の燃え残りの薪を火がついたまま放り込んでやる。

 すると、途端に早朝の冷涼な空気が仄かに熱を帯びた。ついでに純白のストーブが薄っすらと輝きを放つ。



 「スゴイ!暖かいよ!……あれ?」



 が、直ぐにストーブから発せられた熱は早朝の冷気に巻かれて霧散してしまった。



 「解ったかの」



 ストーブの正面の観音開きを開いてみれば、先ほど放り込んだ、炎こそ揚げずとも炭の様にまだ赤々と熾火(おきび)になっていた薪は、すっかりと黒く焦げた様に火が消えていた。



 「消えてるのです」



 「消えてるでゴザルな」



 「‡ヱ〒ゑ(消えてる)



 ストーブの中を覗き込んだ姦し娘達が頭上に『?』マークを浮かべて首を傾げた。



 「朕が鉄でストーブを作れ、と言ったのには理由がある。運動変換放射装甲材はの。帯熱性が低すぎ、伝熱性が高すぎ、そして熱輻射能力が高すぎるのだ。その為、熱源からドンドン熱が奪われ、薪の燃焼反応が止まってしまうのだ。つまり、薪に火をつけて中に入れても直ぐに消えてしまう」



 変換放射装甲材は正確には金属ではない。セラミック(焼き物)である。


 運動・熱、その他諸々のエネルギーを電磁波に変換して放射する機能を持たせた、天上世界でも生産されていない、星征艦隊のみが装備している外殻用装甲材である。朕の治世ではそうであった。まぁ、生産に真空無重力環境が必要であるからな。


 高速運動中の質量体や熱線、光線諸々のエネルギー照射を受けると、照射点から受けたエネルギーを熱エネルギーに変換して装甲材全面に熱伝導させた後、電磁波――主に赤外線――に変換して放射する事で船体内殻や内部構造の損壊・貫通被害を防ぐ機能を持った特殊な装甲材である。


 鉄やアルミ等とは比べ物にならない熱輻射能力を持っている素材である反面、帯熱能力は頗る低い――受け取った熱をドンドン赤外線に変換してしまうので――為に事ストーブ用素材用途に限って言えばこれ程向かない素材もない。


 ちなみに、価格は定尺板(サブロク)で数百億テール程はするであろう。

 正に数百億テールのゴミである。変換放射装甲材は金属ではなく、セラミック(焼き物)の一種なので鋳つぶして再利用することも出来ない。


 やはり教育は大事であるな。

 まぁ、これも必要な失敗であったと思えば良い。朕達の懐は痛んでおらんしな。


 斯くして、万金よりも高価なストーブ(ゴミ)は広場の隅に転がされて打ち捨てられることとなった。星征艦隊の補給隊とやらが見たら白目を剥きそうだ。



 「はい。やり直し」



 うぇーん!覚えてろなのです!と意味不明な叫びを残して姦し娘達は帰っていった。ほんと煩いのう。


 さて、静かになったところでライラと一緒に昨日の残りを腹にかき込んで、秘密基地の建設開始である。


 昨日ライラと相談した結果、大まかな設計は決まった。住むのは朕とライラの2人だけとはいえ、それ以外の住人が増える可能性がある以上、少し大きめな小屋が必要だ。かと言って複雑な構造の小屋を作るわけにも――秘密基地造営はライラのテレキネシスの訓練を兼ねているためだ――行かぬので、居間と寝室を兼ねる長方形の小屋を作り、寝具はハンモックを敷設することで賄う事にした。葺屋根を作るなら天井にハンモックを吊るす為の梁を通すこともできる。


 建造予定の小屋は縦4.5ショーク、横7.2ショーク。メートル法に直すと縦約4m、横約6.5mだ。ほぼほぼ16畳程度の大きさであるな。

 ヒト1人が寝るのに必要なのは約2.43㎡、約1.5畳と言われておる。床に寝るなら十人は寝られる広さだ。だが、天井に梁を余計に通して互い違いにハンモックを吊るせば倍は寝られる計算である。


 実際には家具やら何やらで6割程度も寝れれば良い方であろうが、それだって十二人も寝れれば想定される最悪の事態には十二分に対処できる。

 朝飯を手早く終わらせ、縄張りを行うことにする。と言っても、地面に線を引くだけだが。


 次は建材の調達である。

 土嚢工法はどこをどう弄ったとしても文字通り土嚢を積み上げて家を作る工法である。その建築方法は単純明快。土嚢を積むだけ。


 だがそんな単純な工法にも幾つか留意する点がある。その中でも1番重要なのは土嚢袋に詰める土だ。

 簡単に言えば、それなりに重くて粘度の高い土でなければ詰んだ時に直ぐに崩れてしまう。

 もちろん砂や砂利はダメだ。粘度不足の上に空気を多分に含むために軽い。直ぐに崩れる。


 理想的なのは粘土質の土を詰めるのだが、理想的な粘度を求めるととても面倒くさい地質学的調査が必要になる上に、展開する場所による向き不向きの偏りが激しくなってしまう。

 そこで考えだされたのが、土にセメントを混ぜる事で必要な粘度と重さを確保する方法だ。


 詰まるところ、土嚢の中身をモルタルの様な物にしてしまえば、どの様な地質の場所でも安定的に建物を建造することができる、という事だ。

 と言っても、完全なモルタルにする必要はない。モルタルとはセメントと砂や砂利との混合物であるわけだが、モルタルをモルタルそのままで使用しようとすると、モルタルとは非常に柔らかい粘土と言うよりも液体に近い物であるから、鉄筋や型枠無しでは構造的な堅牢性が確保出来ない。固まってしまえばそれなりの硬度を有するが、固まるまで形状を保持しておく型枠の作成が至極面倒、というより、現時点の朕達には不可能である。木材とその加工技術を馬鹿みたいに必要とする。


 しかし、これを土嚢袋という単なる麻袋に入れるだけで、重力と相まって構造的堅牢性を確保することができる。しかも土嚢袋とはある程度の柔軟性を有しており、曲げたり丸めたり、ある程度形を柔軟に変えられる。精密な設計図などなくても、とりあえず隙間がないように積むだけである程度の堅牢性を備えた建造物を建てる事が出来る。


 簡単に言えば、土とセメントの混合物を詰めた土嚢とは、自由に形を変える事が出来る柔らかいレンガの様なものなのだ。しかも乾けば固まって本当にレンガのようになる。

 逆にレンガはレンガで作成するのに型枠も焼成炉も、さらには理想的混合比の粘土が必要となる。しかも一個一個形を整えねばならない。これも朕達には不可能、と言うより面倒くさい。


 土嚢工法を考えた奴は天才であるな。

 と言うことで、セメントと混ぜる為の土が必要である。土を手に入れる方法は簡単だ。穴を掘れば良い。



 「ライラ、この辺りからあの辺りまで耕してくりゃれ」



 ここからはライラの訓練である。トシュケルを出る前に買い求めた農耕用の鋤を渡して、広場の隅の3ショーク四方程の範囲を耕させて採土地を作らせる。もちろん鍬を手にして耕すわけではない。テレキネシスで操作した鍬を使って耕すのだ。



 「あっ!」



 が、ライラがテレキネシスを使って鋤で地面を掘り返した瞬間、ライラの制御を離れた木製の鋤――刃の部分だけ金属が嵌め込まれた安物だ――が大空へと旅立って行った。

 農具を使う、と言う行動は直線的ではないからして、必然的に複数のベクトルの運動系を乗り継ぐように、連続的に世界からズラさねばならない。非常に難しいのだ。


 失敗するとこうやって鋤がぶっ飛んでいく。

 まぁ、こうなることは予想しておったわ。


 ライラの制御を離れて軽く超音速で大空へとぶっ飛んでいく鋤を空中で印付けしてカウンターベクトルの運動系で急制動をかけた後、引き寄せる。



 「最初はゆっくりで良い。制御が外れぬ事だけに集中すると良いぞ」



 ぶっ飛んでいった鋤を追って青い顔で大空を見やったライラに鋤を返してやる。



 「あっ!」



 一回も振り切らない内にまた大空へと旅立つ鋤。


 まぁ、最初はの。仕方ないの。

 またカウンターベクトルで急制動をかけてぶっ飛んでいった鋤をライラの元へ戻してやる。


 このままだと他の作業が進まないので、分割思考(マルチディヴィジョン)の一つを割振ってぶっ飛んでいく鋤を回収させる作業に回す。

 このままライラにつきっきりではいつまで経っても秘密基地ができないので仕方ない。

 定期的にぶっ飛んでいく鋤を尻目に、朕は別の作業を開始する。


 まずは小屋の基礎を作らねばならん。


 といっても地中に杭を打つような事はしない。そもそもそんな大掛かりな建築でもないしな。

 姦し娘達の艦載機達が切り倒して広場の隅に積み上げた丸太を一つ拝借する。


 土嚢工法は上からの重みによって構造を維持する仕組みなので、地盤はしっかりしていた方が良い。なので、丸太を上から落として地盤を突き固めるのだ。

 ドン、ドンと一定の間隔で満遍なく建設予定地を突き固める。


 縄張りした範囲を突き固めてゆく。

 複数本でもって半刻程も続けると、周りの地面に比べると大分突き固めた縄張り部分は少し低くなっていた。


 よしよし。突き固めたら地中の水分が浮いて来て泥濘化した、などと言うことが無くて良かった。水捌けの悪い地盤だと往々にして泥濘化する事があるので、そんな事になったら姦し娘共に別の場所を探させなければならない所であった。

 地均しが出来たところで、早速土嚢を積む。


 ライラの様子を伺えば、何度目かに鋤を大空へと見送っていた。まぁ、最初はな。最初はな。

 土は殆ど耕せていない。まぁ、朕のライラに付けた分割思考(マルチディヴィジョン)の記憶が正しければ、鋤を地面に突き立てられたのはこの半刻余りで数えるほどしかなかった。

 仕方ないのぉ。


 本当はライラに訓練させた方が良いのだが、このままでは土嚢を一つも積まずに日が暮れてしまう。


 鋤と一緒に買ってきたツルハシをテレキネシスで振ってライラが耕す採土地を広げてやる。ライラは朕のテレキネシスの動かし方を見ながら、鋤をゆっくりとテレキネシスで持ち上げてから、地面に向かって振り下ろ――される事なく鋤は大空へと旅立っていった。


 どうもベクトルの違う運動系に乗り換えるのが上手くいかん様だの。まぁこればっかりはコツを掴むしかないからの。練習あるのみだの。

 朕の分割思考(マルチディヴィジョン)が瞬時に空中でカウンターベクトルを使って鋤を受け止め、落胆するライラに返してやる。


 まぁ、ゆっくり練習すると良い。

 景気良く鋤を大空へと向かって打ち上げるライラを横目に、ツルハシで1ショーク程の深さを掘り返す。


 掘り返した土を細かく砕いて、そこにメリル・フィンチ・ブレンナー合同会社のメリッサ嬢から買い求めたセメントを混ぜる。

 混合比は適当である。目分量で土とセメントが9:1から8:2位で混合し、そこに姦し娘達が掘った井戸から拝借した泥水で混合土をよく混ぜる。

 まだ井戸は姦し娘達の艦載機達が濾過層を作っていたが、底に滲み出ていた泥水を買ってきたバケツに印付して汲み上げる。


 その泥水を掘り返した土とセメントの混合土にぶっかけて更にこねる。よく混ざったらその混合土を手早く土嚢袋と言う名のやはりメリル・フィンチ・ブレンナー合同会社でメリッサ嬢から買い受けた小麦袋の空袋に、泥水を掬ったバケツで詰めこんで行く。

 手早くやらないとセメントが固まってしまうので急いで作業を終わらせる。


 小麦袋の口を下側に織り込んで土嚢に仕立て上げ、それをテレキネシスで縄張りした線に沿って綺麗に整列しながら並べて建物の壁一段目を作り上げた。

 本当ならズレないように有刺鉄線等を上に置いてから二段目を積む方が良いのだが、土嚢の中身にセメントを混ぜているので問題はないであろう。後で表面にモルタルを塗って補強しておけば良い。


 並べた一段目の内側に、掘り返した土を敷き詰め、また丸太で突き固める。

 床部分を地面よりも高くしておかないと、雨が降った時に屋内に水が溜まってしまうからな。


 丸太で突き固めては土を入れ、突き固めては土を入れ、積んだ土嚢の一段目の高さまで土を盛る。


 同時に一段目の土嚢を上から叩き、土嚢内部の空気を抜いて土嚢の上面が次の一段を積んだ時に安定するよう均しておく。


 同じ要領で下の段と互い違いになる様に二段目を積み、上から突き固めてから同じ様に三段目を半分ほども積んだところで、掘り返した土とセメントの混合物が尽きてしまった。

 高さは現在1.5キュベル程度だ。これを2~3ショーク程度まで積む予定である。九段積めば外壁部分は完成する計算であるな。


 ここまで1刻程。午後からは狩りをして食糧調達をせねばならない。今日は積めてもう3段、と言うところか。

 何やら暫く鋤が大空へと旅立たないなと思ってライラの様子を窺ってみれば、またもやライラは大地礼(orz)賛しておった。



 「……わたしは……何てダメな子……」



 鋤を大空に発射しすぎて心が折れかけてしまった様である。


 まぁ、最初はの?仕方ないの。

 ライラを励ましながら、採土地を広げる。あまり深い穴を掘っても仕方ないからの。


 昼過ぎまで作業を続け、6段目まで土嚢を積み上げた所で今日の作業を終わらせた。その間、ライラは延々と鋤を空へと打ち上げ続けたのだった。


 まぁ、最初はの?仕方ないの。

 作業を切り上げて黒パンとピクルスと最後の鳥の燻製で昼食を済ませ、森へと狩りへ出かける事にする。


 の前に井戸の進捗を見てみれば、ほとんど出来上がっていた。後は井戸の側面をモルタルで固めるだけの様である。

 試しに艦載機共に指示を出してみれば、此奴ら音声認識に対応している様である。器用に敬礼なんぞして、朕の指示を了解した旨の意思表示を返してきた。流石に発声機能はない様であるが、姦し娘共より可愛げがあるではないか。



 「有難うシュピちゃん、リーゼ君」



 と、見ればライラが蜘蛛型の小さいやつと人型の大きい奴に礼を言っていた。多分、蜘蛛の方がシュピーネ(蜘蛛)、巨人型の方がリーゼ(巨人)と言う事であろう。


 ……姦し娘共より先に名前がついてしまった様である。まぁ、仕方なかろ……バレたら面倒くさそうだのぅ。

 艦載機達に幾つかセメント袋を渡して仕上げに取り掛からせる。ついでに、次の仕事として葺屋根の土台を作ってもらう事にする。



 「ライラ、この辺は冬になると雪が降るのかえ?」



 「そうねぇ、降る時は降るかなぁ。去年は結構降ったと思うよ。学校に行くのがすごい大変だった」



 「どのぐらい積もっておった?」



 「えーと、1番降ったときは膝ぐらいまでかなぁ」



 ライラの膝ぐらいと言うことは1キュベルは無いと言ったところか。結構降るのだな。

 と言うことは斜め屋根はダメだな。一方向に力が係り過ぎる。


 しかし三角屋根にするにしても傾斜は結構キツめでないとまずいかもな。あまり横方向に力が分散するものを作ると壁が倒れかねない。となると、壁の厚さは1重ではなく2重以上にして土嚢の重量で横方向への力に対応できるようにせねばならんな。簡単に言えば、ピラミッドのような形の小屋にするわけだ。その方が雪下ろしも簡単で良いかもしれん。


 最上部のキーストーン部分を木製の屋根で作り、今作っている壁の周囲に階段状に土嚢を積み上げ、土嚢の重量で屋根から壁にかかる重量を横方向から押さえるような構造にすれば良いわけだ。

 こりゃ、もっと土嚢を作るペースを上げねばな。土嚢袋とセメントの量には余裕があるから問題ないだろう。


 多少計画を修正し、艦載機共へ屋根の構造と『木組み』のやり方を教えてやる。『木組み』とはその名の通り、ネジ釘を使わずに木材を組み合わせる方法だ。簡単に言えば、木材の接続部分を穴と突起に加工して、それをはめ込んだ後に木釘で抜けないようにする方法だ。木材同士をパズルのように組み合わせるので、接続部分の複雑な加工が必要なのだが、今朝のストーブを見る限り艦載機共は割と細かい工作が得意のようである。


 どうやら細かい作業は蜘蛛型――シュピちゃんの担当のようで、朕が地面に描いた『木組み』の三面図と屋根の設計図を赤外線シーカーの様なものでスキャニングすると、前足を器用に折り曲げて敬礼して見せた。どうやら構造が解ったようである。愛いやつである。此奴ら、姦し娘共よりも優秀なのではないか?むしろ、此奴らだけ居れば良いのでは?姦し娘(彼奴ら)要らないのでは?


 そんな事を思いながら、シュピちゃんとリーゼ君達に見送りを受けて狩りに出かける。


 あまり時間がないのでオドを広げて探索(全周走査)しながらライラを連れて森を歩く。野生の兎や狐、鹿などを見つけてはライラが小石をテレキネシスで発射して狙うが、中々上手くいかない。まぁ、その為に銃を用意しようと思ったのだしの。


 割とテレキネシスだけで遠距離の標的を射抜くのは非常に難しいのだ。目視と実際にズラしたベクトルがどうしてもズレてしまうのは視差や錯視等、ヒトの目は意外と当てにならんものだから致し方ないと言える。少しのズレでも遠距離になればなるほど標的に対するズレが大きくなってしまう。慣れの問題とも言えるが、照準器が有れば良いのだがな。その内作ってやらねばな。


 大物を逃して大地礼(orz)賛するライラを横目に、朕は逃げていく雄鹿の脊椎を撃ち抜いて即死させた。流石にこれ以上獲物を逃すと、次の獲物を見つけるまでに日が暮れかねないのでな。

 まぁ、練習あるのみだの。



 「どうしてそんなに上手く当てられるの?」



 とは当然の疑問か。悔しそうに頬を膨らませる彼女に少し種明かしをしておく。



 「ヒトの目とは往々にして当てにならないものだ。オドによる測距と正確な軌道の計算が重要になる。これは練習しかないかの。その内照準器などを作ってやろう。コツは、目に頼らないことだ。後はそうだの。偏差や弾丸の落下を計算する事だ。これも練習かの。後は弾丸飛翔中の弾道修正。これは分割思考(マルチディヴィジョン)を覚えてからになるであろうかの」



 ライラはオドの運動を波動として捉えられるが、まだオドの波動に関する周波数の変化等を鋭敏に察知できるほどではない様である。まぁ、その辺も訓練していけば追い追い出来よう。周波数変化を正確に捉えられるようになれば、それは強力な武器になるのでその内訓練させようと思っておる。


 朕の仕留めた雄鹿――狩りの時、牝鹿は狩らないのが鉄則だ。すぐに数が減ってしまうからな――を逆さに吊るして解体してしまう。


 ライラに鹿の解体の方法を教えつつ、1刻程で肉塊と骨と毛皮になった鹿をテレキネシスで担いで、秘密基地へと戻る。これだけあれば暫くは持つであろう。ライラには鹿の頭骨でテレキネシスの練習をさせながら歩かせた。


 秘密基地に戻る頃には日が暮れかけていたので肉の加工は明日にすることにして、今日は鹿の焼き肉である。

 革と肉の間についた鹿のラードを刮げて、熱したスキレットに引き、解体したロースの塊から直接ナイフでスライスした肉を焼き、スキレットから直接豪快に食す。

 味付けは塩とハーブである。



 「豚とも鶏肉ともちょっと違う感じ?でも臭くないね。鹿は臭いって聞いたんだけど」



 満面の笑みで頬袋を膨らませながらライラが感想を述べる。



 「臭いのは主に血抜きを失敗しておるからだな。死んだ後、血液はドンドン鹿の体内で固まってしまう。獲って直ぐに血を抜いてしまえば臭みも殆どなかろう。後は解体の時に内臓を傷つけると、体液に曝された肉が傷んだりするしな。膀胱や胆嚢、消化器官を傷つけてしまえばその肉は臭くて食えた物ではないしの」



 その後は片付けをして、夜間も昼間と変わらず作業を続けるシュピちゃんとリーゼ君達の作業音を子守唄にして床に就いた。



いつまでたっても秘密基地が出来ません……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ